3話 嵐の予兆
モーニングスター大賞運営チーム様より感想を頂きました。
ありがとうございました。m(__)m
「「「「 ・・・はぁ〜。 」」」」
午前中のホームルームで精神的ダメージを負い、気づけば昼食時間になっていたと言う罰ゲームを終え、何とか学園のカフェに四人で集まることができました。
「リコリス、その様子じゃそっちも大変だったみたいね。」
「そう言うミリアリア様も相当お疲れのようにお見受けいたしますが。」
「「 はぁ〜。 」」
全員が淑女らしからぬため息をついているのはこの際見逃してほしい、リリス達のクラスにもドゥーベの侯爵令嬢が一人編入して来たらしいので、あの様子じゃ私達と同じような精神攻撃を受けたのだろう。
「まさか、あれほどのバカ・・・コホン、非常識人がこの世にいるとは思いませんでした。」
「あの国の王侯貴族はあんなバカしかいないの?」
ミリィ言葉遣いが素に戻ってる、まぁ、疲れ切っているからそこまで頭が回らないんだね、さすがにアレは私も怒りを通り越して呆れちゃったから。
自己紹介の後も先生の説明にいちいち文句をつけるわ、クラス委員を決めるのも自分しか出来ないとか言って生徒と対立し、決まったら決まったで侍女に丸投げするわで、終わる頃には二人を除きクラス中の生徒が疲れ切った顔をしていたのは言うまでもない。ちなみにお付きの侍女もかなり疲れた顔をしていた。
「それにしてもシオンさんの名前を聞いて驚いたよ、似た名前ってよくあるんだね。」
最初はアンテーゼの名前を聞いて驚いたのですが、こちらはファミリーネームで向こうはミドルネームだからね、ミリィの話では商業都市ラフィテルでは良くあるそうで、たまたまだろうという事で落ち着きました。
「そう言ってるでしょ、そんな一般常識ルテアだって知ってるわよ。」(よし、信じたわ。)
「何気にミリィ様が私の常識をどう思っているか気になるけど、その通りだよアリスちゃん。」(ミリィちゃんちょっと酷い誤魔化し方だけど、この際聞かなかった事にしとくね!)
「ラフィテルは貿易で盛んな街ですから、よくある事ですわ。」(さすがアリス様、ちょろい・・いえ純粋ですわ。)
「だよね、私はてっきりお母さんの遠縁の方かと思ってドキドキしてたのに、私のドキドキ返せって感じだよ。」
「「「 ブフッ」」」
「な、何バカな事言ってるのよ、アリスは本の読みすぎなのよ。」(今日に限って意外と鋭いわね。)
「そうだよ、ミリィちゃんはもう少し本を読んだ方がいいと思うけど、そんな三流小説みたいな話があるわけないじゃなですか。」(さっきの仕返ししちゃったケドミリィちゃん気づいてないよね。)
「そんな偶然あるわけないじゃありませんか、おほほ。」(アリス様が成長されているだと!?)
「「「 あははは。 」」」(ルテア後でシメる。)
何だかみんなの心の声が聞こえてくる感じがするんだけど・・・気のせいだよね?
