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普段とは違う通学時間


風紀委員長と友達(?)になった翌日。いつもの様に、学校の支度をし通学しようと扉を開けると、


「おはよう、兄太君。唐突で済まない。私は君を隅々まで余すことなく知り尽くす為に、今日から毎朝一緒に登校しようと思って迎えに来たんだ」


我が家を知らないはずの魔宙先輩が待ち構えていた。困惑する俺に彼女は大人びた笑みを浮かべ、


「おや、あまりにも私が美しくて見惚れてしまったか?ん?いいんだぞ、私が君を隅々まで知り尽くすように、君も私を隅々まで舐め回すように余すことなく知り尽くしたまえ」


的外れなことを言ってきた。確かに魔宙先輩は綺麗な女性という分類に枠組みされる訳だが、こう見えて俺は毎日の様に美少女レベルの奴らと関わっており、慣れている。だから、今更見惚れて喋れなくなるなんてことは無い。


「え…っと…。なんで俺の家知って…」


「ん?そんな事か。ちょいと君の友達を魅了して教えて貰ったんだよ」


何とか言葉を紡ぐ。そんな俺の動揺のあまりおぼつかない質問に、魔宙先輩はなんてことないようにごく当たり前に答えた。


「あーなるほど。魅了で・・・は?」


「いやぁ、大変だったんだよ。京治君だったかな?彼ったら、『アイツが美少女と通学だなんて許さねえ!お断りだ!』って抵抗するんだもん」


俺は京治のエピソードを聞いて改めて超ド級の馬鹿だと言うことを確信する。というか魅了で無理矢理吐かせるとか、めちゃくちゃチートだと思うんですけど。え?くそ怖。


「あー、大丈夫大丈夫。心配しなくても君に魅了をかけたりしないさ。まぁ、あの時、私の告白をハッキリと断ってたら分かんなかったけどね」


魔宙先輩の発言に、まるで自分の首元に鋭いナイフを添えられているかのような寒気に襲われた気がした。やはり、慈愛園の生徒だ。平気で常人がしなさそうな事をなんて事ないようにやってのける。正直、彼女と二人きりで通学はしんどい。


「さぁ、遅刻は風紀委員長として許可できないわ。早く行きましょ、兄太君♪」


「へ?あ?ちょっ・・・!?」


グイッと腕をいきなり掴まれ、俺は魔宙先輩にされるがまま通学路を歩き始める。この現場を事情の知らない人が見たら最悪な展開が絶対に起こる。しかし、悲しいかな。こういう知り合いに会いたくない時に限って、招かれざる存在は、やって来るものなのだ。


「あら?珍しい組み合わせね。今度は風紀委員長様に手を出したのね。気持ち悪いわ、ケータ」


グサッと心の臓に的確にナイフを刺す様な殺し屋のごとき毒舌で俺を攻撃してきたのは我がクラスメイトのリィンだ。


「・・・最悪だ」


「おや?君は確か・・・問題児のヴァンパイアガールじゃないか」


「・・・うっ!? 」


先程とは打って変わり、魔宙先輩の発言に顔を引き攣らせるリィン。どうやらと言うか当たり前のようにあの馬鹿も問題児として覚えられているらしい。まぁ、無理もない。


「というか、珍しいな。棺桶からお前が出てんの」


普段であれば棺桶に入ったまま学校に通学しているリィンなのだが、何故か今日は棺桶を利用していなかった。


「あぁ…その事ね…。それが…棺桶壊れたのよ…」


一瞬にして負のオーラを立ち昇らせたリィンが、珍しくめちゃくちゃ落ち込んだ声音で答えた。どうやらしてはいけない質問をしてしまった様だ。


「って事は、今は魔法かなんかで陽から身を守ってる感じか?」


「ええ、そうよ。だから、早く学校につかなきゃ行けないのに…あんたが他の女とイチャイチャしてるせいで無駄に疲れちゃったじゃない!」


「はァ!? なんで俺のせいなんだよ!お前は俺の彼女か!?」


「…は?調子に乗らないでくれる?ケータ」


俺の発言に対して酷く冷めきった一言と共に、魔法で肉体強化されたままのビンタが炸裂した。めちゃくちゃ痛くて、視界がチカチカしました。


「おっと、風紀委員長である私の前で暴力沙汰とは…。ただ、まぁ、今回は兄太君が百パー悪いからお咎め無しにしよう」


面白そうに俺とリィンの言い合いを眺めていた魔宙先輩がそう告げる。


「・・・え?」


「あ、ありがとうございます」


疑問符を浮かべる俺と、お礼を言うリィン。


「さて、ヴァンパイアガールは先に行きたまえ。彼の事は私が罰しておくさ」



「あ、はい」


魔宙先輩の言葉に頷き、リィンはその場を後にした。そして、かく言う俺はというと、


「君は放課後に風紀委員室に来て、反省文5枚書くこと。それが出来たら、帰ることを許可するよ」


何故か罰を言い渡されたのだった。

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