33話 プレゼント争奪戦
イリアのお説きょ・・・海から戻って来た私達は軽く湯浴みをした後、私服に着替えテラスでお昼をいただくことになりました。
「うぅ、なんだか体がザラザラするよぉ〜。」
「肌が赤くなってる〜。」
食事をしながらココリナちゃん達が唸っておられます。海に行く前にいちお説明はしていたんですが。
「あれだけ長い間海に入っていたら同然ですわ、授業でも海の水は塩分を含んでいると習ったではありませんか、その状態で夏の日差しを浴びれば肌が荒れるのは同然ですわよ。」
イリアの言う通り塩自体は別に問題ないんですが、海水は別らしく、長時間浸かっていたり、濡れた状態で太陽の日差しを浴び続けると、個人差はありますが肌が荒れたりするそうなんです。
以前、海に入ってはいけないと言われながら、ミリィと一緒に海に入って、後で侍女さんに体の隅々まで洗われたことがあるんです。それでも私の肌は少し赤くなってしまいお母様とエレノアさんにこってり怒られ、翌日は海辺の日陰で一日過ごすことになったんです。なぜか平気だったミリィは翌日も黙って海水に浸かってましたけど。
「肌荒れに良いクリームがございますので、後でご用意しておきますね。」
「おねがいします、エレノアさん。」
さすがエレノアさんです。たぶん念のためミリィに用意していたんだと思いますが、あいにくミリィは全くダメージを受けていないご様子です。
本当は精霊さんにお願いして治療してもいいのですが、肌荒れ程度であれば逆に、直さないほうがいいんです。しかも今回の場合肌荒れをしている面積が多いですからね、広範囲や連続的に外的な力で治してしまうと、人間本来の、傷を治す力が一定期間低下すると言われているんです。
「午後からどうする?特に何もなければこれから街に行ってみない?」
ミリィが皆んなに聞いてきます。これは当初から二人で考えていて、旅行と言えばお土産だよね、って事で街の散策を予定に入れていたんです。
「わぁ、いいですね。港町なら変わったものが売っているかもしれないし。」
「お母さん達のお土産をどうしようかと思っていたんです。」
「じゃ決まりね。エレノア、馬車の用意をしておいて。」
エレノアさんが「畏まりました。」と言って、待機されていた侍女さんに指示をされます。
「それじゃ準備ができたら玄関に集合ね。」
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「ココリナちゃん、お肌はどう?」
アリスちゃんが私を気にして訪ねてきます。出てくる前にエレノアと言うお名前の侍女さんから頂いたクリームが効いているのか、痛みはかなり引いてきています。
「ありがとう、もらったクリームでかなり楽になったよ。」
今回のように肌荒れの面積が多い時は、精霊の力で治すのことは体に良くないらしく、アリスちゃんは申し訳なさそうな顔をしてるんです。私としてはそんな事は思ってもいないので、逆に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
二台の馬車で港町に着いた私達は、商店が立ち並ぶ広場で馬車を降り、街中を散策しながらお店を見ていきます。
別荘地から少し距離があるとはいえ、簡単に馬車を出すとか私達には考えられないんだけどね。
「わぁ、このアクセサリー可愛い。」
「ほんとだ、この指輪も変わってるね。」
ユリネさんが近くにあった雑貨屋さんで貝殻のアクセサリーを見て喜んでいます。
この雑貨屋さんは可愛い小物やぬいぐるみなんかを置いている、女の子向けのお店のようですね。
私も皆んなと一緒にアクセサリーを見ていると、アリスちゃんが一人奥のぬいぐるみを熱心に見つめてます。そういえば以前お城に伺った時、部屋の中にいっぱいぬいぐるみがあったけ。
「気に入ったのがあったの?」
私がそう聞くとアリスちゃんが一つのイルカのぬいぐるみを抱いて。
「この子が私を見てくるんだけど、ん~銅貨16枚か。」
ぬいぐるみは基本前しか見てないからね。それより銅貨16枚程度で迷う金額?
「銅貨16枚ぐらいなら別に買ってもいいんじゃないの?」
私は不思議に思って聞いてみたんだけど。
「え~、そんな無駄遣いできないよぉ。」
へ?無駄遣いってそれぐらい頼んだら買えるんじゃないの?
アリスちゃんが言うには、自身のお金は亡くなった両親が残してくれたものらしく、大半は王妃様が管理なさっているらしいんです。だからお金は頑張って節約をしているんだとか。
うん、たぶん嘘ではないんだろうけど、王妃様に騙されてるね。現にミリアリア様が私に目で訴えてきているもの。じゃここはお礼として私がプレゼントしちゃいましょう。
「アリ・・」
「アリス、良ければ私がプレゼントさせていただいてもよろしいでしょうか?」
私が言おうとしていた事を、先にイリアさんが言っちゃいましたよ!こっそり話を聞いていたんですか!
「えっ、いいんですか?でも、ご迷惑をお掛けしちゃいますし。」
「そんな事はございませんわ、この度の旅行の事で、ぜひお礼がしたいと思っていたのです。」
「ちょっとまったぁ~!私にもぜひお礼をさせてください!こんなお嬢様みたいな経験をさせてもらったんですから!このぐらい私がプレゼントしますよ。」
「あら、それでしたら私くしもぜひお礼がしたいですわ。」
ユリネさんに続き、リリアナさんまで。うぅ、私が先だったのにぃ。
「待ってください!私が先ですよ!アリスちゃんには私がプレゼントするんです!」
アリスちゃんの一番の友達は私なんですから!
「はいはい、そんなに騒いだらお店に迷惑でしょ。」
ミリアリア様が止めて来られますが、これだけは譲れませんよ!
「皆んなありがとう、でも悪いからいいよ。」
「でしたらこう言うのはどうでしょうか?皆さんで少しづつ出し合ってプレゼントするというのは。それでしたら一人の負担も減りますし、アリスさんも気を使わなくてよくなるのでは?」
しゅんとしたアリスちゃんに、リリアナさんが提案してきます。たしかにこれでしたらアリスちゃんも喜んでくれるのではないかな。
「でも、いいの?」
「そんなのもちろんです。ね。」
「「「「「「「 ええ。 」」」」」」」」
私達は一人銅貨2枚づつ出し合って買ったぬいぐるみを、アリスちゃんは大事そうに抱いていました。ぬいぐるみが好きなんて、まだまだお子様ですね。
こうして短かったアリスちゃんプレゼント争奪戦は幕を閉じたのでした。