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黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第1部 再出発の旅篇
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第4章 旅の仲間

 ヤイバが仲間に加わった直後、その会話を聞いていたミケロラが話に割り込み、

「私からも、1つお願いがあるんだけどいいかな?」

 アキラとヤイバはそのお願いが何か分かってしまった。この流れ的にも十中八九、

「私も旅にお供させて」

 ちなみに、ミケロラはアラサーらしい。ケンとアキラ、ヤイバ、セーミャはほぼ同年代で12歳だ。母親よりも少し若いポジションだ。

「なんで?」

 思わずアキラとヤイバがハモった。ミケロラは

「ある街へ行きたいけれど、一人で行くには危なっかしいからさ」

「ミケロラさん、ある街ってどこですか?」

 ケンが聞いた時点で、アキラはため息をついた。ヤイバに小声で問われると、たった一言「当確」とだけ言った。そう当選確実。メンバー入りが9割以上決まった瞬間だった。

「ファクトリーシティ。そこに伝説のパティシエがいるらしくって、その人のパフェがどんな味か気になってたの」

「パフェ!?」

 と、セーミャの目が変わっていた。アキラは食いつくところはそこかと、セーミャに聞こえないぐらいのトーンでつぶやいた。さらに、ヤイバに向かって元気なさげに「今更、メンバー抜けるとか言っても遅いからな」。ヤイバは苦笑しながら「大変だね」とだけ言った。

「ファクトリーシティって、近くに白堊(はくあ)の神殿があるみたい」

 どこから出てきたのかわからないパンフレットを見るセーミャが言った。観光か?

「白堊の神殿か……」

 というと、ケンは黙り込んだ。何となく察したアキラは

「時空間の神殿のことは忘れろ。あれは光明が占領してるから、後回しにしたんだろ?」

「でも」

 アキラの直感は正解だった。クーリック村の山奥には、時空間の神殿がある。神殿と言っても、塔のような建物でありその高さは数百メートル以上である。この神殿を光明劔隊が占拠したのは襲撃時以降である。目的がこの神殿だったのかは定かではない。アキラが入隊して調査したが、報告書にはポルラッツによる違反行為として記載されていただけで、目的や被害については触れられていなかった。そもそも、その書類を作成したのがポルラッツ本人であり、隊長たち自身も把握できていなかったのでは、という結論に至った。だがこれはあくまでもアキラの臆測にすぎない。隊長であるカクゴウ自身が指揮を執り、それを隠しているのかもしれない。

「ファクトリーシティに向かうなら、ライトタウンは不可避だ。言ってる意味が分かるよな?」

 アキラはケンの意見を聞かずに話を進める。ライトタウンには光明劔隊の本拠地がある。高確率で接触することになるだろう。

 一行が話し込む中、長老のモッゼが現れ、

「どうじゃ? 夕食は美味しいかの?」

「いつも通り 美味しいよ」

「ヤイバ、お前に聞いておらんわ」

 ヤイバの即答に、モッゼは一瞬で返した。反応が鋭く、もしかして、曲者かもしれない。深く考えすぎだろうか。

「とても美味しいです」

 セーミャの返しは至って普通。

「すみません、夕食まで頂いて。ありがとうございます」

 ケンは律儀に返す。アキラは会釈だけであった。

「それで、盛り上がっているところ悪いが、伝え忘れたことがあっての」

 モッゼは、何かを伝えに来たみたいだ。しかし、みんなの顔を見ると

「いや、伝えるまでもなさそうじゃな」

「失礼ながら、何をですか?」

 ケンは首を傾げた。ナチュラルにではなく、意図して分かりやすく伝えるために首を傾げた。

「旅には、仲間が必要であろう。そう思ったのじゃが、既におふたりさんはその括りに入っておるようじゃし」

 モッゼは、続けてヤイバに向かって

「ハガネも一緒に行くのであろう?」

「いや、ハガネは」

 多分行かないと思う。そう言おうとしたが、何故か言えなかった。目線を1mmたりとも外さぬモッゼの、裏というか、黒い眼差しに逃げることができない。ヤイバの額に、一筋の変な汗が流れる。ヤイバは目が泳ぎまくり、

「つ、連れて行きます」

 ヤイバが負けると、モッゼは笑顔で

「そうか。そうしなさい」 

 とだけ言って、その場を去った。

 セーミャは笑いを堪えきれないようで、アキラはモッゼの行動に驚きを隠せず、ミケロラは平常運転でデザートを食す。

「何か、可笑しいの?」

 ケンは、セーミャが笑いを堪えている理由が分からないようで、それに対してセーミャは、堪えながら「だって……」としか、言えなかった。

「あの長老、マジかよ……。威厳ってやつか?」

 アキラはモッゼに関して、敵に回してはいけないタイプだと感じた。被害者のヤイバは、テーブルに伏せてしまい、

「ケン、アキラ。すまない。合意無しで、仲間入りを決めちゃった」

 それに対して、ケンは「大丈夫だよ」と返し、ヤイバは伏せながら「わぁぁ」と、小さく叫喚した。

「ケン、お前がとどめを刺したな」

「え? アキラ、どういうこと?」

「今のタイミングは、もうちょっと言葉を選べよ。……いや、自分でも何て返せば良いか、分かんねぇわ」

 と、アキラは頬を掻いた。伏せたままのヤイバは、「あの人、やっぱ苦手だぁ」と、過去にモッゼとのやりとりで、何かあったかのように感じられた。どちらかというと、トラウマだろうか。


 翌朝。ケンとアキラ、セーミャ、ヤイバ、ミケロラ、ハガネはギリシエ村を出発。南のライトタウンを目指す。ハガネは、意見を否定することや、自分の意見さえも言わなかった。一応、ついては来ているが、仲間意識は低いようだ。

 途中、民宿の人が作ってくれた弁当を昼食で食べ、日が落ち頃にライトタウンへ到着した。この日は旅館に泊まり、今後の予定を話し合った。意見はすんなりとまとまり、朝にはこの街を出発することに。

 なぜここまで光明劔隊との接触を回避しようとするのか。それは、ケンがカクゴウと一騎討ちしたことだけが理由ではなく、光明劔隊とは過去に何回も戦っていたからである。アキラとケンがまだ一緒に旅する前、それぞれの"第一の旅"にて戦うも完全勝利したことは一度もなかった。アキラが対峙していた光明劔隊に入隊できたのは、敗北した際に勧誘があったからだ。それだけ強いなら、こっちに来て一緒に戦わないか、と。まともに戦って勝てないのなら、内部で情報を集めて対処法を考えるしかないと考えたアキラは、これを受けた。結果、伝説の剱のほかいくつかの情報を入手できた。光明劔隊と対峙するのは、もっと強くなってから。その考えでケンとアキラは、旅をしている。ポルラッツとの戦いは、想定外だったが。それに、ミケロラとセーミャがいることもあり、無駄な戦闘を極力避けるしか道がない。もしものときの場合を考え、今は今すべきことを優先するのみ。

 そう考えていた。


To be continued…

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