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黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第3部 逢魔劔隊篇
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第32章 国王の依頼

 ケンは、一人で宮殿にいた。カクゴウからの伝言というか、頼み事は宮殿で国王様に会うこと。宮殿に来るのは初めてだし、国王様に会うのも初めてである。そもそも、国王様の顔も知らない。

 現在の国王は、ボロック国王である。気をつけたいのは山々だが、言葉遣いだとか、振る舞い方とか、ケンは全く知らない。そういうのを教わる機会がない。

 案内人に従い、宮殿の中を歩く。案内人はわざと遠回りしているようで、何度も曲がった。しばらくして、大きな扉の前に。どう考えても、この先に国王様がいらっしゃるのだろう。扉は、案内人では無く、甲冑を身に纏った護衛隊が2人で開く。

 扉に先には、階段と玉座、左右に5人ずつ護衛隊がいる。間違えてはいけない。変なことを言ってはいけない。ケンは、緊張したまま、前へと進み国王様のお顔を拝見し、すぐに跪く。このあと何て言えば良い。頭の中が真っ白だ。すると、ボロック国王は

「顔を見せてもらえるかな?」

 ケンは、跪いたまま国王様の方を見る。が、目が泳いでいる。

「緊張しているようじゃな。さて、伝説の剱使いよ」

「!?」

 ケンは言葉にならない声を出した気がした。ただ、聞こえてないみたいだ。

「そなたに」

 失礼極まりないとは思いながら、

「国王様、恐れながら申し上げます」

「何なりと申せ」

「伝説の剱使いというのは……」

「そなたのことであろう」

 ボロック国王からそう言われ、ケンは首を横に振った。いつから自分は伝説になったのだ?

「神のお告げがそう言っていたのだが、間違いであろうか?」

「神のお告げと言いますと、もしや……」

 ケンは、その神のお告げに心当たりがある。それは……

「すでに、シルバーソードを持っておるということは、知っておるのじゃろ?」

「確かに、お目にかかっておりますが……」

「ならば、話が早い。では、伝説の剱使いになりし、そなたにウォーターソードを授けよう」

 伝説の剱の1つ、ウォーターソードが授与される。ケンは、この場では伝説の剱使いについて聞かずに、早く終えてハクリョに聞きたいと思っていた。なぜ、伝説の剱使いなんて大役を自分が課せられたのか。

「さて、最後にお願いしたいことがある。実は、神託の国と同盟関係にある国々から、あるものを受け取って欲しい。今から渡す紹介状により、直接会えるであろう」

「失礼ながら、ある物というのは……」

「すまないが、ここでは話せぬ。行けば分かるであろう」

「承知いたしました」

 と、ケンは承諾した。国王様からの依頼である。断れるはずがあろうか。ただ、聞けばその国の数が多い。砂漠の国、發達(はったつ)の国、新鋭の国、古豪の国、山麓の国、陽光の国、離亰の国、杳然(ようぜん)の国。

 宮殿を出ると、ケンはひとつ聞き忘れたことが……

「あ、封解の書について聞くの、忘れてた……」


   *


 ケンは、国外へ向かう前にリャク村を訪れた。封解の書について、ダルク長老に確認するためだ。雷霆銃族の襲撃以降、リャク村がどうなったのか確認も含めて。 

 ケンの心配はすぐに安堵に変わった。ダルク長老は無事だし、リャク村も悪い変化が見られない。そもそも、7年後の世界で、直接会えなかったが、ダルク長老が健在だった時点で、無事だと分かってはいたけれど。

「ご無事だったんですね」

「いざというときの、避難用の洞穴がいくつもあるからな。心配はいらんよ」

 ダルク長老は、笑ってそう言った。さすが、趣味で洞窟を作るだけはある。なんだか、そのうち何かを掘り当てそうな気がする。

 さて、ケンは本題に

「封解の書のことについてなんですが……」

「持っておきなさい。神のお告げ故、返却されても困る」

 また出た。神のお告げ。もう直接、ハクリョさんから聞いた方が早そうだ。ただ、天地の神殿を上りたくはない……。


 結局、封解の書はケンが持ったまま、旅立ちの日が来た。出発はリャク村から。見送りに来たのは、ヤイバだけだった。

「ケン、これを持って行け。餞別だ」

 ヤイバは大きな布袋をケンに渡す。

「これは……?」

「オーガックさん、頑固すぎて時間がかかったんだけど、新しい鎧だ。正直、何が変わったのか聞いても、専門用語ばかりで分からなかったんだけど、これだけは言える。サイズが大きくなった。成長期だからな」

 自信満々のヤイバを見て、ケンは思わず吹き出した。ヤイバも言った本人なのに我慢できずに笑う。

「試作品の第2号らしい。銃弾に、気持ち僅かながら、衝撃を和らげるらしい。痛いのは痛いらしいけどな。ハガネが負傷したって聞いて、対応したらしいけど、まだまだだとさ」

「それでも、すごくありがたいよ。オーガックさんに、今度会ったときはお礼を言わなきゃね」

「そうだな。無償で手に入るとか、普通はあり得ないからな。あと、感想を言わなきゃな。試作品だから」

 ヤイバの視線は、渡した布袋から、ケンが身につけている鞘を向いていた。ケンは体を少しひねって、3つの鞘をヤイバに見せ、

「また1本もらった」

「伝説の剱を3本も持ってると、邪魔じゃないか?」

「それを、3刀流のヤイバが言うの?」

「俺は正直、邪魔だと思う。でも、必要だから仕方ないだろ。で、元々持っていた剱は?」

 ヤイバが言う元々持っていた剱とは、ケンが錆びれさせた、自前の剱のことである。出番があまりないので、ほとんど忘れ去られているが……。

「あれは、クーリック村に置いてきたよ。道場に置こうと思ったけど、もう無いから……、セーミャに預けてきた」

 クーリック村の民宿に置いてきたそうだ。

「宝玉は?」

「3つともあるけど、使うかどうか……」

 ケンは、宝玉の使用を躊躇っている。とはいえ、ヤイバも容易には使えない物だと分かっており、余程の緊急時だけだろう。

「じゃあ、今度会う時は、宝玉を扱えるようにならないとな」

「それ、どのくらい会わないつもり?」

 ケンが言うように、数ヶ月でもマスターできない代物だ。

「1、2年とか?」

「アキラを助けに行かないの?」

「アキラなら、大丈夫だろ。むしろ、心配する要素があまり無いな」

 と、ヤイバ。アキラが聞いたら何て言うだろうか。信頼しているからこそなのだろうか。ただ、受け取り方によっては、いろいろとあるけれど……。

 ヤイバは、別れの言葉として、

「ケン、伝説の剱使いとして頑張れよ」

「あぁ……」

 ケンの新しい旅が始まる。が、

「何で、それを……伝説の剱使いって?」

「神のお告げだな」

「言ってる意味が分からない」


To be continued…

神のお告げなら仕方がない。

ハクリョさんて、一体何者なんでしょう。

でも、神のお告げが全て同一人物では無い可能性も少なからず……

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