41話 手作り大作戦
「な、なんでいるんですか!?」
「ん?あぁ、俺らもいずれ騎士になるからな、この合宿は言わば入団試験みたいなもんなんだよ。」
隣で拗ねていたアストリア様が教えてくださいますが、よくよく考えてみれば、学生だしお二人は騎士様の家系だから当然といえば当然なんですが、頭がパニック状態の私には理解が及びませんでした。
実はこのお二人、レガリアの四大公爵家ハルジオン家とサイネリア家のご子息様なんです。
以前学園でお会いした時は知らなかったんです・・・、だってファーストネームしか言ってくれなかったんだもん。帰ってからミリィに聞いてビックリしていたんですからね!ね!
「あら、姫様顔を赤くしちゃって可愛いですね。うふふ」
って、ミズキさん何バラシ・・・何言ってるんですか!
「もぅ、からかわないで下さい。」ぷん
落ち着け私、ただ不意を突かれただけだから、ココリナちゃんの姿を思い出すの!
・・・・よし!落ち落ち着いた。
「ぶつぶつ何言ってんだ?」
「!」
気づけば私の目の前にアストリア様の顔が目の間に!って近いってば!
「はいはい、姫様を驚かせないであげてね。」
ミズキさんが気をきかせて引き離してくださいます。ありがとうミズキさん、でも原因をつくったのはアナタだからね!
「姫様、そろそろお部屋に戻りませんと、ティアラ様との訓練があるのではございませんか?」
そうでした、あの日以来本格的にお姉様に言霊の練習を教わっているんんでした。早く戻らないとおくれてしまいますね。
「そうですね、あの、明日も皆さん訓練されているのですか?」
「まぁ、休日以外は毎日ここで練習していると思うけど。」
「それじゃ明日は何かお体に良い物を用意してきますね。」
見習い騎士様の皆さんおつかれのようですので、何か元気になる差し入れをご用意したいなっと思っただけなんですが、アストリア様が「おっ、手作りか?」なんておっしゃるから、また私の顔絶対赤くなってる!
だって手作りと言えば『ハートの手作りお弁当』を連想しちゃったじゃないですか!
「よ~し、訓練を再開するぞ、持ち場に戻れ。」
私が再びパニックに突入しようとしたところで、教官の号令が響き渡ります。ナイスタイミングです教官!
ぞろそろと休憩されていた皆さんが一斉に戻られます。
「んじゃまたな。」
「あっ、はい、頑張ってください。」
ジーク様やパフィオさん達に手を振りながら見送ります。あとついでにアストリア様も。
「うふふ、姫様も隅に置けませんね。」
「公爵家のご子息様ですか、姫様のお相手には申し分がございませんね。」
「なななななに言ってるんですかぁ!もう知りません!」ぷんぷん
お相手に申し分無いって、そんな訳ないじゃないですか、いやいや、そうじゃなくて明日どうしよう、アストリア様のせいで差し入れの難易度が上がっちゃいましたよ。
翌日の午後、エレノアさん率いる侍女さんズにお願いして沢山のクッキーを焼くことになりました。なんでもお菓子作りの基本はクッキーなんだそうです。
「思ったより簡単なんですね。」
「生地の分量さえ間違えなければ型を取って焼けばいいだけですからね。あとはビーンズやチョコチップなんかを添えたら見た目も可愛くなりますよ。」
エレノアさんに教えてもらいながら、可愛くアレンジしてみます。うん、お菓子作りも結構楽しいね。
「あら姫様、美味しそうにできてるじゃないですか。」
「男の子は女の子の手作りに弱いですからね、いい作戦だと思いますよ。うふふ」
いつの間にか来られていたサツキさんとミズキさんが私を冷やかして来られます。だから違いますってば、もう。
「やはりそうだったんですね!」
「アリスちゃんもとうとう好きな子が出来たんだ。」
「急に手作りなんて言い出すから可笑しいと思っていたのよね。」
今まで手伝ってくださっていた侍女さんズが乙女チックにきゃーきゃーと騒いておられます、なんだか辺り一面ピンクのハートが飛び交っているんですが、これって目の錯覚だよね!?
「もう、誤解しないでください。見習い騎士様全員への差し入れなんです!さぁ、そろそろ時間なんで、冷たい果実水の用意をしたら行くので、サツキさんとミズキさんも手伝ってください!」
一人じゃ持てないし、どうせまた私に着いて来られるんでしょうから手伝ってもらいますよ。
結果、なぜだか知らないけれど私の後には、ぞろぞろと侍女さんズが付いて来られる事になってしまいました。理由は見習い騎士様全員にお配りするのに人でがいるのと、私のは、はつ、初こ、恋、うぎゃ〜!ミズキさんが変なこと言うから変に意識しちゃうじゃないですか!
「ちゃ〜っす教官、アリス様からの差し入れをお届けにきました。」
『『『『『『 うをぉぉぉ!! 』』』』』』
事前に差し入れをお持ちすると伝えていたので、皆さんお待ちになられていたんでしょう、こんなに喜ばれるとは思っていませんでした。
そういえば先ほど味見でまたお菓子を食べちゃいましたっけ、太った事に気づかれなければいいんですが。
「よ〜し一旦休憩だ。」
「可愛い女の子の手作りだからしっかり味わってだべるんだよ。」
もうミズキさん全部が全部、私が作った訳じゃないんですよ。
一人一人に包み分けたクッキーの袋と、果実水を入れたコップを皆さんに配っていきます。
「皆さん訓練お疲れ様です。果実水のお代わりはありますので言ってくださいね。」
『『『『『『 は〜い。 』』』』』』
なんだかこのやり取りも慣れてきちゃいましたね、私結構成長したかも、なんて思っていたら。
「はい姫様、ご自身で作られたクッキーは直接初恋の方にお渡しくだいね。」
ってエレノアさんまで何っ言ってるんですか!また顔が赤くなっちゃったじゃないですか!
「おーっす、」
もう!このタイミングで来ないでくださいよアストリア様。
「さぁ、早くしないと後がつかえてしまいますよ。」
「は、はい、これをどうぞ、ジーク様。」
サツキさんに促されて持っていたクッキーの包みをジーク様に渡して、頑張ったよ私。
「俺じゃねぇのかよ。」
お隣にちょっと拗ねたアストリア様がおられました。
「ありがとう、アリス。」
あぅ、笑顔が眩しいですジーク様。
「はいはい、姫様、アストリア様が拗ねておられますからちゃっちゃと済ませてくださいね。」
「は、はいすみません。アストリア様どうぞ。」
「なんだか俺ってジークのついでの感じがするのは気のせいか?」ボソッ
「悪気はないんだよ、ただアリス様は元から天然さんだから許してあげて。」ボソッ
なぜか落ち込まれているアストリア様と、隣で励ましておられるパフィオさんがおられました。どうしたんだろ?