39話 聖剣をつくろう
喧嘩しました。
お母様の里帰りから王都に戻ってきた私達、お父様に一連のご報告と侍女さん達にお土産を配り終えた私は、連日書庫に籠る日々が続いています。
理由は一つ、ミリィの聖剣を作るため。先日邪霊との戦いでミリィが無茶な剣の使い方をし事で、私が怒りそれが原因で思いっきり喧嘩しました。そりゃもう侍女さんズが慌てるわ、ビスケスさん達も慌てるわ、お爺様やお祖母様も慌てるわで、相当怒っていましたから!
「おい、フローラ、あの二人を止めなくていいのか?」
「アリスちゃんがあんなに怒ってるところ見た事ないわよ。早く止めてあげないと。」
「放っておいたらいいんですよ、いつものことだから、どうせ夜には二人仲良く寝るんですから。」
お母様それ、酷くないですか?まぁ、一緒には寝たけれど、まだ怒っているんですから!
そして今、書物を読み返しながら聖剣作りの方法を探しているんです。
「ん〜〜〜、そんな都合よく乗ってないなぁ。」
「当たり前でしょ、そもそも聖剣なんて言っても、急にに強くなったりするわけじゃないんだから。素材を強化したほうが現実的よ。」
ミリィが私の様子を見にきてお茶とお菓子の準備をしてくれてます。あれ以来今まで以上私に優しいんだけど、まだ許していませんからね。
「でもね、昔は戦争のせいで邪霊がたくさん生まれたって話しだよ?剣も効かないのにどうやって戦ったの?それに初代国王のレガリア様は、祈り続ける聖女レーネス様を100日間邪霊から守ったって言われているじゃない。」
「ん〜、それが本当なら何か特別な剣でも使ってたってことだよね、お城にそんな都合のいい剣とかは残ってないし。」
「今一番現実的なのはミリィに流れている聖女様の血だよね、ためしに私の血でも試してみようか?精霊さんとの相性は私のほうがいいんだし。」
「却下。今度は私が怒るわよ。」
うぅ。やっぱり難しいのかなぁ。でもまた同じようなことが起こればミリィは自分を傷つけるだろうし。
「ちょっと休憩しなさい、本ばかり読んでいたら太るわよ。」
「なっ、私太ってないもん。」
何言うのよ!甘いものは頭の活動にいいんだよ!、運動はしてないけど・・・ちょっと太ったの私?
「はいはい、じゃ私そろそろ行くね。」
「また訓練場?」
「そうよ、剣が良くても扱う私が弱ければ意味がないしね。」
最近ミリィはビスケスさんに剣を教わっているみたいなんです。何か筋がいいって褒められているとかで。
「うぅ〜やっぱり太ったかなぁ。」
ミリィが去った後ちょっとお腹のあたりや、二の腕あたりを摘んでは脂肪の具合をたしかめて、よし、ちょっと散歩でもしようかな。
ささっと読んでいた本を片付け、飲んでいたティーセットを、近くにおられた侍女さんが持って行ってくださり、服装は・・・ドレスだけど外に出るわけじゃないから別にいいか。
「ん〜、せっかく書庫まで来てるんだから、ちょっとあまり行かないところとか行ってみたいなぁ。」
今来てる書庫はいつもいるプライベートエリアではなく、お城の関係者なら誰でも入ることができる場所にあるんです。なので今も廊下をお勤めされている方が行き来されてます。
「大庭園の方にでも行ってみようかな。」
廊下でウロウロしていてもお仕事の邪魔になりますからね、ここは無難に大庭園でも観に行こうかな。
大庭園は大規模なガーデンパーティーができる大きな庭園なんです。何度か行ったことがあるんですが、広すぎて昔迷子になったことが・・・、いや思い出すのはやめとこ。
今なら迷子にならないと思うし、お城の中だから別に怒られないよねってことで、早速向かうことにしたのですが。
「あのぉ〜、何かご用でしょうか?」
「いえいえ、お気になさらないでください。」
「ただの見回りですので。」
そう言って私に着いてこられるサツキさんとミズキさん。先日改めて自己紹介して以来、気づけば近くにおられるんです。なんだか落ち着きません。
「どちらに行かれるのですか?」
「大庭園ですけれど。」
「あら偶然ですね、私達もちょうど行くところだったんですよ。」
とか言って、このやり取り一体何度目だろう?明らかに今行き先きめましたよね?
