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6:『恋する乙女』で『ストーカー』⑷

恐らく、次回かその次で、主人公と結城琴乃葉の過去話が終わります。その後は中間テストの話です


HRと午前の授業が終わり、昼食の時間。俺はいつものように京治と新、桜花の計4人で食堂で食事を摂っていた。


「なぁ、兄太。 そのカツと俺のエビフライ交換しようぜ」


「別に構わないが・・・恒例のジャンケン勝負だ! ルールは簡単。勝った方が負けた方のおかずで一番でかいヤツと交換できる!もちろん、勝者の方は小さいヤツを敗者に渡します」


「その勝負、僕も参加していいかな? ケータ君」


「私も!私も!」


「ケー君、私も」


新、桜花、雫が参戦したいと手をあげる。・・・・・雫?


「下から出てくんなっていつも言ってんだろ! 雫!!」


自分の股辺りから顔を出す幼馴染の時からに叫んだ。 それに対し、


「最初からそこにいたよ?」


「鈍感ラブコメ主人公以上に鈍感すぎでしょ、アンタ」


「流石にそれはないわ、兄太」


「だってここからの方がケー君の膝上に座りやすいんだもん」


新、桜花、京治の三人はどこか呆れたように告げ、雫はなんか言ってることが違った。 ・・・言っている意味が理解不能だ。股辺りから出た方が膝上にのりやすい? アホなの?馬鹿なの? 俺の幼馴染ってここまでバカだったっけ? 確かに昔からおかしな事ばかりしてたけどこんなに酷いのは初めてだ。


「意味わからんが、とりあえずそこから出ろ。 周りからの視線がいたい」


「・・・見つめられても痛くないよ?」


「そういう意味じゃねえ、バカ」


ペシっと雫のおでこを軽く叩く。それにより、こてんとバランスを崩して倒れる雫。その拍子に、熊さんパンツがコンニチワした。俺は大きく溜息をつき、


「ほら、パンツ見えてるから早く立て」


そう指摘する。・・・と。


ドスッ!


という鈍い音がすぐ近くでした。わかりやすく言うと机に乗せられた俺の左手に触れないギリギリの位置から。ゴクリと唾を飲み込み、恐る恐る視線を下げる。そしてそこにあったのは、人振りの刀。一瞬にして刀を投げた人物が俺の頭をよぎった。


「・・・・大親友バリア!!」


「へ、ちょ・・・おごはっ!?」


俺は咄嗟に隣に座っていた京治を盾にする。そのタイミングで、今度は刀ではなく、マジモンの拳が京治の鳩尾に叩き込まれた。鈍い音がして、俺は顔を痛みにしかめる。当たっているのは京治だが、なんというか雰囲気的な威圧的な感じで思わず痛いと思ってしまった。 よいしょ、と京治バリアの横から覗くとガチめにブチ切れ状態の、桜冬さくらと 雪音ゆきねが居た。


白雪のように真っ白な長髪に、紫紺色の瞳。

露出度高めのサラシに袴姿の変態聖剣士。


羞恥心はどこに捨ててきたのか気になる。 背中の傷は剣士の恥だって事は聞いたことあるけど、それよりも先にほぼ半裸をどうにかした方がいいと思う。ていうか、よくそんな格好で電車やらバスを使うものだ。痴漢遭遇率高いのに学習能力のない馬鹿だ。・・・もしかして、痴漢されると分かって同じ時間帯の同じ車両に乗ってるのかもしれない。 確か、痴漢魔に自分が襲われることで他の女性が襲われないとかどうとか。 まぁ、それが嘘か真か分からないが。 そんな事よりもまずはこの状況をどうにかしなくては!


「食堂で暴れたりすんなよ! 雪音!!」


大親友バリアで攻撃を防ぎながら、叫ぶ。だが、拳の嵐は止まらない。早くしなくては京治がドMに調教されてしまう。 今の所は、半分受け継いだ(ビースト)の血のおかげで耐久力はあるが、そう長くは保たない。と、


「はぁ、食堂では静かにしなよ。雪音さん」


席に座っていた新がため息をついて、雪音の動きを止めた。超能力者である新にしか出来ない念動力。


「離せ! 新!! アイツは雫の下着を!」


「確かに見ちゃったのはいけないことだけど、暴力はダメだよ、暴力は」


「それはどうでもいい! 私が怒ってるのは、雫の下着を見て興奮しなかったことに対してだ!!」


雪音は親の仇を見るような目で叫んだ。それに対し、同意する京治(ばか)と、呆れる桜花と新と俺、状況がわかっていない(あほ)


「逆に聞くけど、ケータ君が岸野院さんの下着に興奮したら、それこそ犯罪行為に近いことだと思うけど?」


「それはそれだ! 普通に考えてみなさい! 可愛い女の子の下着を見て興奮しない思春期真っ只中のド変態男子高校生がいると思う!? 否、いない!! だから、さっさと興奮しろ! クソむっつり野郎!! それともあれか? 私のパンツじゃないと興奮しないのか!? そうなんでしょ! だったら今から脱いでやるわ!!よーく見てなさいよ!!」


「・・・・っ!?」


バチィッ!と電流が流れ、新の念動力が解かれる。雪音が生まれつき持つ【聖心(せいしん)】が発動したのだ。この力は『全ての魔法・超能力といった不可思議な力による攻撃全てから使用者を守る』という効果がある神の加護を与えられた者にしか宿らない聖力(せいりょく)。 ただし、発動するまでに数分間の時間を必要とするという欠点がある。また他にも欠点があり、それは--


