3話 常識ってなんですか?
「ねぇ、アリスちゃんって実は貴族のお嬢様だったりしない?」
お食事をしながら突然ココリナちゃんがそう聞いてきたんですが。
「ふぇ?違うけど、なんで?」もぐもぐ。
なんでそんな事聞いてくるんだろう?この平凡が服を着て歩いている様な私を、貴族様と間違える要素がまったく見当たらないんですが?
頭を傾けて考えてみるけど、まったく思い当たりがないんですが。
「だって普通ファミリーネームって貴族様やお金持ちのご家庭しか名乗れないもの。」もぐもぐ。
「へ?」
ココリナちゃんの言ってる意味がわからず再び頭を傾げていると。
「もしかしてアリスちゃん、ファミリーネームの意味って知らない?」
「えっ?普通、家族はみんな同じファミリーネームを名乗るんだよね?」もぐもぐ。
私のアンテーゼもお母さんの名前をそのまま名乗っているんだけど、そういえばお父さんもアンテーゼ・・・だっけ?
「うん、まぁ意味はそうなんだけど、ファミリーネームを名乗るにはたくさんのお金が必要だから、普通は個人名ファーストネームしか無いんだよ。必要もないし。」もぐもぐ。
「えぇぇぇ〜〜〜!!!」
「やっぱり知らなかったんだ。」
そんな事誰も教えてくれなかったよぉぉ!
「アンテーゼはお母さんのだし、ミリィもファミリーネームあったし・・・。」
そう言えば侍女さん達のファミリーネームって、聞いた事なかったかも・・・。
「ミリィさんって?」
「えっ、あっ、私の友達で今お世話になってるおしろ・・、んっん、お家のお嬢様なの。」
「・・アリスちゃんのご両親って、もしかしてどこかの貴族様にお仕えされてるの?」もぐもぐ。
「ん?違うよ。私の両親6年前に亡くなってるから。」もぐもぐ。
「!ごめんなさい、私余計なこと聞いちゃって!」
ココリナちゃんが申し訳ない!って感じで謝ってくるんだけど。
「気になくて大丈夫だよ。まぁ、ちょっとさみしいけど、今は育てて頂いてるお父様とお母様達がいてくれるから。」
これは本当だよ!愛情をいっっっぱい感じるから!
「・・そうなんだ、じゃミリィさんはそのご両親の娘さん・・なの?」
「そうだよ。同じ年で今日から隣の学校に通ってると思うよ。」もぐもぐ。
「隣ってヴィクトリア学園だよね?それじゃやっぱり・・・(身分差で違う学校に、それからお嬢様とかに虐められて・・・ボソッ)。・・・私が力になれる事があればなんでも言ってね!」
「う、うんありがとう。」
そう言って私の両手を握りしめて、力ずよく気遣ってくれてるんだけど、私なにか変な事言ったけ?
迫ってきたココリナちゃんに対して私はそう言うしかありませんでした。
もぐもぐ。
よく考えれば名前の事は何も解決していないけど、まぁいいや。今後アンテーゼはしばらく封印しておこう。
お食事を終え、ココリナちゃんと午後から授業で廻る事になっている、構内案内について話しをしていると、私のすぐ後ろになんだかいや~な雰囲気を感じて。
「ちょっと、邪魔なんだけど!」
「あっ、ごめんなさい。」
慌てて机をもどして道を開けます。すっかり話しに夢中で道を塞いじゃってましたね、ごめんなさい。
私が謝りながら道を開けると、「ふんっ!」と睨みながらご自分の席に戻られます。
「まったく、どうせどこかの成金上がりの小娘の分際で、貴族である私の道を妨げるなんて、何を考えてるのかしら!親の顔が見てみたいわ!」
これってもしかして、よく物語なんかで出てくる悪役令嬢様のセリフ!!
ちなみに今の私の親は国王様ですよぉ〜。
「私、初めて見たよ。」
「えっ、あぁ、私も貴族様ってはじめて・・・・」
「物語に出てくる悪役令嬢様。」
あっ、思わず口にでちゃった。
し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。
教室内が息を止めたように急に静まりかえっちゃいます。
「なっ、なっ、なんですってぇ〜〜〜〜〜〜!!!」
あっ、怒った。
「えっと、イリア・・さま?ごめんなさい、初めて見たもんだからつい。」
謝ったんですが、ものすごい顔で私を睨みつけてきます!
「あっ、あなたね!たかが平民の小娘が、男爵令嬢の私に対しなんと言う侮辱を!」
「えっと、悪い意味で言ったのではなくて、ただちょっと失礼な物言いに、思わず口にでちゃっただけで・・・。とりあえず何かごめんなさい。」
そう言って丁寧に頭を下げた私に
「ばっ、バカにして!」
そう言って手を大きく振りかぶって私に迫ってきました。
親父にもぶたれたことが無いのに!なんて言いませんから!
バシッ!
音はしたけど衝撃が来ないからそろぉ〜っと、頭を上げて様子を見ると、なんかカッコイイ女の人がイリアさんの腕を捕まえて防いでくれたようです。
「そこまでにされてはいかがですか、男爵令嬢様。」
教室内から「おぉ〜〜」っと歓声が飛び交います。
「ここは身分など関係のない学園内です。それにこの方に対し嫌味を言われたのはあなたの方が先ですよ。」
すこしキツイ口調で非難されます。
イリア様も教室内の視線を感じたのか「ふんっ!」と言って、掴まれていた腕を振り払い、ご立腹のままご自分の席に戻られました。
その間私はというと。
「もったいななぁ、白馬に乗ってたらもっと素敵なのに。」ボソッ
違うことを考えてました。
とりあえず。
「あの、ありがとうございました。(ペコリ)イリア様も失礼な事を言ってしまい、申し訳ございませんでした。(ペコリ)」
相手は男爵令嬢様ですからね、空気は読める子なんです!なんか私が悪い気がしますからここはちゃんと謝ります!
初日からなんだかいっぱいありすぎて・・・・
学校って楽しいところですね!