26話 続パジャマパーティー
「ごめんなさい、私てっきり知っているものだと思っていて。」
「あっ、いえ、別に隠していた訳ではなく、ただ、私の一存で家名を伏せていただけですから。」
パフィオさんってホントに貴族様なんですね。そう言われればたしかに思い当たる節はいくつかあります。
「皆さん、改めましてインシグネ伯爵家の四女、パフィオ・ペディルム・インシグネです。今まで黙っており申し訳ございません。もし可能でしたら、いままで通りパフィオとしてお付き合いください。」
改めて私達にご挨拶されます。それより、私が確かめる事はただ一つ。
「カトレアさん!もしかして実は貴族様だとか言いませんよね?」
5人の中でリリアナさんは公爵家の侍女、アリスちゃんは王族家お気に入りの天然娘、パフィオさんの正体は貴族様とくれば、本当の平民は私とカトレアさんだけになるじゃないですか!
「大丈夫です!私は正真正銘の平民ですから!ココリナさんこそ、実は貴族様とかいいませんよね?」
「大丈夫!生まれも育ちも下町ですから!」
ガシッっと二人で抱き合って友情を確かめ合います。平民ばんざーい!しくしく。
「突っ込むところそこ!?」
「何かお二人で新たな友情が芽生えたようですわね。」
「二人とも勘違いしているけど、私とリリアナさんも平民だよ~。」
アリスちゃんが何か言っていますが、お二人は違いますから!特にアリスちゃんは絶対に普通民じゃありませんから!
「アリスさん何言っているんですか、リリアナさんは公爵家の関係者じゃないですか!」
「アリスちゃんに至ってはもう一切の常識が通用しない、国内最大の不思議ちゃんが、普通の平民な訳ないでしょ!」
「「うわぁ~ん。」」
再びカトレアさんと抱き合って泣きましたよ!
「ココリナちゃん、よくわからないけれど、さらりと酷いこと言ってない?」
「あの~、私の立場は・・・。」
パフィオさんが端っこでイジケておられました。
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「気を取り直して第一回、ぶっちゃけ恋バナ大会〜〜!」
「ココリナさんいきなりなんですの?」
ココリナちゃんがそんな事を言い出しました。立ち直ったと思ったら、いきなりどうしたんだろ?
「ココリナちゃん大丈夫?どこか頭打った?」
「アリスちゃんには言われたくないけど、女子会ですよ!恋バナを語らず何を語るんですか!」
「ねぇ、最近私の扱いひどくない?」
なんだか最近ココリナちゃんの、私に対する扱いが酷いのは気のせいじゃないよね?
「恋バナなんて言われても、私とパフィオは貴族だからおそらく政略結婚よ?
「ミリアリア様、私は結婚するつもりは・・・」
「お二人とも逃げるのは卑怯ですよ!ネタはあがっているんですから!」
いつになくココリナちゃんが燃えてるよぉ。
「ネタってなんの事よ?」
「学園社交界で男性の方とダンスをされていたじゃないですか!仲よさそうに!」
『ネタは上がっているんだ!』的な感じで、ビシッ!とミリィを指差ししています。ココリナちゃん指差しはお下品だよ。
「あっ、あれはアリスをた助けてくれたお礼で踊っただけよ・・・。」
「あれ?ミリィなにか顔が赤くなってない?」
ミリィがココリナちゃんから不自然に顔をそらし、かすかに頬が赤くなっています。
「そこ!自分は関係ない風を装ってるけど、アリスちゃんも男の方を踊ってたでしょ!」
「わっ、私?あれは、その、ミリィが踊ったから、わっ、私もついでに・・ごにょごにょ」
あれはその・・・。踊ろうってさそわれたわけだし・・・。
「ミリィ、ココリナちゃんがこわいよぉ〜。」ボソッ
「何か、いつもと雰囲気が違うわね・・・」ボソッ
「コソコソ二人で相談しない!」
「「はいっ!」」
その後ココリナちゃんの猛追に、カトレアさんとリリアナさんが加わり、幼い頃に出会った事まで喋らされました・・・。
今夜のココリナちゃんはちょっと怖かったです。
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アリスちゃん達の恋バナを無理やり聞き出した翌朝、公務で出られている国王様と王妃様を除く、王家ご一家様(+アリスちゃん)と朝食をいただき、馬車で街に出かけたのでした・・・。
「ココリナちゃん、みんなぁ大丈夫?」
油断してました・・・、まさか朝からエリクシール王子様とティアラ王女様、ミリアリア王女様ぷらすアリスちゃんの王子王女様のトリプルコンボ+あるふぁに遭遇する事になるとは。
さすがに貴族だと判明したパフィオさんですら、カチコチに固まって言葉遣いが可笑しかったんですから。
「アリスちゃん、朝からあれは反則だと思うんだけど・・・。」
「そうですわね、学園でお会いした事があると言っても、朝からは心臓に悪ぅございます。」
私たちの抗議に頭をかしげていますが、やっぱり天然さんなんだね・・・。一般人に王子様や王女様は心臓に悪いんですよ!
「リリアナさん、ココリナちゃん、アリスさんに抗議をされても無駄かと思いますよ。」
「なんだかカトレアさんもココリナちゃんに似てきてないかなぁ。」
私たち5人は馬車に揺られ、演劇を見るために街に繰り出しています。
ミリアリア様はご予定があるそうでお城に残られています。なぜ演劇かというと、ティアラ様からいま人気の劇団チケットをいただいたのです。
「この劇団の演劇、いま人気で中々チケットが取れないんですよね。私前回の演劇も見たんですが、主人公役の男性がすごくかっこいいんですよ!」
いつになくカトレアさんが饒舌です。演劇が趣味なんてしりませんでした。
「そうなんだ、今日の劇はどんな物語なのかなぁ、楽しみだね。」
アリスちゃんは演劇を初めて見るそうでさっきからそわそわしっぱなしです。
皆んなで演劇の話をしていると馬車が緩やかに止まり、劇場に到着したようです。
御者の方がエスコートして私たちを下ろしてくださいます。
「お待ちしておりました。当支配人のグレイと申します。皆様をお席にご案内させていただきます。」
いきなり支配人キターーー!!なんですか!アリスちゃん以外、皆さん口を開けて固まっておられますよ!
支配人様に案内された場所はやはりと言っていいのかVIP席でした・・・。
もう驚きませんよ・・・。
広々とした個室に豪華なソファー、お菓子が出てきたり、お茶が出てきたりと至れり尽くせりで、お金持ちさんはこんな生活してるんですねぇ〜。ええ、平民の私にはほど多い世界ですよ。ぐすん。
帰りにカトレアさんが行きたがっていたセルフカフェに寄り、アリスちゃんが予想通り注文の品を受け取らずに席についたり、昼食用に頼んだホットドックにフォークとナイフは?なんてボケをかましてくれたりと、平穏無事に私たち初のお泊まり会は無事終了したのでした。
休日なにのいつも以上に疲れてるのは、仕方がないよね・・・。