4話 私って推薦入学なの?
「悪役令嬢様に襲われている時、颯爽と現れた白馬に乗っていない王子様、いや王女様?ん〜、女性騎士様?に助けられ、2人はやがて恋に落ちるのでした。」
うん、私にはお話作りは無理だね。
「アリスちゃん、何ぶつぶつ言ってるの?」
「ココリナちゃん、私に小説家には向いてないみたい。」
「?」
いろんな出来事があったお昼休みを無事(?)過ごし、ただいまクラス全員で移動しながら、校内施設の説明を受けています。
「こちらがヴィクトリアの庭園となり、休日以外は主にスチュワートの生徒が日々管理する事になります。」
マリー先生が先頭に立ち、今後授業として使用する施設の丁寧に説明して下さいます。
お城の庭園ほど広くはありませんが、ガーデンパーティーが出来るぐらいの十分な広さで、花壇には季節のお花がきちんとお手入れされています。
「わぁ、すごいね。ここでパーティーとか出来そう。」
「おとぎ話に出てくる庭園みたい。」
「うわぁ、噴水まであるよ。」
庭園を見たクラスの女子達が嬉しそうに話されています。
「すごいね、お手入れもすごく丁寧だし、お花も生き生きしてる。」
スチュワートには庭師の学科がありますから、きっとその生徒さん達がお世話をされているんですね。
「ホント綺麗だね、ヴィクトリアの生徒さんはこんな所で素敵なドレスを着て、王子様とダンスとかされるんだろうなぁ。」
ココリナちゃんがうっとりとした表情で、庭園を眺めながら夢の世界へ向かっています。(そっちにいっちゃダメだよ〜、帰っておいでぇ〜〜。)
まぁ実際に、王子様はヴィクトリアに通われていますからね、あながち間違ってはいないだけど。
「私、てっきりスチュワートの学生はヴィクトリアの敷地に入ってはいけないものだと思ってたよ。」
思っていた事をそのまま口にするとココリナちゃんが。
「あれ?アリスちゃん、入学説明会に来てなかったの?」
「ほぇ?入学説明会???」
なにそれ?
「うん、試験に合格した後に学校の説明会があって、その時にヴィクトリアの庭園や校内施設の清掃なんかもスチュワートの学生がするんだよ、って。」
「そっ、そうなんだ、説明会って私行ってなかったから・・・。」
お母様・・・説明会どころか、試験って何!?入学試験とか受けてないんですけど!!!
私が頭の中で葛藤していると。
「アリスちゃん、もしかして推薦入学なの?」
「?」
「えっと、推薦入学ってのはご両親が貴族様とかにお仕えされていて、身元がしっかりし、貴族様が推薦してくださる事によって、試験なしで入学する事が出来るんだけれど。
入学した生徒が問題を起こしたり、成績が悪くて卒業ができなかった場合、推薦をした方に恥をかかせてしまうから、よほどの信頼がないと推薦はされないんだよ。」
「そっ、そうなんだ・・。」
確かに貴族様がわざわざ推薦したのに、退学させられたり、成績が悪かったりすると、お屋敷で働いているであろう両親はご主人様に申し訳がたたないし、貴族様もそんな使用人を遠ざけてしまうかもしれ無いもんね。
それじゃ私はお母様の推薦って事になるんだろうか?
「ん〜〜〜???」
「だっ、大丈夫だよ、アリスちゃんならきっと立派な侍女さんになれるよ!」
私が考え事をしている姿を、不安がっていると思ったのか慌てて応援してくれます。ココリナちゃんは良い子だね。
「ありがとう。私、頑張るよ!」
王妃様の推薦とかってやっぱりバレると大騒ぎになるんだろうなぁ、なんて考えてた私は、とりあえず笑顔いっぱいで答えておきました。
一通り校内を周り再び教室に戻ってきた私達。
今日は初日なので入学式と構内説明のみで、明日から本格的な授業がスタートするとの事です。
頂いた教材をカバンに詰め、生徒の皆さんが各々に帰って行かれます。
「アリスちゃん途中まで一緒に帰えらない?」
ココリナちゃんがそう言って誘ってくれるんだけど。
「ん〜、ごめんねミリィと一緒に帰る事になってて。」
お父様とお母様から、学園への通学には必ず馬車を使うように言われているんです。そんなに遠くないんだけどね。
最初は断っってたんですが、お兄様に説得され、お姉様に抱きつかれ、ミリィには諦めるように諭《 さと》されたんです。
「そうなんだ・・、でもヴィクトリアの馬車置き場まで行くの?」
馬車置き場は当然ヴィクトリアの方にしか無いんです。
スチュワートの生徒が授業以外でヴィクトリアに行くには先生の許可がいると、先ほど説明を受けたばかりだから心配してくれているんだと思う。
「うんん、スチュワートの校門前で待つように言われてるの。」
ヴィクトリアに行ってもいいんですが、ミリィと入れ違いになったりする場合があるのと、校門前には常に守衛さんと警護の騎士さんがおられるので、敷地内にいると安全なんだそうです。
「それじゃ、校門まで一緒に行こっか。」
「うん、いいよ。」
そう言って、帰り支度を整え、明日からの授業の事を話しながら2人で校門の方へ向かっている途中。
「平民の分際で私にぶつかるなんてどういうおつもり!!」
どこかで聞いた声が前方から聞こえてきました。
「ココリナちゃん、私、何かまた面倒な事が起こりそうな感じがするんだけど。」(ボソっ)
「うん、私もそんな気がする・・・。」(ボソっ)
そうは言っても迎えの馬車が来る前には、校門に着いておきたいし。
帰り道なんだから仕方がないと思い、様子を伺いながら進むと、そこには予想取りの人がいました。