29話 お友達宣言、そして夏
お兄様に授業中呼び出しされた事で、教室にもどるなり、クラス中から質問攻めに合った日から一週間後、イリア様の謹慎が終わり登校されてきました。
謹慎の件は理事長に私とお兄様からお願いして、表向きはお体の調子が悪いので、休養の為と伝えれれています。ココリナちゃん達には若干怪しまれてはいますが。
「おはようございます、アリス様。」
クラスに入るなり、わざわざ私の所にこられて丁寧にお挨拶してくださいます。
いつもは誰からの挨拶をしても『ふんっ!』、ってされるのをクラス全員知っているから、イリア様の突然の行動に皆驚いて、こっそりこちらを伺っています。
「おはようございます。イリア様、お休み中お加減は、大丈夫でしたか?」
ちょっとお顔がすぐれないようにみえますが、ご病気というわけでなないのですから、久々の学園で緊張されているんでしょうか?
「ご心配ありがとうございます、私は大丈夫です。その、今まで申し訳ございませんでした。」
「「「「「!!!!!」」」」」
今なんと!?イリア様に謝られましたよ!こっそり覗いていたクラスの皆さんが唖然とされています。だって自意識過剰、横行闊歩、おまけに気随気儘の男爵令嬢様が人に謝るなんて前代未聞ですから!ちょっといいすぎ?
「あの〜、イリア様?その件はもう終わっておりますので、今まで通りで大丈夫ですよ?」ボソッ
「そういう訳にはまいりません、私くしはまだアリス様に謝罪をしておりませんから。」
「わかりました、わかりましたから、皆さんが見ていますし、それに(説明したと思いますが、様づけはやめてください。ボソッ)」
男爵令嬢様に『様』づけなんて、皆さんの視線がイタイんですよぉ。ただせさえこの間のお兄様呼び出し事件で、怪しい謎の人扱いをされているんですから。
「あっ、申し訳ございません、ですがなんとお呼びすればいいのか・・・。」
「普通にアリスでいいですから。悩まないでください。」
男爵様に何か言われたのでしょうか?まったく貴族様は身分階級に細かいんですから。ちなみに私は平民ですよ?
「それでしたら私もイリアとお呼びください。」
うぁ、それかなりハードル高いんですが!でもここで嫌です、なんて言えば振り出しに戻りそうだからなぁ。
「えぇっと、イリア、出来ればこれからは仲良くして頂きたいのですが。」
「私でよければ喜んで。アリス、これからも宜しくお願いします。」
おぉ、これはお友達宣言です!ついにイリアさ・・イリアとも仲良くなれそうですよ。
「イリアさん、もうアリスさんを虐めないでくださいね。」
リリアナさん、笑顔に影が見えますよ!
「リリアナさん、あの時はごめんなさい。」
イリアがリリアナさんにまで謝られていますよ。あの時とは入学式の帰りの事ですよね?
「いえいえ、これからは私たちとも仲良くしてくださいね。」
「そうですね、アリスちゃんの天然っぷりに振り回されるのが、私たちだけって不公平ですから。」
「もしもしココリナちゃん?さらっとひどい事いってないかなぁ?」
「その、ココリナさん達はアリスさんの事を・・・。」ボソッ
「だいたい知っていますよ?この間アリスちゃん家(お城)でお泊まり会をして、多大な常識はずれに精神的ダメージを負ったばかりですから。」ボソッ
「そっ、それは大変だったのですね・・・。」ボソッ
イリアが何を想像したかわからないけど、ココリナちゃん常識はずれの多大な精神的ダメージってなに!?
「あの〜、まるで私が常識はずれと言われている気がするんですが・・・。」
「アリスさ・・、アリスはもしかして自覚がないんですか?」
「イリアさん、悲しいけれど、これがアリスちゃんなんです。」
「そうですわね、アリスさんの中の常識が私たちには一切通用しない事を、理解されておられないんです。」
「まぁアリスさんですからね。」
「私たちの基準で考えていたら頭の処理が追いつかなくなりますから。」
「ひどいよ皆んな!わぁ〜ん、イリア、皆んながいじめるよぉ〜」
「きゃ」
おろおろ油断しているイリアに、思いっきりとびつきました。何だかひどい言われようですが、皆んなが笑顔だから、まぁいいかな。
それからはイリアは、プリムラさんとユリネさんとも今までの関係ではなく、本当の意味でお友達になられたようで、一度皆さんにお家(お城)でのお茶会をお誘いしたんですが、なぜかプリムラさんとユリネさんを除く全員に激しく断られ、結局イリアの実家であるクリスタータ家でお茶会をしたり、学年一斉テストの一般常識問題で、赤点を取ってみんなに迷惑をかけたりと、学園生活をエンジョイしながら迎える夏の長期休み。
「アリスはどこか旅行に行かれるんですか?」
皆さんのおかげで再テストに合格し、無事に明日から長期休暇を迎える、本日は一学期の最終日です。
「毎年夏はお母様のご実家であるティターニア領に行っているから、たぶん今年もそうだと思いますよ。」
ティターニア領はレガリアの南東にあり、気候も豊だし、隣国の商業都市との貿易で栄えているんです。
「ティターニア領ですと、近くに海があるのではないですか?」
「そうなんですよ!海の近くに別荘とプライベートビーチがあって、浜辺がとてもキレイなんですよ。」
「海!?」
「別荘!?」
「プライベートビーチ!?」
ココリナちゃん、カトレアさん、そしてユリネさんがそれぞれ反応されています。
「いいよね、皆んなは。」
「私たち平民シスターズは旅行なんていけませんよ。」
「別荘ってなんですか!そんなお金の無駄使いは平民の敵です!」
なんだか最近ユリネさんを加えた3人で平民シスターズなるものを結成されたようです。
「あの〜、もしよければ、一度別荘をお借りできないかお母様に聞いてみようか?」
「「本当ですか!?」」
ユリネさんとプリムラさんが、目をキラキラさせて迫ってきました。ちょっと近いですよ。
「あまり期待はしないでね、取り敢えず聞いてみるだけだから。」
「「お願いします!」」
「ねぇ、何も知らないってある意味罪よね。」ボソッ
「そうですわね、一度アリスさんの常識に触れられたほうがよろしいですし。」ボソッ
「お二人ともそれはさすがに言い過ぎでは?」ボソッ
「なんだか楽しくなってきたよ。今年は皆んなで海水浴ですね。」
「わっ、私たちもメンバーに入っているみたいですよ。」ボソッ
「まぁ、なんとなくそんな気はしておりましたが・・・。」ボソッ
「人生は諦めが肝心ですよね。」ボソッ
「無事に帰ってこれるかなぁ。」ボソッ
そんなこんなで夏のリゾードバカンスが始まるのでした。
「み、皆さんいったいどんな経験をされたんですか!?」ボソッ