5話 悪役令嬢さま再び
校門に近づくにつれ目に入ってくるのは、怯えながら倒れている子と、その子を支えている2人組の女性生徒、対するは大声で批難している1人のご令嬢様と後ろに控える2人の女性生徒。
2人組の女の子達は怯えながら必死で誤っているようだけれど、一向に罵声を浴びせられており、それを見守るように数人の生徒が様子を伺っておられます。
1人のご令嬢様とはもちろんイリア様、そして取り巻きの如く後ろにいるのは同じクラスの2人の生徒さん。お名前は・・・すみません覚えてないや。
「イリアさんって意外とセオリー通りの人なんだね。」
「セオリー?」
「うん、悪役令嬢様っていつも取り巻きに2人ついてるじゃない?」
「・・えっと、それはいくらなんでも本の読みすぎかな。」
それにしても私より友達が多いなんてちょっと羨ましいです・・・。
「どうしよう?」
「ん〜、とりあえず止めた方が良いよね。」
騒ぎが大きくなりかけけているから、早く止めないと。
「えっ、ちょっと!アリスちゃん!」
「あの〜、取りあえず何があったのか知りませんが、この子達も誤っているみたいだから、許してあげたらどうでしょか?」
今度はちゃんと言葉を選んで丁寧にお願いしました。私はだって成長しているんです!
「またあなたですの!」
キッ!!と振り向き、私の方を睨んできます。
「なんですのあなた!イリア様に向かって気安く声を掛けないでくださる?」
「そうですわ、平民がイリア様に話かけるなんて失礼ですよ!」
そう言って取り巻き2人組が、私とイリアさんの間に入ってきます。
うん、定番だね。
私は倒れている子が気になっっていたので、取り巻きさんを無視することに決め、横を通り過ぎ女の子達のところへ向かいました。
「大丈夫?」
「はっ、はい、大丈夫です。」
怯えながらも懸命にこたえてくれますが、体がちょっと震えているみたいです。相手は貴族様ですから当然ですよね。
倒れている子をなんとか立たせると「イタッ」っと片足を抑えています。
「・・ちょっとごめんね。」
そう言ってすこしだけスカート上げさせてもらうと、転んだ際、擦ってしまったであろう傷に血が滲んでます。
なんだか痛そうです。
状況から考えると、この怪我をさせたのはイリア様?
そう思ってイリア様の方を見上げてみると。
「私じゃないわよ!この子がぶつかって来て、勝手に転けたのよ!」
わざわざ説明してくださるイリア様、うん、だいたいどんな状況だったのか想像できますね。
「取りあえず傷をの手当てをしないとね。ココリナちゃん水とか持ってないよね?」
「水?」
「うん、ちょっと傷口に付いている土を落とさないと。」
「あっ、俺が持っています。」
周りで様子を見ていた男の子が、そう言ってお水が入っているだろう水筒を取り出し、私に渡してくれます。
それを皮切りに「私もお手伝いします」「俺も」そういって何人かが手伝ってくれます。
よく見れば周りの子達も何か出来ないかと、もどかしかったんだと思う。
でも相手は貴族様だし手が出せなかったんだ。
「ありがとうございます、助かります。」
そう言って水筒から持っていたハンカチに水をかけて。
「ちょっと痛いけど我慢してね」
そう言って傷の周りを丁寧に拭いていきます。
土の汚れを落とし綺麗になったところで、傷口に両手を軽く当て
「お願い精霊さん」(ボソっ)
精霊さんにこの子の傷を治してもらうよう心でお願いします。わずかに淡い光が両手から漏れますが、午後の陽の光の中ではあまり目立たなかったようです。
「うん、こんな感じかなぁ。どう痛くない?」
そういって両手を離すと。
「えっ、うそ。傷跡が・・・。」
「「「「「「「「!!!!!!!」」」」」」」」
「なっ、癒しの奇跡・・・ですの・・・?」
なんだかイリア様が驚いた顔をしているけど、頭が冷えたみたいなので、もう大丈夫かな。
「えっと、私ちょっと急いでいるのでもう行きますが、イリア様はお怪我されてませんか?もし痛いところがあれば言ってくださいね。」
「!!!、ふん!」
「「あっ、イリア様」」
そう言って取り巻き2人を連れて校門の方へ去って行かれます。
何か分かんないけど取り敢えず大丈夫みたいです。
「あっ、あのありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
ペコリとお礼を言ってくださる女の子2組。
「気にしなくていいよぉ、なんとなく何があったのか分かるから。それじゃ。」
2人は多分悪くないんだと思う。
それより早く行かないとミリィを待たせちゃう。ちょっと急ぎ足で校門に向かいます。
「ごめんね、私何もできなくて。」
「?、・・あぁイリア様のこと?」
ココリナちゃんが申し訳なさそうに誤ってきます。
「そんな事ないよ。近くにいてくれただけでも心強かったしね。」
ココリナちゃんはやさしいなぁ。
急いで校門まで行くとすでに馬車が止まってました。あぁ、ごめんなさい。
「アリス様お待ちしておりました。」
私を迎えてくださったのは、まだ居られたのですか、きしだんちょぉぉぉ!!
「ごめんなさい、遅くなってしまって。」ペコリ
「いえいえ、さぁ、中へどうぞ。」
騎士団長様が馬車の踏み台を用意して、扉を開けてくださいます。
「ココリナちゃん、今日はありがとう。明日からもよろしね。」
なんだか口を開けたまま固まっているココリナちゃんに、さよならの挨拶をして馬車に乗り込みます。
「ミリィ、待たせてごめんね。」
「大丈夫よ、そんなに待ってないから。」
そのまま馬車に揺られながらミリィと一緒にお城へ帰っていきました。
お母様はどうやらお仕事が入っていたらしく、ミリィの入学式を見たら先に帰られたそうです。
「今日はいろいろ疲れたけど楽しかった。お友達も出来たんだよ。」
「友達ってさっきの子?」
「うん、ココリナちゃんって言って・・・・」
『離れ離れの学園生活初日、愛する二人はお互い今日どんな事があったのか楽しく、時には笑いながら話をし、帰路へつくのでした。この先待ち構えているであろう苦難の道のりなど知るよしもなく。』
・・・うん、私やっぱりお話作るのは苦手だね。