表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第2部 時空間の神殿篇
25/91

第24章 崩落のカウントダウン

 弾はカクゴウの足を掠った。ズボンに血が滲む。

「哀れだな。今ので、戦えないだろう。これで邪魔者は、ただの負傷者だ」

 先ほどの銃声に、黒き鳥と戦闘中だった第1班と第3班の隊員が戦闘の手を止めた。

 ローズリーは、銃口をカクゴウに向け、

「ヤミナ、こちらに出てこい。さもなくば、この引き金を引くぞ」

 ローズリーは、鐡砲の引き金に手をかける。

「待ってください!」

 ヤミナが物陰から飛び出す。

 黒き鳥の本来の真相を知らない第1班と第3班の隊員は、状況が理解できていないようだ。黒き鳥は、ヤミナであると教えられていたのだから。


    *


 "刹那の歯車"により生成された、時空の狭間を通って、ポルラッツとケン、アキラ、ハガネが()()()()に到着した。

「ここからは、個別に行動する。話す時間が惜しい。以上、解散」

 ポルラッツはそれだけ言って、上層階を目指す。

「僕らも行こうか」

 そうは言いつつも、ケンはポルラッツが行った上層の方と下層への階段を見比べる。アキラはハガネがついてきた事に関して、

「てっきり、ハガネは拒否すると思ったけどな」

「仲間なら、見捨てないだろ」

 ハガネのクールな言葉に、アキラは「今夜は雨だな」と。

「時間的に、セーミャは下かな」

 ケンの勘を聞いたアキラは、

「二手に分かれるか?」

「なら、俺が上層に行く。その方が、何かと都合が良いだろ」

 ハガネの提案だった。確かに、その方が都合が良いだろう。ハガネがセーミャの前に現れて、現状を説明する時間が必要になる。誤解を生みそうだし……。一方、ケンとアキラなら、仲が良い者同士で話が早い。

 二手に分かれ、アキラとケンは階段を駆け下りる。この先、通路は直角に左へ折れる。右側の壁が少しずつ崩れゆく。この状況下での戦闘は無いが、時間が少ない中、会えるまで嘸かし時間がかかるだろう。そう思っていた矢先のことだった。アキラが通路を左に曲がった瞬間、足を止めた。ケンがそれに反応できずに、アキラの背中にぶつかった。

「セーミャ? いた?」

 鼻を押さえて目を瞑るケンは、痛さよりもそっちが先に言葉に出た。

「いたけど……」

「けど?」

 ケンの視界が戻ると、セーミャが壁側に倒れており、誰かに介護されている。

 介護している人物がこちらに気付いた。こっちを見て誰だか分かった。ジンだ。

「えっと、どこから言えば……」

 アキラがいろんな湧き出る疑問に整理できず、ケンはまずセーミャの容体を確認した。右足に包帯が巻かれている。

「ジン、セーミャのこと ありがとう」

 ケンはジンにお礼を言った。

「いや、こちらこそ、ニンがお世話になり、お礼を言わねば」

「ニンは、ジンのことをかなり心配していたけど……」

「それは申し訳ないことをしているとは思うが、仕方ないんだ……」

 どうやら、ジンにも事情があるようだ。

 一方、状況整理に苦労するアキラは、

「順番に聞いて良いか? まず、ジンは上層階で戦ってたよな?」

「戦闘中に、離れたところに人がいるのが視界に入った。班のメンバーには伝えて、単独で動いた。そしたら、迷い込んだのは君たちの仲間だった。彼女は、疲労によりその場に倒れて、今に至る。右足の怪我は、道中に負ったらしい。ひとまず、包帯を巻いたがどのくらいの怪我かは分からない。切り傷程度で済んでいるとは思うが……」

「セーミャのことは、僕からもお礼を言う。で、ここはもしかして上か?」

「ん? 僕ら、下に降りたよね?」

 ケンも少し気になっていた。上層で戦闘中のジンが、なぜ下層にいるのか。その答えは簡単である。

「上というよりも、同じ階層だ。おそらく、時空間の神殿の特性で、上層と下層がループしているのかもな」

「しかし、そんなことが……」

「あり得るんだろうな、この神殿だと……」

 と、アキラも納得した。時空間の神殿が崩壊を始め、入口が崩落した。外との唯一の出入り口を失ったこの異空間は、上層と下層という常識が完全に無くなり、最下層を最上層が結合した出口の無いループとなった。しかし、崩落は継続する。やがて、この異空間が消滅するのか、残るのかは誰にも分からない。"刹那の歯車"により意図的に生成した狭間からの脱出。これが失敗した時は、もはや最期を迎えるしかないのだろうか。

