第38章 救世主
發達の国にて、一番の繁華街であるのが、ローギルシティの商店街である。そこで宝石師を探していると、目の前に何の前触れもなく、剱や鐵砲を構える人々が現れた。人数は3人。普通ならば、音や霧などで、視界を騙すのだろうが、そんな兆候はなかった。
反応し回避するのが遅れ、ケンの頬に小さな掠り傷が。何故、傷を負ったのかも、一瞬で分からなかった。
攻撃してきたのだから、敵だろう。敵は無言。すぐに、反撃しようとするが、あるはずの剱が無い。敵に奪われたか。迷った結果、数秒間が経過する。そして、敵はゆっくり鐵砲の引き金を引く……。 銃声が轟く。
撃ったのは、扃鎖軍の第二級特攻隊。撃たれたのは、ケン。
繁華街に悲鳴と混乱が……。
ヤイバから受け取った鎧のお陰で、貫通することは無かったが、痛い。オーガックさんには、あとで感謝せねば。普通なら、重傷だ。さて、反撃するには……
ケンは咄嗟の判断で、もっとも手が届く卵を何個か持ち、敵の視界を奪うために、投げる。なぜか、一緒になって店主も卵を投げる。端から見ると、ギャグだろうが当の本人達は死にものぐるいである。
剱を取り返そうと卵を使って接近し、敵の持ち物を確認する。2人が鐡砲を構えており、奥の1人は攻撃する素振りが見えない。ならば、奥の人物が所持しているのだろうか。
卵により、敵の視界を一瞬だけ奪えただろうが、敵は何事も無かったように、その後も的確に反応して、ケンに再び弾丸が命中。なぜ……、視界を一瞬でも奪ったはずだが……。流血しないのが奇跡である。ただ、やっぱり痛い。
商店街で逃げ惑う人々。そこへ、1人だけ敵に立ち向かう人物が現れる。少なくとも、ケンでは無い誰かだ。
「救世主だ!!」
と、先ほど卵を一緒に投げた精肉店のおじさん。救世主が現れると、逃げ惑う人々が何故か戻って来る。
「勇者、ブレイヴだ!」
と、叫ぶ人々。すると、ブレイヴコールが。
「大丈夫か!?」
と、少年ブレイヴが、ケンに問う。普通は、銃弾を浴びたなら重傷だが、ケンは
「なんとか……、多分だけど。君は?」
と、念のためケンが聞くけど、敵の攻撃は待ってもらえず、銃弾が飛んでくる。
「僕はブレイヴ。皆にそう呼ばれている」
「僕はケン。あいつらに、剱を奪われた。取り返さないと……」
ブレイヴは、世界が認める剱使いである。あちこちで活躍しており、その噂は少しばかり聞いたことがある。しかし、まさか本人に会うとは。
ブレイヴが敵と戦い、ケンは隙を見て剱を取り返しに向かう。生身だから、無茶はできない。でも、もうすでに無茶してるとは思うが。
一瞬の隙をブレイヴが作り、ケンが全速力で剱を奪い返す。3本。シルバーソード、フラッシュソード、ウォーターソード。全て無事だ。
ケンは、奪い返した体勢のままに、シルバーソードを左手に持ち、扃鎖軍の奴らへ斬りかかるが、攻撃したはずの扃鎖軍の3人がいつの間にか消えた。すぐに周囲を見るが、いない。忽然と姿を現し、姿を消す。目的は何だったのだろうか。たった10分ぐらいの出来事だが、久しぶりに死にそうになった。
商店街は、恐怖が去って歓喜の渦へ。特に、勇者が来たことにより、盛り上がっているようだ。
ブレイヴは、剱を鞘に収めケンのもとへ。
「間に合って良かった。被害も然程出なかったみたいだ」
ブレイヴは精肉店のおじさんに、何かを渡そうとしたが、精肉店のおじさんはそれを断った。ケンは、すぐに卵のことだと気づき、謝罪するが、精肉店のおじさんはむしろ、無事でなによりだと笑った。
ブレイヴは、一通りみんなが無事なのを確認すると、
「新鋭の国と古豪の国が、争いをしている。僕は、それを止めなければならないから、また会うときがあれば」
と、言って去った。終始、ブレイヴのペースだった。
「人それぞれ、やるべき事があるってことか……。流石、勇者」
精肉店のおじさんが、そう言った。あっという間で、嵐のような出来事だった。
ケンは、本来の宝石師の捜索を再開する。
*
ヤイバとニンは、ヤイバとミケロラの出身地、ギリシエ村へ向かっていた。
「ミケロラは……」
ヤイバが呟きながら歩いていると、
「ここは旨いな!」
と、若い男女がそう言いながらすれ違った。なにやら、店の行列が出来ている。そこから出てきた客だろうか。
「何だろう?」
ヤイバとニンが走って行くと、まさかの衝撃。
「"パフェ専門店 ミケロラ 本店"。……って、えぇ!?」
ヤイバ、吃驚。紛れもなく、それはミケロラの店。一応、行列に並んで、店に入ると甘い香りが漂う。
「ミケロラ!」
ニンが、厨房へ。
「あれ? どうしたの?」
と、コックの帽子を被っている店長のミケロラ。
「こっちが聞きたいよ」
と、ヤイバが頬を掻く。なんでも、ミケロラが店を開いた理由は、食べた経験を生かして、もっと美味しいもの作りたいと思ったから。
「こんな店を出すなんて、ミケロラって凄いね」
ニンが感心すると、ミケロラは
「もっと大きな店があるよ」
「……まさか」
ヤイバは、驚きを通り越して、もはや呆れたような表情だった。
「發達の国でも営業中!」
*
「ミケロラ……」
ケンの目の前に、"パフェ専門店 ミケロラ 發達の国支店"という店が。しかも、行列だ。
*
退院後の検診を終え、ハガネは院内のレストランに行くと、
"パフェ専門店 ミケロラ ルトピア支店"。
やっぱり満席で、行列。ハガネは見て見ぬふり。
To be continued…
ミケロラが店を開業しました。
パフェ専門店ですが、メニューはランチなどもあり、ファミレスっぽい店らしい。
たぶん黒雲の剱だと、一番主人公してると思われるブレイヴが登場。後ほど、再登場します。




