5:『恋する乙女』で『ストーカー』⑶
久しぶりの投稿です‼︎
慈愛市慈愛町現時刻夜の11時。 俺は妹華に頼まれた通り、友達二名を送っている最中だ。本音を言うともうちょい早めに送りたかったのだが股間を蹴られたことで腹が痛くなりトイレに篭っていて遅くなってしまった。 うん、俺は悪くない。 それにしてもやけに今日は何か嫌な予感がしてならない。神隠しの噂によれば単独よりも集団の方が狙われやすいと聞く。 現に神隠しにあっているのは集団の女子高生や男子高校生ばかりだ。今のところ、俺が通っている学園の生徒に被害はないらしい。 だが、なんとなくだが今日は自分達が被害に遭うんじゃないかと不安になる。
「お兄、遅い!!」
「あ、あぁ、悪い」
考え事をしていた俺の耳に妹華の声が聞こえ、思考を切り替えて歩く速度をあげた。俺より少し前を歩く白凪桔梗と星京翠、妹華は他愛のない会話で盛り上がっていた。その時の妹華の笑顔は最近全然俺の前では見せてくれないものだった。妹華が中学生時は人見知りが激しくて俺が卒業した時は大泣きしてたほどだ。 そんな妹華がここまで変わるなんて思わなかったな。そんな事を思いながら歩いていると、前を歩く妹華達が誰かの家の前で足を止めた。 どうやらどちらかの家に着いたらしい。 俺は少し駆け足で駆け寄って表札を確認した。 そこには『白凪』と刻まれていた。
「俺の家からそんなに遠くないんだな、桔梗ちゃんの家」
「そうなんですよ~! あ、だからって用があろうとなかろうと気持ち悪いので私の家に来ないでくださいね! シスコンお兄さん♪」
白凪桔梗は満面の笑顔で心弱し豆腐メンタル君の俺に毒を吐いてきた。 これはあれだね、殺しに来てるね、俺の事。 というか初対面でかなり嫌われたもんだ。 俺は壁を指でなぞりながら落ち込んでいると、ガチャという音が鳴り白凪家から若い女性が姿を現した。
腰まである黒髪、黄金色の瞳に整いすぎている顔。 背は目測で168cmくらいで、とにかく胸がデカイ。 Eはありそうだ。服装は白色のシャツの上に水色のエプロンを身に付け、腰部まである青色のデニム地のショートパンツを履いている。
(ふむ、お姉さんかな? それともお母さん? 流石に間違えたら失礼だから何も言えないんだよなぁ。 さて、どうしたものか)
俺は腕を組んで悩んでいると、服の裾を引っ張られていることに気づき、そちらに視線を移すと、苦虫を噛み潰したような顔をした妹華がいた。 どうやら話したいことがあるらしい。
「どうかしたのか? 妹華」
「お兄を連れてきたせいで、桔梗のお姉さんがお礼したいって言ってきたんだけど、流石に断ってくれるよね?」
妹華はめちゃくちゃ嫌そうな顔で尋ねてきた。 心の底から来て欲しくないようだ。俺はニコリとした笑顔を浮かべ、苦虫を噛み潰したような顔をする妹華の頭に手を置き、告げた。
「い・や・だ」
「な、何でよ!? こんなにかわいい妹が頼んでんのよ! 他の男だったら喜んで高さ59mの崖から飛び降りてるところよ!?」
「へー、だから? それはリアル妹のいない奴だったらの話だろ? 悪いけど俺は妹に萌えたりする人種じゃないからね、分かったか?」
「ぐ、ぎぎぎ...ふ、ふん! 好きにすれば!!」
妹華はしたり顔の俺の脛を爪先で蹴って、膨れっ面で星京翠と歩き出した。 俺は痛む脛を一度さすってからため息をついて、白凪桔梗のお姉さんに軽く頭を下げた。そしてそのばをあとにしようとして、背後から、
「こんな時間まで妹がお世話になりました! このお礼は近いうちにしますので!!」
白凪桔梗のお姉さんの声が聞こえた。 耳にスッと入り込んでくるような澄んだ声だった。俺はペコリともう一度頭を下げて、今度こそその場を後にした。
それから数十分後、俺達は星京翠の家の前に着いていた。親は仕事で遅いらしく、オマケに兄弟はいないらしい。なので夜は一人のようだ。そりゃ、人の家でご飯食べたくなるわな。 誰かと食べる飯は美味しいって言うしな。
「あ、あの、妹華ちゃん、ここまでありがとね。 お、お兄さんも」
星京翠は顔を少し俯かせ俺と妹華にお礼を告げた。俺は彼女の頭に手を置き、視線を合わせると、笑顔を浮かべた。
「いつも妹と仲良くしてくれてありがとね。 今度は妹華の話たくさん聞かせて、翠ちゃん」
「は、はい! お兄さん」
「これ妹華には内緒ね」
俺は自身の口元に指を当てウインクして、トークアプリ《Friends》のIDが書かれたメモ紙を星京翠の手に握らせた。因みに妹華は欠伸をしていた。友達の前でも平常運転なんだなぁと思いながら、俺は星京翠の頭から手を離し、部屋に消えていく背中を眺めてから、妹華と共に帰路についた。
☆
次の日、俺は欠伸を噛み殺しながら親友の京治と学校へと続く道を歩いていた。 いつもと変わらない通学路。 いつもと変わらない他愛もない会話。しかし一つ違うのは共に登校している奴が京治だけではないという点だ。