まぁ気にしても仕方がないし、何を言っても付いて来られるんだろうから、でもどうせならお話の相手ぐらいなってもらってもいいですよね?お二人に前から気になっていたことがあるんです。
「少し伺ってもいいですか?」
「はい、なんでしょうか?」
「その、どうやったらそんなスタイルがよくなれるんですか?」
「へ?」
「スタイル、ですか?」
うっ、やっぱり変なこと聞いちゃったかな、だって気になるじゃないですか!お二人ともすごくスラリとされてるんですよ、決して太ったから気にしてる訳じゃないんですから!
「姫様、太りました?」
「ふ、太ってないもん!ちょっと食べ過ぎただけだもん!」
「やっぱり気にしてました?」
「ぷくくくっ。」
もぅひどいよ、ミズキさんは後ろでお腹抱えて笑ってるし。でもやっぱり太ったのかなぁ。
「大丈夫ですよ、全然太っておられませんし、むしろもう少し食べられた方がいいと思いますよ。」
「そうですよ、姫様はまだ成長期なんですから、胸だってこれから大きくなりますよ。」
胸も大きくなるのかなぁ。ぷにぷにと胸を触っていたら、む!お二人がまた笑いを堪えてます。いいじゃないですか、私だって女の子なんですよ。ぷんぷん
「それよりなんですか、その姫様ってのは?」
「その方が可愛いじゃないですか。」
「そうですよ、王女様より姫様のほうが響きがいいと思いませんか?」
私だってお姫様って呼び方のほうが好きですよ、ミリィやお姉様に姫様って呼んだこともありますよ、ミリィには叩かれ、お姉様には泣かれましたけれど・・・。って、そうじゃなくて。
「いえ、そういう問題じゃなくてですね。私は・・」
「存じておりますよ、その上で私達が勝手に呼んでいるだけですから。」
「気にしないでくださいね。」
だめだ、勝てる気がしないよ・・・。
「もういいです、好きに呼んでください・・・。」
「「 はい。そうさせていただきます。 」」
さすが双子というところなんでしょうか?息がぴったりですね。
そんなやり取りをしていると大庭園に到着しました。
夏の日差しが降り注いで花壇の花々元気に咲いています。さすがお手入れが行き届いていますね。
ふらりとお花を見ながら歩き回っていると、奥のほうから騎士様方が訓練をされている声が聞こえてきます。
「ミリィもいるのかなぁ。」
「ミリアリア様は別の訓練所におられますから、こちらにはいらっしゃいませんよ。」
「あそこは一般騎士が訓練するところです、ちょうど今だと騎士希望者の強化合宿の真っ最中じゃないかな。」
私の呟きにお二人が教えてくださいます。他にも訓練所があるんだ、そえにしても騎士希望者の合宿ってどんなのでしょうか?
「騎士希望者はというのは、国中の学生から希望者を集めた強化合宿なんです。合宿を乗り越えられたら騎士への道も開かれますすし、少しですがお給料もでるんですよ。もちろん身分差なんて関係ありません。」
サツキさんが私の考えを読み取ったのか騎士希望者さんの説明をしてくださいます。
「私達も昔行ってたよね、あれは地獄だった。」
「大変なんですか?」
「そりゃもう、朝から基礎体力作りに剣の素振り、午後からは格闘と剣術の模擬戦と、毎日毎日教官に絞られて、付いていけない者はどんどん脱落していきましたからね。」
騎士様を目指すのはやはり大変なんですね、お二人もまだ若いのに剣の腕はすごかったですから。
「脱落される方もおられるんですね、何か元気付けられたらいいんだけど。」
「あら、いいですね、姫様みたいに可愛い女の子に見られたら、見習い騎士君は元気になるんじゃないですか?」
「いいね、その案採用。さぁ姫様見に行きましょ、私達が付いていますから大丈夫ですよ。」
何か知らない間に訓練を見に行くことになっちゃったけど、ちょっと興味もあるし、予定があるわけじゃないから別にいいよね。