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依存  作者: ハルカ
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二話

8月2日

 日も出てない早朝のランニング始発の電車がちらほらと動き始める朝。

 東京の夜は深い。海が近くて山も近くてだからこそ町の光の密度が高い故郷とは大きく違った。

 日が出てないとは言え紛れもなく朝と言っても良い時間帯に確かに夜の気配が満ちていた。

 「町が発達すればするほど夜は濃くなるんだなぁ」

 鼻を刺激するアルコールの匂い、所々で見るホームレスとおぼしき人たちどれもあの狭い町では見なかった。

 「やめて!」

 そして犯罪現場も…あの町では見ることはなかった。

 数は4人。4人の男が一人の女性を車に運ぼうとしている。

 迷っている暇はなかった。

 110番を鳴らしそれを携帯のポケットに入れ僕は走った。

 何時だったか兄が言っていた。

 「良いか?冬?最近の携帯には、なGPS機能が付いていてな110番を鳴らされるだけで携帯からすぐ警察に連絡が行くというヤンキー撃退システムになっている。だから何かあったらまず110番を鳴らせ。そしたら喋らなくてもひとまず警察は動くから。」

 兄の教えを忠実に守りながら僕は走った。空手で鍛えた足は僕に僕に加速を与えた。

 幸いにも車は出ていなかった。

 一人がこっちに気づいた。手を出せば大会に出られることはないだろう。それでも構わなかった。

 振り向いた男の顔に加速が乗った状態で肘を入れた。左足で足刀蹴りを隣の男に入れる。

 正面の男の大振りの一撃を横受けで止めながら手刀打ちを決めた。

 これで残るは一人。

 だがその一人は女性に手を伸ばしながらもこっちから目を離すことはしなかった。

 「その女性から離れてくれませんか?」

 男の姿はフードを被っていて分からない。だがある程度馴れていることは認識できた。

 女性を押さえながらいつでも女性の首に手がかかるように肩の力を抜いている。

 こっちが動けないように視線と左足をこっちに向けて迎撃体制をとっていることを見ても男の実力がそれなりの物であることが理解できた。

 男はこっちの発言に答える気がないのかただ黙っているだけで喋る気配は見せなかった。

 警察のサイレンの音が響いたのを聞いて男は急いで駆け出した。

 だが駆け出した先は逃亡ルートとおぼわしき公園側ではなくこちらのほうだった。

 前蹴り一閃。そう称するに相応しい前蹴りだった。ただ空手を習っているだけでは絶対に出来ない。そう確信させる蹴りだった。

 横に回り込んで避けることを許さない。シンプルに殺意がこもった速い蹴りだった。腹筋に力をこめ耐えるが蹴りは内臓に着実にダメージを与えた。

 「所詮おままごとだな。」

 体から込み上げる吐き気のなか確かにその言葉が耳に残った。

 

 

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