「それにしても本気で戦勝国とか思っているんでしょうか?ご本人がおっしゃっていましたが、いまだに信じられませんわ。」
リリスちゃんが信じられないのも当然だよね、あの戦争に勝者はいないというか、まだ終わってもいないからね。
「信じられないけれど、おそらく編入生全員そう思ってるんでしょ?でないと敵国に我が物顔で来れるわけがないわよ。」
「ねぇミリィ・・様、ドゥーベからの編入生ってあの侍女さんも入れて全員で四人なの?」
私が知っているのはロベリア王女、シオン様、侍女のライムさん、そしてリリスちゃん達のクラスに来た侯爵家のご令嬢様を入れて全員で四人、正直これ以上増えるのは嫌なんだけど。
「あと一人いるわ、厄介なのがアストリアと同じクラスにね。」
「その厄介な人物とは誰か聞きたいな、蛮族の国の王女よ。」
いきなり話しかけてきたのは編入生のシオンさんと見知らぬ男性、恐らくこの人が5人目なんでしょ。
私達の会話に口を挟んできたかと思うと、失礼にもその男性がミリィ顎に手を当て無理やり自分の方へ顔を向けたんです。
「まったく、礼儀も知らない人間に言われたくないわね。」
ミリィはバシッっと無礼な男の手を払いのけ睨めつけてます。
「中々乱暴だな、やはり蛮族の国の女も所詮は蛮族か。」
「あなたの国では女性に失礼な行為をしないと話しかける事も出来ないようね、ケーレス王子。」
現れた無礼な男はまさかの王子様らしいです。それじゃロベリアさんのお兄さんって事?そう言われれば顔立ちがよく似ていますね、双子・・・なのでしょうか?
「顔だけは少々マシなのに、女性としての可憐さの欠片もない。」
やれやれってカッコよくポーズで気取ってるつもりなんだろうけど、残念なほど似合ってない。
だって北国出身なのになぜか色黒の筋骨隆隆、街中で出会ったらとても王子様とは気づけない風貌、むしろ鉱山で働いてると言った方がしっくりくるぐらいなんです。
そんな人間観察をしていたら偶然目が合ってしまい、慌てて目をそらしちゃいました。変に文句を言われたらこまりますからね、あれでもいち王子様らしいですから、ここは怯えたフリをしておきます。
「ほぉ、蛮族の国ではもったいないぐらいの美人ではないか。」
美人って言葉につい反応しちゃって、そろっと見てみると、あれ?私を見てる?私は美人って感じじゃないんだけどなぁ。
「女、名はなんと申す。」
「えっア、アリスといいます。」
上から下まで舐め回すように見つめられ、全身から悪寒を感じながら何とか名乗りますが、ちょっと気分が悪くなってきましたよ。
「アリスか光栄に思え、滞在中余の世話をさせてやる。」
(・・・は?)
「ケーレス様に見初められたんだありがたく思うんだな。」
そう言ったかと思うとシオンさんが私の腕を掴んで無理やり連れて行こうとしたんです。
(ちょっ、痛いってば。)
「貴様、汚い手でアリスに触れるな!」
すぐさまミリィが私を助けようと立ち上がるも王子様が間に入って塞がれてしまいます。
この間私は抵抗するも、腕を自分の頭より高く上げられてしい足がつま先立ち状態で、暴れる事もなかなかできないんです。
「王女がそんな汚い言葉を使うとは、この国の質もたかがしれてるな。」
「まったくですわ、お兄様に気に入られただけで幸運だというのに何が不満なのかしら。」
呼んでもないのにあわられたのはバカ王女事ロベリア様、またややこしいのか来たよ。
「ふざけんじゃないわよ、誰が喜んでアリスを渡すと思ってるの!」
礼儀や周りの状況を完全に捨ててミリィが大声で怒ってる、たぶん本気で怒ってるんだと思う。こんな姿を見たのっていつ以来だったけ・・・。
「あら、私達を怒らたらどうなるか分かってるでしょ?たかが侍女一人でこの国が救われるのよ、いい事だらけじゃない。」
「それか王女自ら余の世話でもしたいと言うのか?二人ぐらいなら相手をしてやらんでもないぞ。」
「おほほほ」
「あははは」
なにこれ、兄弟揃って頭悪すぎでしょ!
(プッツン。)
あっキレた。
ミリィが王女を突き飛ばしバカ王子に殴りかかろうとした時、背後から止めにかかったのは、
「隣国の王子よその辺にしておけ、これ以上この国で騒ぎ立てるのであれば、ただでは済まさんぞ。」
見た事もない怖い顔をしたアストリア様でした。
次回 第4話 「決闘」
月曜日更新予定です。