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黒雲の剱(旧ブログ版ベース)  作者: サッソウ
第1部 再出発の旅篇
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第11章 遺跡と少女

 リャク村でダルク長老から託された古書、『封解の書』には読み取れない文字や記号が並んでいた。その中に地図があった。いくつか"水"や"白"といった漢字があり、中央に"天"とある。さらに地図の右下には、未完成と書かれている。

「ケン、その本は?」

 アキラが問うと、

「これはリャク村の長老にもらった"封解の書"」

「いつの間に?」

「2階に上がる直前に渡された」

 と、ケンは説明した。さらに

「地図の文字はそれぞれ神殿の位置と合致するみたい」

「ところで、"水冰の神殿"と"光明の神殿"、"白堊の神殿"、"火焰の神殿"には行ったけど、次はどうするの?」

 ミケロラがパフェとスプーンを持って訊いた。

「"雷雲の神殿"なら、俺がこの"ライトニングソード"を手に入れた場所だ」

 ヤイバが、3つのうちライトニングソードが収まる鞘を見せた。

「それなら、行くとすれば天地の神殿か……」

 ケンが言う天地の神殿は、封解の書から読み取れる範囲で得た唯一の情報でもあった。字体がつぶれて、他は読めない。暗号のような部分もあり、簡単に読み解ける代物ではないのだ。


 天地の神殿は、地図によれば神託の国のほぼ中央に位置する。その近辺に着くと、先客がいた。しかも鉢合わせで、事前に回避などできなかった。ケン達は慌てすぎて声も出ない。

「奇遇だな」

 そう言ったのはポルラッツだ。他に光明劔隊と思われる隊員が十数名はいようか。

「天地の遺跡の調査中に、退屈凌ぎができそうだ」

 ポルラッツは神殿ではなく遺跡と言った。

 ケンとアキラ、ハガネは柄に手を添えて戦闘態勢へ。ヤイバはミケロラとニン、セーミャを後方へ避難させる。

「ポルラッツ、待て。無闇矢鱈に剱を振り回すな。戦力は無駄にできん」

 遺跡の奥から出てきたのは、黒い衣装を纏った女性である。

「ヤミナ、俺様は」

 ポルラッツが最後まで言い切る前に、ヤミナは

「子供相手にムキになる必要があるか」

 ヤミナは周囲の隊員に移動を命じる。エリア23。そこへ移動するらしい。

「命拾いしたな」

 と、殺傷を禁ずる国内での発言とは思えないポルラッツの一言に、一同は何も言えなかった。

 光明劔隊が完全に移動した後、

「何で誰も何も言わないんだよ」

 アキラは自分も含めて何も言えなかったことを、呆れ半分でそう言った。

「余計なことを言わなかったが故に、面倒ごとが起きなかったのは確かでしょ?」

 と、セーミャ。確かにそれはあるだろう。

「わざとだな」

 ハガネがそう言うので、ケンは

「わざと?」

「エリア23。光明劔隊の元隊員がいるのに、目の前で発言したのは、明らかにわざとだろ」

「エリアの番号をアキラが知らないと思ったんじゃない?」

 と、セーミャ。推測でしかない。ハガネは、これ以上深読みする必要はないとセーミャの発言を否定しなかった。

「アキラ兄ちゃん、そこってどこなの?」

 と、ニン。アキラは近くに転がった大きな岩に座りながら、

「エリア23は、風山だ」

「あの烏が封印されてるっていう山?」

 セーミャのカラス発言をアキラは呟くように

「烏じゃねぇよ」

 ヤイバは光明劔隊に既に調べられた遺跡に何も残ってないとは思いつつ、

「念のためこの遺跡を調べてみる?」

「そうだね、念のため」

 ケンが遺跡に入ろうとしたとき

「ここには何も残ってないよ」

 頭上から声がした。見上げると

「奴らが何もかも持って行ったから」

 遺跡の入り口の上で、少女が足を宙に浮かせて座っている。高さは3メートルぐらいか。

「そんなところにいたら、危ないわよ」

 ミケロラの保護者的発言。

「君は?」と、ケン。

「アタイ? アタイは」

 少女の自己紹介中に、

「ケン兄ちゃん、上見て!」

 ニンはセーミャの双眼鏡で、遥か上空を見ている。そのニンが指さす方を見上げてみると、

「何かあるな……。双眼鏡、貸してくれ」

「はい」

 ケンはニンから双眼鏡を受け取り、上空を見ると

「建物か……?」

「天地の神殿はあれだよ。まぁ、アタイの知る限り、あそこまでたどり着いた人なんていないけどね」

「っで、君は?」

 改めて、ニンが聞いた。

「アタイは、エナ。ところで、さっきの奴らを追い払ってくれたのはあなたたち?」

「追い払ってはないけど、移動したよ」

 ケンは律儀に追い払いのことを否定し、この場を立ち去ったと。

「結果的には追い払ってくれたのと同じだし、ありがとう」

「ところで、天地の神殿に行きたいんだけど……」

 ケンは返答が分かっていても一応訊いてみた。でも、返答はやはり、

「無理だと思うけど……。言ったよね?」

 悩む一行。沈黙の中、アキラが

「どうせ悩むなら、またどこかで出会い頭になるか分からないし……。たまには手合わせして、特訓しようぜ。逃げというかやられてばっかりじゃ、これから先、何が起こっても……」