「昼飯ぐれぇ静かにできねえのか、お(めぇ)は!」


そんな声と共に繰り出されるジャンプキックが雪音の脇腹を貫いた。と言っても、本当に貫いた訳では無い。言葉の綾だ。まぁ、クリティカルヒットしたし、痛いのにかわりはないが。そして倒れる雪音のの首根っこを掴み、俺達を睨む合法ロリ教師の華薇先生。


「テメェらも後で相談室に来い」


「「「「「・・・・」」」」」


「返事は!」


「「「「「は、はい!!」」」」」


最後に舌打ちをして、華薇先生は、気絶した雪音を引きずって、食道をあとにした。


「・・・飯食べるか」


「あ、あぁ。 そうだな」


「うん、そうしよっか」


「・・・そうね」


「・・・うん」


俺達はお通夜のようなテンションで食事を摂った。


--⑴--


放課後。相談室で華薇先生による『華薇先生の拷問☆スペシャル』をくらった帰り。唯一、股間蹴りをされた俺は京治におんぶしてもらっている。半鬼半人の桜花も、超能力者の新、半獣人の京治に、半神半人の雫に目立った傷はない。せいぜい、殴られた部位が赤くなっているぐらいだ。


「ところで、ケータ君」


「ん?どうしたんだ、新」


京治の隣を歩く新が声をかけてきた。


「昨日の件だよ。 ほら、部活入ってない人リストに入ってた結城琴乃葉さん」


「あぁ、その子なら文芸部に行けば会えると思うぞ」


「え? そうなの?」


「あぁ、うん。 昨日たまたま会ってな」


俺はそう言って昨日の経緯を話した。それを聞いた後、新と京治は喜び、桜花と雫は興味なさげだった。


「っつうわけで、今から部室行こうぜ」


「うん、そうだね」


「良くわかんないけど、私も行く~!」


「お前は来んな! バカ!」


俺達そう話し合っていると、


「四人とも、今から部活かぁ。 じゃ、また明日ね」


桜花がそう言って、階段を降りていった。この時間帯はどの生徒も部活の時間帯なのだが、桜花は塾があるため、部活に入っていない。

桜花に別れを告げた後、俺達は文芸部のある旧部室棟へと向かった。 この部室棟には、文芸部、書道部、軽音部、ゲーム部、美術部、写真部、新聞部、合唱部、吹奏楽部、ゲーム制作部、演劇部、家庭科部の部室が存在している。因みにもう一つの新部室棟は運動部が使用している。 別に学園側からの差別などでは決してない。というのも、旧部室棟という名前ではあるが、校舎内は綺麗に掃除されているし、最新の設備もしっかりと完備されている。ただ男子トイレの個室だけが和式なのは不満ではあるが。それ以外は快適だ。理事長曰く壊すのが勿体なかったとのことらしい。


「来てるといいね、結城さん」


「あぁ、そうだな」


「でもよぉ、入ってくれんのかねぇ?来たとしても」


「んー? 誰か新しい子が入ってくるの?」


俺達は綺麗に手入れされた廊下を歩きながら、そんなことを話す。確かに、部室に来てくれるよう頼んだが、彼女の口から『来る』とは聞いていない。ましてや、来ても入ってくれるとは限らない。部員は男子5人と女子3人+女教師1人。リストアップ表の情報では、結城琴乃葉は『女性恐怖症』。 文芸部に女子と女教師合わせて4人がいると分かれば入部しない可能性もある。これは賭けのようなものだ。


「とりあえず、話は俺が聞くよ。 彼女は女性恐怖症だし、それに知らない人が大勢よりも顔見知りの方が少しは楽だろうし」


「まぁ、それがいいだろうな」


「うん。 それにケータ君なら安心かな」


「女性恐怖症なら仕方ないかー。 ・・・・男装すればいけるかな!」


「無理だからやめとけ、バカ」


アホみたいな提案をする雫に本日二度目のおでこビンタをかます。


「新と京治はこのアホ見張っておいてくれ」


「うん、任せて」


「ん、任せろ」


新と京治は頷き、雫の腕を片方ずつ捕まえる。小さな子供を連行するような形だ。それを確認して文芸部室のある階段を上る。


暫くして、文芸部室が見えてくると、扉の前でオロオロしているフードを被った中学生(?)が見えた。なんとなく見覚えのある背格好と態度。俺は声をかけようと中学生(?)に近づこうとすると、それより早く--


「おーい、そこの中坊。 文芸部室の前で何してんだ?」


我が親友、京治が声をかけた。その声にびっくりしたのか、フード中学生(?)は肩をビクッと震わせてこちらをバッと振り返った。


切れ長の眉毛と紅玉のような瞳、柔らかそうな唇。 可愛い部類に入るであろう少女。


「す、すみません…でした!?」


少女は深くフードで顔を隠し、俺達とは逆方向へと駆けていった。あっという間に彼女の姿は消えた。 早すぎて反応することが出来なかった。どうやら、新と京治、雫もらしい。


「もしかして・・・今のが結城琴乃葉さん?」


「え? マジで!?」


「あぁ、まじだよ。 バカ京治」


俺はジト目を京治に向ける。 普通、いきなり話しかけるか? 初対面だぞ。オマケにどう考えたってあの子は人見知り激しそうだろうが。だと言うのに空気も読めずに話しかけんな。 だからKY京治って呼ばれるんだぞ、我が親友。


「はぁ、仕方ない。あの子を探すぞ。ただし、見つけたら俺に連絡してくれ。絶対に話しかけたりするなよ」


「私知ってるよ! それってフリだよね? 話しかけたりするなよって言ってるけど本当は話しかけろってことでしょ?」


「・・・新」


「う、うん。 岸野院さんの事は僕に任せて」


馬鹿なことを言う雫を新に任せ、俺達は結城琴乃葉を探し始めた。

ではまた次回!

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