第33章 砂漠の国と發達の国
神託の国から東に進み、山を越えると、砂漠の国に入る。国名の通り、一面砂漠である。
「さてと、砂漠の国の宮殿は……」
歩くこと数日。途中、砂漠に住む怪物と遭遇したが、事なきを得た。
「……あった」
砂漠のオアシスに佇む、宮殿。中は、広く開放的な空間であった。
「神託の国の国王から話しは伺っております。あなたが、ケン殿ですね」
と、砂漠の国の国王。少し話をしただけで、袋を1つ渡され、宮殿で一晩過ごし、朝早く、次の發達の国を目指す。1人で旅すると、会話も無く、どんどん進んでいく。
發達の国は、所謂、先進国である。電車や汽車、新幹線、バス、タクシー、フェリー、飛行機……。ケンが戸惑ったのは、言うまでもない。乗車率が低い蒸気機関車に乗車した、ケン。何故、蒸気機関車を選んだかというと、満員電車を避けたかったからだ。
宮殿は、終点からが一番近い。のんびりと進む。途中の駅で、急行の待ち合わせもあった。
10両編成の蒸気機関車の7両目に乗っている、ケン。同じ車両には、7人。すると、後方車両から声がする。悲鳴だ。
ケンは、ガラガラと後方の扉が開く、剱を握る。
(やつらは……)
狭い客車に、機械の人形が3体。しかも、威嚇発砲だ。乗客が悲鳴を上げて蹲る。乗客は3人。女性と、親子と思われる母親と小さな娘だ。
(どうする……)
剱で銃弾は防ぐとかいう、そんな芸当は出来ない。しかし、このままだと、危険だ。1両の長さは18~20メートル。ケンから、機械の人形まで10メートル以上離れている。到達までに何秒かかるだろうか。
車両は、ドアが片方に3つずつ。中央の座席はロングシートで、前後にボックス席がある。機械の人形が銃弾を再び撃ち始め、ケンはすぐ近くのボックス席で身を潜める。座席の背もたれから様子を窺うも、容易には近づけそうには無い。
策は無い。考えるだけ時間の無駄だ。車両の壁にはいくつも銃弾で穴が開いている。さらに、窓が割れる。
ケンは一か八かで、銃弾の嵐に姿勢を低くして駆け抜ける。体を銃弾が掠めるが、鎧により気持ちちょっとは痛みが少ないと、自分に言い聞かせる。さらに、出し惜しみせずに、宝玉を填めたシルバーソードを右手に持つ。シルバーソードは淡く光る。
白雷斬。3メートル手前で、シルバーソードを右下から左上へ大きく振ると、剱の先端から半月のような白い刃が、白い雷を纏って正面へと飛ぶ。コントロールは出来ないが、機械の人形の銃口を2つだけ切断した。
ケンは、接近戦で人形を大きく振りかぶって斬るが、弾かれる。すぐに銃口へ対象に変更し、切断。銃弾が止んだ。
(これで斬れないのか……)
ケンは振り向いて、乗客に「今のうちに早く避難を」と呼びかける。お礼を言われたかもしれないが、ちゃんと聞き取る余裕も無く、3人の乗客が前方の車両へ避難する。
3体の人形は、両手に剱を持つ。接近戦だ。ケンが少し後ろに下がると、人形が座席や窓、柱、網棚、つり革を容赦なく斬る。かなり攻撃範囲が広そうだ。
ケンは、宝玉を外してシルバーソードを鞘に収めて、ウォーターソードを鞘から抜く。すぐに別の宝玉を嵌め込み、臨戦態勢へ。機械なら水の攻撃が有利では無いだろうか。しかし、ウォーターソードを試したことは無い。効果は未知数だ。ウォーターソードに透明度の高い水が纏う。水は制止せずに、グルグルと流れている。
人形の剱と、ウォーターソードが交錯する。衝突の音はせずとも、人形の力が強く、ウォーターソードが弾かれている。扱い慣れていないと言うこともあるのだろう。
宝玉を填めた伝説の剱がもたらす負荷が、どのくらいか分からない。短期決戦に持ち込みたい。すると、車両が大きく揺れる。どうやら、レールの分岐ポイントを通過しているらしい。左右に大きく揺れる。3体の人形が右に傾き、すぐに左に傾いて人形同士がぶつかって動けなくなる。ケンは、右手に力を入れると、ウォーターソードに纏う水が大きくなる。その水が人形を切り裂くイメージで、ウォーターソードを大きく振ると、水流が濁流となって人形を襲い斬り付ける。瞬く間に、3体の人形は壊れて倒れた。この技の名前を知らないので、濁流斬り(仮称)とでもしておこう。
濁流斬り(仮称)は、濁流が刃物のように鋭く斬れるみたいだ。ますます、使いどころが難しい。
ウォーターソードから宝玉を取り出し、鞘に収める。自分の右手を見ると、掌にいくつか小さな傷があった。気付けば、手がヒリヒリとする。もし長時間使うと、どうなるのだろうか……。想像したくない。
蒸気機関車が速度を緩める。しばらくして、車内放送で車掌が次の駅名をアナウンスする。ケンは、この荒れ果てた車両からさらに後ろの車両へ移動する。逢魔劔隊のメンバーがいないかどうか調べるためだ。次の駅に着くと、逃げられる可能性もある。しかし、後方の車両には、ほとんど人はおらず、それらしき人物は見当たらなかった。
普通ならば、荒れ果てた車両があるのだから、車両点検とかで運転を見合わせるのだろうが、そんな素振りは無く、駅をすぐに出発して終点を目指す。乗客は、ほとんどいない。多くが先ほどの駅で下車したみたいだ。終点まであと3駅。
ケンは、今度は前方車両へと歩く。前方から3両目の車両につくと、ケンは我が目を疑った。自分の目の前にいるのは……
「アキラ……?」
アキラと思しき人物と、その隣には……
To be continued…
砂漠の国は、砂漠しか無いので、イベントがなかったみたいです。
1行で登場して退場する怪物。事なきを得たので、倒したかどうかは定かでは無い。
何気に 今回の人形との戦闘が、初の完全勝利なのでは?




