第30章 宝玉の情報と、今後
ケンたちは、ルトピア中央病院に移動する。病院から野宿していた場所まで、徒歩10分ほどである。
病室には、ハガネがベッドの上で起き上がっていた。個室ではなく、4人部屋である。
「なんで、病院の休憩室とか使わなかったの?」
先に看護師姿のエナに、そう言われた。
「文字通り、頭を冷やしてた」
と、ヤイバが冗談なのか本気なのか、そう言ったので、エナは
「馬鹿じゃないの?」
さらに、起きたばかりのハガネも
「馬鹿だろ」
と重ねて言った。
「ひとまず、ケンからいろいろと聞いたよ。アキラが連れ去られたみたいだな。おまけに、行き先は分からない。さらに、敵には強力な人形がいる」
ヤイバが言うと、軽そうに聞こえた。ジンが咳払いをし、
「そこで、すでにヤイバが1つ持っている宝玉について、情報屋から新しい情報をもらってきた」
「宝玉って、なに?」
話になぜかエナが食いついた。ニンがエナに「アクセサリーじゃないよ」と伝えると、エナは「アクセサリーじゃなくても、気になるの」
ハガネは他の患者の様子を見て、といってもカーテンに仕切られて、様子は分からない。
「ここで言っていいのか?」
と、念のため確認すると、ケンは
「たぶん、他の人はすでに知ってると思う」
「他の人?」
どうやら、ハガネだけ置いてきぼりのようだ。ヤイバは少しオーバーに
「そっか。知らないんだよな~。お隣さん」
「ヤイバ、お前も病院で世話になるか?」
「冗談。同室は、黎明劔隊の人だ。俺たちもよく知っている」
病室の入口には、ハガネのほか、カクゴウ、ヤミナ、セーミャの名前がある。ただ、セーミャは軽傷ですでに退院している。今頃、クーリック村の民宿や復興のお手伝いをしているだろう。セーミャは、戻ることを選択したのだ。
ジンは、ファクトリーシティで仕入れてきた情報を話す。
「宝玉は、ヤイバの見立て通り、伝説の剱を何倍にも強くさせる力がある。フェニックスソードに嵌め込まれている宝玉は模造品だ。外し方が分かれば、容易に外れる」
「宝玉って、そこそこのサイズなんだね」
と、エナが興味ありそうに見る。大きさは直径5センチほどだろうか。蛍光灯の光にかざすが、模造品は透き通っていないようだ。
「俺が持ってるのは、"霹靂神の宝玉"って言われているらしい。ライトニングソードを入手したときに、偶然宝玉が外れて、それ以降はポーチの中で眠ってた」
ハガネは、ヤイバからそんな話は一度も聞いていないようで、
「完全に、宝の持ち腐れだな」
「仕方ないだろ。ドーグ村の人に言われるまで、そんなこと考えもしなかったぞ」
ヤイバが知ったのは、ミケロラに引き止められてドーグ村に残った後、村の人から伝説の剱について情報を集めていたときだった。伝説の剱には、宝玉の力により解放される力がある。その人からは伝承や詳しい話を聞いた。
その後、ケンと合流後に、その話を少しだけ話していた。ケンは、自分の持つ鞘に収まった剱を見ながら、
「"伝説の剱"って、言われてるぐらいだから、何かあると思ってたけど、とてつもない力みたいだね」
どのくらいの力か知っているような言い方だったので、ハガネが
「実際に使ったのか?」
「僕はまだ使ってないけど、ヤイバが森で試しに使ってみたけど……」
「ライトニングソードと言うだけあって、剱から雷みたいな電撃が発生していた」
コントロールはまだできない。剱で斬るという表現よりも、剱に憑依した雷の力で斬るといった感じだろうか。剱が届かなくても、憑依した雷が攻撃の範囲を広げるみたいだ。
さらに、ヤイバは、ケンの持つ剱について触れる。
「ケンの持つシルバーソードとフラッシュソードの宝玉については未知数だ。本人が使うのを躊躇っているって理由もあるけど……」
「もともと、シルバーソードとフラッシュソードは、光明劔隊に押収されていて、騒動の後にカクゴウから宝玉とセットで受け取ったけど、ヤイバのを見た後だと、ちょっと怖くて使えないかなって……」
「下手すると、人を殺傷するおそれがある。調べてからでも遅くは無いだろ。ということで、俺とニンで、ファクトリーシティに一時帰省して、情報を貰ってきた」
ケンが持つ剱についての経緯は、そんな感じだ。そして、今後どうするかという話になると、ケンは当然ながら
「アキラを助けに行きたい」
ヤイバもケンに賛同のようだが、
「賛成だが、俺はハガネの治療に付き合わなきゃな」
「俺は、今は安静に怪我を治すしかできることがない。ヤイバ、お前は邪魔だ」
と、ヤイバを邪魔者扱いするハガネ。
「僕は……」
ニンが悩んでいるようだったので、ジンは
「ニンは今まで通り、ヤイバに稽古を付けてもらうといい。ヤイバ、頼めるか?」
「俺はいいけど、ジンはどうするんだ?」
「宝玉についての情報を、もっと探ってみる」
どうやらジンは単独で情報を収集するようだ。
「私は、黎明劔隊に入隊するよ。今回のことで、医療に興味が湧いたし、戦闘だと助力できなさそうだから」
と、エナは本気のようだ。それぞれの次は、もう決まっているようだ。そして、言わなかったことがある。ジンは、ファクトリーシティの騒動について、何も言っていない。ヤイバは、ザンクが言い残した"ディブラの悲劇"について、一切言わなかった。情報を展開しないのは、今に始まったことではないが……
To be continued…
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
なんとか、予定していた展開へおおよそ戻ってきました。
アキラは、もう少ししたら登場すると思います。