 崩落へのタイムリミットは不明。予断を許さない。

「セーミャをここから避難させよう」

 ケンが提案したものの、アキラは

「下手に動かして、問題ないのか?」

 少なくとも、3人には判断できない。ジンは、選択肢として、医療班のナードに聞くことを考えたが、それは避けた方がよいと直感的に、避けた。理由はない。あくまでも直感である。

 答えが出ぬまま、アキラは次の話をする。

「ジンは戻るのか?」

「そうだな。持ち場をいつまでも離れているわけにはいかないからな」

「ケンは、セーミャを」

 アキラはその後の言葉を言わなかった。自身が何をするのか。ケンは、それを聞こうにも、聞ける雰囲気になく、黙って頷いた。ジンは、その光景を見て感じることはあったが、無言の会話へ割り込まず、持ち場へと戻る。

 アキラは、現状を過去と重ねていた。クーリック村襲撃時、自分では何もできなかった。結果、家族を失った。行動できずに失うのは、もう二度としたくない。アキラの瞳が、一層濃くなった気がした。


 奇襲をかける。アキラとジンは、黒き鳥がこちらを認知する前、死角から同時に討つ手筈を決め、現地へ駆ける。想定どおり、黒き鳥はこちらに背を向けている。高さも低く、攻撃は当たる。

 ジンとアキラは剱を構え、そのまま背中へ向けて直進し、同時に大きく斬る! 黒き鳥は咆哮するが、まだこちらを見ていない。ジンは右翼、アキラは左翼へ追撃! 攻撃のチャンスだが、正面から攻撃が無い。

 黒き鳥は、高く飛び上がる。黒き鳥が視界から離れ、アキラとジンは現状を目の当たりにした。

 カクゴウとヤミナが負傷しており、隊員は全員、両手を上げている。理解が追いつく前に、ローズリーが黒き鳥へ発砲。黒き鳥の頭部、次に右翼、バランスを崩したところ、左翼を狙い、飛べなくなった黒き鳥は床に墜ちた。かなり衰弱し、ローズリーはさらに腹部へ発砲。

「なぜ、悲観する。君たちと同じ事をしているだけだ。黒き鳥を弱体化させ、抑える。そうしなければ、あの時と同じ事になる」

 ローズリーの言うことは、確かにそうだろうが、あまりにも惨い。ある程度の攻撃はやむを得ないだろうが、度を超えていた。

「もうやめて!」

 ヤミナが叫ぶと、ローズリーはヤミナに銃口を向ける。

「この神殿は崩落する。時間が無い現状、最適解であろう。ナード、黒き鳥に鎮静剤を打て。再び起き上がるのも時間の問題だ」

 ローズリーに言われるがまま、ナードは黒き鳥へ近づき、首元へ鎮静剤を注射する。暴れる黒き鳥が、ナードを攻撃する前に、ローズリーが黒き鳥の足を撃つ。咆哮というより、悲鳴が響く。鎮静剤を打ち終わると、黒き鳥は飛べなくなった。

「さて、アレは光明劔隊が引き取る。君たち結成隊には引き渡さない」

 ローズリーはそう言い、鐡砲に弾を充填する。その隙を狙い、第3班のロドラ、ヴォスキャー、ニャセルがローズリーに斬りかかる。第1班のシーグ、アミュレはカクゴウとヤミナの方へ駆ける。ジンもシーグのあとに続き、走る。アキラは視界に入った、ナードの不穏な動きを見て、ナードに剱を向ける。

「それ、鎮静剤じゃないな。医療のことはあまり知らないけど、劇薬だろ?」

「老人に刃物を向けるとは。教育がなっておらんな」

 ナードはその劇薬をアキラに向かってガラス容器ごと投げる! アキラは、自分に当たらないように正面に向かって叩き割る。

 一方、ローズリーは、充填が間に合わないため、扃鎖軍から奪い返したスィールソードを鞘から抜き、3人の攻撃を防ぐ。

 双子のヴォスキャーとニャセルが、左右から絶妙なタイミングでローズリーへ斬りかかるも、スィールソードと体術、身のこなしで避ける。ロドラの正面からの攻撃は、スィールソードで弾かれ、隙があれば、鐡砲の充填をしようとする。その隙を与えまいと、連続で攻撃する。足を負傷したカクゴウは、シーグの肩を借りて立ち上がる。アミュレはヤミナをサポートする。ヤミナは、カクゴウのもとへ駆けつけた後、ローズリーの鐡砲により、右肩を負傷していた。

 状況は、結成隊VSローズリーの構図に。アキラは、ナードに剱を向けたまま、静観する。


 時空間の神殿、完全崩落まで、僅かな時間しか残されていない。いや、その僅かな時間さえ、残ってはいなかった……。


To be continued…

1カ所、剣表記になっていたので、剱に修正しました。(1/19)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