7話 一閃
更新遅くなってすみません。
「・・・・・ぷっ」
「うくっくくく。」
「だ、ダメよわらっちゃ・・・ぷくくっ」
いきなりのシオンさんの恥ずかしい技名に私達チームレガリア各々《おのおの》笑いをこらえております。
あの後追い込まれたジーク様はというと、大きく振りかぶったシオンさんの懐に潜り込んだかと思うと軽々とかわし、現在は笑いをこらえる為か、大きく距離を取っておられます。
ジーク様って意外と笑上戸なんですよね。
一方シオンさんは笑いを我慢されているジーク様の態度&私達の必死に我慢している様子を見てお顔が赤いです。
リリスちゃんなんてすでに蹲って我慢してるんだもん、ごめん、私ももう我慢できそうにありません。
「ふふふあははは。」
「ふくく、ちょっ、アリス失礼よ、くくく。」
ミリィ、笑いながらだと説得力ないよ。
「て、てめぇら!何笑ってんだ!」
「だ、だってグラビティコングって、重力ゴリラ・・・ぷくくく」
シオンさんが顔を真っ赤にして怒っておられますが、それすら今の私たちにとっては笑いのツボに、ぷくくく。
「そんなよそ見してていいのか?」
律儀にも待っておられるジーク様。どうやら笑いは治まったようです。
「くそがぁっ!」
そして再び始まる打ち合い、あれ?ジーク様押されてる?
「あれって大丈夫なの?なんか押されてる気がするんだけど。」
シオンさんが単純に頭に血が登っているだけかな?すごい勢いで動きながら剣を両手で持って振りかぶっておられるんです。
おかげでジーク様は再び防戦一方。
「まぁ、心配しなくてもそろそろじゃねぇか?」
「そうね、動かなければもう少し保ったんでしょうけど。」
「ほぇ?」
二人は何か分かってるみたいだけど、素人の私には全然わかりません。
それから程なく、ジーク様の何気ない横からの剣閃がシオンさんの剣に当たったかと思うと。
「ぐぁ。」
持っていた剣を取り落とし、急にうずくまれました。
「何やってんだシオン、早く剣を拾え。」
バカ王子が何やら叫んでいますが、シオンさんは剣を拾おうとしても両手が上手く動かないご様子。
「何があったの?」
私には二人がただ剣を打ち合ってるだけに見えたのですが、お二人とも体には一切触れていませんよね?
「剣に限ってでは無いけれど、物には何でも芯ってものがあるのよ。ジークは自身の剣の芯で受けたり攻撃していたけれど、彼の方は剣が長いせいで剣先で攻撃を受けていたの。
そんなこと繰り返していたら誰でも手首を痛めるわよ。多分しばらくは腕がしびれて剣を持てないはずよ。」
「おまけに動かなければまだ保っただろうに、あのバカ自分はジークの動きに付いていけるとか思ったんだろ?動き回ったせいで無駄な動きが増え、妙な体制から剣を振り抜くから余計にダメージが増えたんだ。」
なんと、そんな事を考えて戦っておられたなんて。それにしてもアストリア様もミリィも良く見てますね。
「念のために行っておくが、ジークは全然本気を出して無いぜ、ジークの最大武器は力でも速さでもなく、技だからな。」
アストリア様の言葉は今も悪あがきをしているシオンさんに聞かせるために言われたようです。
シオンさんも薄々は分かっておられたのでしょう、アストリア様の言葉を聞いて完全に諦められたようです。
「これでこちらは一勝よ、文句は無いわね。」
ミリィがロベリアさんに対して勝利宣言をしました。
「構いませんわ、お兄様シオンの仇をとってくださいまし。」
「任せておけ、俺が負けるわけないだろう。」
「んじゃちょっと行ってくるわ。」
アストリア様がもどって来られたジーク様とハイタッチをして中央に向かわれます。
「あれ?アストリア様の木剣って変な形してない?それも両手に。」
持っておられる木剣はジーク様やシオンさんのとは違い、曲線のように全体が反った形なんです。
「あれは刀って名前の剣よ、アストリアの家系は東の島パングージの王家の血が流れているからね、あの国の王家には刀を使った特殊な戦い方が代々受け継がれているのよ。」
アストリア様のサイネリア公爵家の歴史は新しく、数代前パングージとの交流の為、スザク様と言う名の王家の方がレガリアに来られ、その際偶然にも誘拐されそうになったサイネリア王女様を救われた事があり、それがもとで二人は恋に落ち、レガリアに居座られというのは有名な話。
未だに舞台の演目や詩人が歌っていたりと、女の子ならだれでも憧れるストーリーとして人気だったりします。
「よく見ていなさい、恐らく一瞬で終わるわよ。」
「えっ?」
一瞬で終わるってどういう事なんでしょうか?
「それじゃコインを投げるわよ。」
ロベリアさんがコインを上に投げられます。
アストリア様の構えは腰を落とし体を斜めに向け、右手の木剣を左腰の辺りに、左手の木剣を右手の木剣の柄部分にクロスするようにされています。
コインが落ちると同時に、左手の木剣を発射台のように右手の木剣を滑らせて振り抜かれます。
バガッ!
「うぐっ!」
まさしく一瞬でした。
木剣を振り抜かれる所までは見えていたのですが、気が付いた時にはバカ王子が少し離れたところで倒れておられたのです。
「居合よ、左手の剣を鞘代わりにして振りぬく一閃、相手の剣を狙ってなければ木剣だとしてもアバラぐらいは折れてたんじゃない?」
うわぁ、アストリア様本気で怒ってたんだ。この間から散々ミリィが言いたい放題言われてたから、頭にきてたんでしょ、それにしても大丈夫かなあのバカ王子。
次話 「大将戦」