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黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第3部 逢魔劔隊篇
31/91

第29章 感情と臆測

 今回の騒動、ヤイバは知らなかったがクーリック村にも被害が出た。エナは村の人を避難させるため、その過程や状況は見ていない。機械の人形との戦闘が、クーリック村でも起こり、いくつかの建物が崩壊した。道場もその1つである。セーミャの民宿は幸いにも被害から免れた。ただ、クーリック村とドーグ村は復興に時間がかかる。場合によっては、村同士の合併もあり得る。今回の被害状況は、想像より上だった。

 失った道場での思い出を振りかえり、ケンは、

「アキラには、何度も助けられたなぁ……」


   *


 長い沈黙を破ってアキラは、

「その錆れた剱じゃ、どうせ戦えないだろ? ならさ、伝説の剱で強くなろうぜ」

 迷うケン。アキラとケンの会話に若干のズレがあることは、どっちも知っている。もしかしたらわざとかもしれない。言葉足らず、あるいは断言できない理由があるのかもしれない。

 再び、間が空いた。今度は、ケンが

「勝てると思う?」

「そりゃ、勝てるさ。クーリック村で一二を争う僕らの実力と、伝説の剱が持つ神秘の力を掛け合わせたら無限大だろ」

 かなり盛りすぎたかなと思うアキラだが、ケンは

「勝つよ……。次は」

 小さな一歩だが、大きな一歩でもある。


   *


「アキラがあんな言い方をしなかったら、今の僕はいなかった……」

 俯いてばっかりだったケンが、空を見上げる。気が付けば、空は満天の星が見える。

「最初、光明剱隊に復讐するため、旅に出て……。思い違いでアキラのことを敵だと思っていた。でも、ポルラッツと初めて対峙して、敵じゃないことを理解し、アキラと組んだ」

 道場を建てるよりも前の話だ。時を遡るように思い出す。

 そして、現在へ。

「……アキラの事は、かなり前から感じていたし、分かってた。遅い返事の時や、アキラの意思を知ったとき……。何より、襲撃のとき、アキラの自分を指す言葉が"僕"から"俺"に変わっていたんだ……。分かってた……。それなのに、僕は……」

 このままだと、ケンの感情が……

「止められなかった、か……。アキラは、みんなを守るために、やむを得ず、ポルラッツ達について行ったんだろ?」

「僕は、アキラが段々と、復讐だけを目的にして、心が黒く汚染されていたのに気付いていた……。いつか、過ちを犯すのではないかとか、犠牲を出すのではないかとか……」

「考えすぎだろ? って言いたいところだけど、ケンが言うなら、そうなのかもしれないな。正直、俺は全然そんな変化には気付かなかったけど」

「アキラは、復讐するつもりだと思う」

「誰に? 事実を知った今、ポルラッツに矛先を向けるのは違う。ヤミナやクロバーか?」

 ヤイバの言うとおりだ。復讐の相手は誰になる?

「だから、敢えてポルラッツについて行ったんだと思う」

「ケン、お前もしかして、ポルラッツがアキラに復讐相手を吹き込むとか考えてるんじゃないよな……?」

 ケンは否定も肯定もしなかった。

「一回休め。今は、明日のことを考えるだけにしろ。俺から言えることは、いろいろと混乱してるみたいだし、何も考えずに素直になれ。ケン、お前までもが変わると、それこそアキラの帰る場所がなくなるぞ」

 ヤイバがそう言うと、しばらく会話は無くなった。辺りは暗くなり、ケンはカレーを温めながら、頭を冷やしていた。


   *


 ルトピア中央病院。

 ハガネの病室に、タクード医師が入室する。ハガネの病室は4人部屋である。

「起きたと聞いてね。早速で悪いが、問診させてもらうよ」

「ここは?」

 ハガネは起きたばかりで、タクードにそう聞いた。

「エナから聞いてないのか? ルトピア中央病院だ。君は負傷して入院しているんだ」

 ハガネが自身の体を見て、

「入院って、大袈裟な」

「君は、当たり所が中途半端過ぎて、治療が難しい…。もう少し当たり所が良い方か……または、当たり所がもう少し悪い方が、治療しやすかったよ」

 と、タクード医師。さらに続けて、

「名医が多いこの病院でも、中途半端じゃ簡単には治せないのでね……」

 ハガネはいつのまにか手術されており、回復まで入院することになっていた。

「他は?」

「詳しいことは、エナに聞いてくれ。彼女は、今回の一件で進んで協力を頼み込んできたよ。仲間達のことがあって、その恩返しがしたいと言っていたね」

 タクードの言うとおり、エナは今回の騒動で、多くが蚊帳の外であった。自分に出来ることを探し、看護師として手伝っているそうだ。

「エナ以外は?」

「さぁね。ここ2、3日は見てないよ」

 タクードにそう言われて、ハガネは何か言いたげな表情だった。俺の見舞いはいないのか、という表情なのか、入院費をどうするか考えているのか。もしくは、自分のやるせなさだろうか……


   *


 朝。焚き火はかなり前から消えている。ケンとヤイバは、野宿のまま眠っていたようだ。

「ケン兄ちゃん? ヤイバさん?」

 目を覚ますと、声の主であるニンと、その兄ジンがいた。ジンは

「こんなところで野宿か。風邪を引くぞ。……おい、ヤイバ、大丈夫か?」

「もう少し、寝させてくれ」

「おい、宝玉について情報を仕入れたのに、聞かないつもりか?」

 ジンの言う宝玉とは……


To be continued…

『龍淵島の財宝』へと続く場面は、今回のシーンです。

なんとか年内に展開できたかな。

来年も引き続き、よろしくお願いします。

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