本日は、兎耳フードパーカーを着ている桜花とニコニコ笑顔の爽やかイケメンの新がいる。二人はいつもなら車で来る。40分かけて学校に向かう俺達に見せつけるように。 最初の頃はイラッときたが今となれば、慣れた事でなんとも思わない。
「で? 車が故障したんだっけか?」
「そうなんだよねぇ〜、まさかサイボーグ集団に襲われるとは思わなかったよぉ」
「あはは、あれは大変だったね」
「前は、よく分からんテロ集団に襲われてなかったか?」
俺は、数瞬間前の事を掘り出す。
「あぁ、ラクールっていう良くわかんない変態集団ねぇ。 あれもあれで驚いたかも」
「うんうん、まさか、全員、ボンテージ姿の40代の男性だったんだからね。 しかも、手に持ってたのは鞭とか蝋燭じゃなくて、アレだもんね」
桜花と新は軽い笑い話のように語る。 俺もその時聞いていたが、想像するだけで鳥肌が立つ。ボンテージ姿の男とか誰が見たいって話だよ。本当に、その場にいなくてよかったと心の底から思う。
「んでも、撃退したんだろ?」
俺は、非日常のような襲撃をうけたというのにソレを笑い話に変えた二人に尋ねた。前回のボンテージ男達も圧倒的な力で潰したとか言っていたからな。その問いに、至極当たり前のように
「あったり前じゃない!私こそが正義なんだから!」
「あのサイボーグ程度なら、ケータ君でも勝てると思うよ」
桜花は胸を張り、新は爽やかスマイルで答えた。
「まぁ、そうだろうな。 半鬼半人と超能力者にとっては。 ってか、俺はタダの人間だからな。俺に対する評価を改めろって何度も言ってんだろ、新」
俺は、呆れた声で新にジト目を向ける。こいつの俺に対する評価は何故か高い。何もかもが人間並みの身体能力と思考能力を持ち合わせているだけの人。飛び出た才能なんてものは精々、華薇先生のサンドバックになっても耐えれるくらいの打たれ強さだけだ。
「そうかな? 僕は君が普通の人間と同じとは思えないけどね。 だって、半鬼半人や超能力者、獣人等が通う学園で普通に過ごせているじゃないか」
「そうだぜ、兄太!お前に喧嘩で勝ったことないぜ? 半獣人の俺が!」
と、新の言葉に同意するように、半獣人の京治が俺の肩を叩いてきた。半獣人なだけあって力が強く、肩が痛い。本気で叩かれていたら肩が外れていた。まぁ、京治の言うとおり、喧嘩に負けたことはない。散々、少・中とDQNに校舎裏やらなんやらと色んなところで襲われてきた賜物だ。どいつもこいつも、口を揃えて、
「妹華さんを下さい!」やら、「俺達、妹華さん親衛隊の力を見せてやる!」、「お兄さんに勝てば、妹華さんからご褒美が貰えるんだ!覚悟しろ!」と、頭の悪い事ばかり。
もう、狂気じみててある意味、怖かった。 あんなヤリ○ンクソビッチの何がいいのやら。全員、アレで手懐けられたのかな? アイツのピーでピーして貰ったのか? やれやれ、アホばっかりで俺は悲しいよ!あんなクソビッチより、まだ初体験もまだな女の子の方がいいと言うのに! 例えば・・・・アレ? 俺の学園にマトモな奴いたっけ? ・・・・うん、いないわ。 全員、頭のネジ飛んでるわ。一人ぐらい、マトモな人来いよ!って俺は思ってるけど、未だにこないというね。もうね、普通の人間じゃなくてもいいからさ、もう少しマトモな獣耳っ娘や獣耳っ娘や獣耳っ娘はいないものか!! ん? 獣耳っ娘しか連呼してないって? 当然だ! 獣耳っ娘こそ、最強だろ!男なら分かってくれるはずだろう! 獣耳っ娘の良さが! ただ、長々と説明するのもなんか面倒臭いから、後のことはネットで調べてね! 検索ワードは、『獣耳っ娘の可愛さは世界一!!』だ。
では、脱線しすぎたので話を戻そう。
なんやらこんなやらと色々あって、俺達は慈愛園に辿り着いた。下駄箱で靴を替え、廊下を歩き、階段を登り、教室に辿り着く。少し汚れている扉を横にスライドして、中へ入る。
俺のクラスは、全員が人ではない存在ばかりなんだが、多分1番というか普通に考えて異質にしか思えないクラスメイトもいる訳で。
「おーい、いい加減起きろって。 朝が嫌いだからって、毎日棺桶にこもんなよなー、リィン」
トントン、と軽く黒い棺桶をノックする。すると、棺桶の小さなふたつの穴から赤い瞳が覗いていた。
「うっさいわね。 私の事は放って置いて。 アンタらと関わると、ろくな事がないんだから」
彼女の名は、リィン・V・ドラキュリア。 種族は吸血鬼だ。ただ他の吸血鬼と違い、日光によっての灰化はないが、朝に弱い。吸血鬼としての習性なのか、日光が出ているあいだは棺桶から出ようとしないクラスメイトの少女だ。
「おいおい、俺のせいとかありえないでしょ。てか、棺桶から出てこないお前に言われたくねえよ」
「う、うるさい! アホ! ボケ!