「そうだな。でも、ここだと」

 食料の調達ができないから、無駄に動くわけにはいかない。ケンはそう言うつもりだったが、言い切る前にエナが

「それなら、アタイの村にくれば? 商店や道場もあるよ」


 エナが住むイヴサーン村は、元々商売人が多く住む所だった。道場は、ケンとアキラの道場と比べたら、広く開放的だった。この村唯一の剱屋をケン、アキラ、ニン、ミケロラ、セーミャが訪れている。ちなみにヤイバとハガネは道場で特訓中。剱屋に来た目的は剱の補修であったが、うちは鍛冶屋じゃないと言われてしまった。

 ケンは、ニンが店頭の剱を眺めているのを見て

「ニンも準備しておいた方がいいのかもな」

「ケン、お前……、(僕も同じだが、)何を」

 考えているんだと、アキラが顔を合わせず問う。ケンは、店内の剱を見ながら

「さぁな……」

「"さぁな"って、ニンはまだ幼いのに、剱を持たせて」

「分かってる。でも、アキラ。じゃあ、僕はどうすればいいと思う?」

「ケン……」

 返答に困る、アキラ。結局、ニンに剱を買ったが、不安感があった。このままではいけないという自覚はある。だが、どのようにすればいいのかという術が思い付かない。セーミャとミケロラも2人を見て、何も言えずにいた。ちなみに、フェニックスソードは流石にニンに持たせるわけにはいかないので、ヤイバが保管している。

 道場に戻ると、ハガネとヤイバが手合わせをしていた。ただ、ヤイバは剱を一本のみ。ハガネも本気を出さないつもりだ。その理由は簡単である。本気を出せば、どうなることか。2人の実力はおそらく今のケンよりも強い。また、この手合わせでは勝敗を決めなかった。

 光明劔隊や仲間といった敵味方共に引っ掛かる点はあるものの、特に考えることもなくその日過ごした。考えても仕方ない、結論なんて不確定要素が多すぎて臆測で終わるしかないのだから。

 翌日の早朝からヤイバがニンに剱の扱い方を教えていた。これに関して、ハガネが「師匠気取りでいると、すぐに追い抜かれるぞ」と、意味がどちらにでも取られる発言をしたが、多分教えることに必死になっているヤイバには聞こえていなかったのではないだろうか。

 風山へ行くか行かないか、誰も言わないし誰も意見を述べないまま、また日が暮れた。0時を過ぎた頃、全然寝付けないケンは、村から少し離れた小川にかかる石橋まで歩いた。でも実際は、考え事をしていたら石橋に辿り着いたわけだけど。

 月の光が弱い分、星がいつもより綺麗に見える。ケンは小川に反射した星々を橋の上から眺めていた。

 仲間内では隠していた。ここ最近、変な夢を見ることがある。勝てない強敵に立ち向かっては、見えない早さの攻撃を受けて、吐血し倒れる。その痛みが妙にリアルな分、恐ろしくて仕方なかった。

 村とは反対側から足音が近づくが、ケンは気づかない。小川のせせらぎしか届いてなかった。

「夜中に出歩くと風邪引くぞ」

 ケンに声をかけたのは、光明劔隊の隊長であるカクゴウであった。

「隊長が一人出歩くなんて、炎帝釖軍に狙ってくださいって言ってるのと同じじゃないか?」

 ケンの口調は仲間内とは違った。棘のある口調だ。

「たまには一人になりたいときもあるさ」

 カクゴウとケンは互いに反対を向いて、ケンは小川に映る星を、カクゴウは空に輝く星を眺める。

「母さん、まだ目を覚まさないらしいな」

 カクゴウが言う母さんとは、ケンにとって……

「原因は光明劔隊だからな」

「……何とも言えないな。あれはポルラッツの暴走だが、隊長としてクーリック村での出来事には責任がある」

「責任? 母さんを意識不明の重体にしたのは、光明劔隊に変わりはないからな。何が隊長としての責任だよ。自分勝手すぎるだろ!」

「ケン、家族としての責任も当然だ」

 ケンは苛立ちが募り、振り向いてカクゴウの背中に向けて

「責任、責任って、それだけかよ! もっと大事なことがあるだろ! 僕はあんたをもう父さんだなんて思ってないからな」

 嘘だ。言った自分が一番分かってる。だって、カクゴウに一騎打ちで勝てなかったのは、頭のどこかで自分の父親が倒す相手じゃないって分かってたからだ。少なくとも向けるならポルラッツだ。矛盾する自分は益々暴走する。自分で何を言ってるか分からない。自分が自分でないこの感じ。夢の中もそうだった。今の僕は誰だ? ただ、最後に一言、

「……言い過ぎた」

 そう言うと、カクゴウは何故か微笑んだ。カクゴウには、ただの反抗期として映っているのか分からないけど、そんな感じで受け取った雰囲気だ。

「悩むことや失敗することは、決して悪くはない。成長の上では不可欠なものだ。たまには、思っていることをぶつければいい。私は、ケンがどう言おうがどう思おうが父親に変わりはない。一番の相談相手になれるのは家族だろ?」

 そのときのカクゴウは、父親だったころと何一つ変わっていなかった。カクゴウは別れ際に

「封解の書には、今後起こりうることも記されている。道を誤るなよ」

 まるで、このままでは道を誤るような言い方だった。それはつまり、取り返しの付かないことになるということだろう。おそらく、この助言を言うがために来たのだろう。


To be continued…

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