カス! え、えーと、ヘンタイ!」
棺桶からモゴモゴとした声が響いてきた。
「毎回最下位のお前に言われたかねえんだよ。誰がお前に勉強教えたと思ってんだよ、コラ」
リィンの入っている棺桶を叩きながら、言い返すと、
「それとこれは関係ないでしょう!」
「じゃあ、どういう意味を込めて俺を馬鹿扱いしたんだよ? あァ?」
わざと苛立っているように感じさせる為に、床をトントンと足で叩く。それが分かったのか、リィンは「ひぃう!?」と何とも情けない悲鳴を上げて、それと共に棺桶がガタンと揺れた。
「十秒以内に言わないと、この棺桶を廊下にシュートしまーす!!」
そう提案するタイミングで、
「う、嘘です! ケータは馬鹿じゃないです!!馬鹿なのは私でした!申し訳ありませんでございますぅ!!」
なんか語尾がおかしいリィンが全力な謝罪の言葉を叫んだ。俺はニヤリと悪魔な笑みを浮かべて、
「い・や・だヴぇばら!?」
--横から飛んできたフルスイングの小さな拳が頬を打ち抜いた。ゴシャという音を上げ、空中で数十回転した後、ドジャリと、床に倒れ伏した。痛いなんてものじゃない、死ぬかと思った。 俺は頬を擦りながらフルスイングパンチが飛んできた方向に視線を向けると、ヘソ出しルックに短パンの露出多すぎない?という感じのファッションをしたクラスメイト少女がこちらを睨んでいた。しかも、戦闘態勢で。
「何すんだよ、ヘソ出し脳筋?」
「・・・シッ!」
俺がそう毒づくと、音速の拳が頬を掠めた。あと少し動くのが遅かったらモロに顔面直撃していた。油断ならないヘソ出し脳筋、こと、紫苑 柚子。 女の子の絶対的味方。 パッと見は美少年に見えてしまうが、れっきとした女である。証拠に大きくはないがまぁまぁ膨らむ胸がちゃんとある。
「いまあたしの胸見たでしょ?」
「ハッ! 誰がヘソ出し脳筋の貧相胸なんか見るかよ、バーカ!!」
「な・・・っ!? ぶ、ぶっ殺す!!」
バカにされた紫苑が顔を真っ赤にしながら、音速の拳を放ってくる。今度はタダのパンチではない。俺は咄嗟に転んで躱すと、狙いの外れた拳の一撃が通り抜ける。途端、拳によって生じた衝撃波が机や椅子を吹き飛ばした。
「おまっ、少しは手加減しろよ!? 俺は人間だぞ!? 風を操れるお前とは違うんだよ! ヘソ出し脳筋!!」
「そんなの知るか!!」
ブオンッ!!
暴風が俺の横を通り過ぎる。あと数センチ位置がズレていたら吹き飛んでいた。
「マジで死ぬからやめろ! ヘソ出し脳筋!!」
「いい加減名前で呼べ! ケータ!!」
紫苑はそう叫んで、転がる俺の顔面に向かって拳を振り下ろした。もう少しで激突する瞬間、
「わ、分かったからやめてくれ! 柚子!!」
名前を叫んだ。すると、先程まで怒りで顔を真っ赤にしていた紫苑は、逆の意味で顔を真っ赤にさせた。そして、兄太から顔を逸らし、
「わ、分かればいんだよ。 分かれば」
そう告げて、逃げるように自分の席についた。
「何だったんだ、今の?」
俺は意味がわからないまま、とりあえず助かった事に安堵の息を吐く。そして先に席についていた京治と共に、華薇先生がやって来るまで、談笑して過ごした。
次回はゲーム転生投稿したあとです!