しーにゃん先輩とデート ②
慈愛ショッピングモールの三階。俺は、しーにゃん先輩とゲーセンにいた。因みに絶賛遊んでいるゲームの名は【その弾丸で未来を掴め!】がキャッチフレーズの大人気ガンシューティング【LAST BULLET】だ。
「先輩!こっち敵多すぎてキリないので助けてえぇぇぇぇ!?」
こういう系のゲームが大の苦手である俺は、自身のアバターを遮蔽物に隠すことも無く、デタラメに有限の弾を乱射する。要するにただの的と化していた。そんな俺とは違い、しーにゃん先輩はしっかりと手に持った銃型のコントローラーを操作して、ゲーム画面に映る自身のアバターを遮蔽物の裏に隠したり、一瞬だけ身を出して敵アバターを撃ち抜いたりと手馴れた動きを披露する。
「馬鹿野郎!なんで苦手なくせにこれやろうなんて言ったんだ!お前はほんと世話のかかる後輩だな!!」
そう文句は言うものの、しーにゃん先輩は自身の敵をさっさと片付けて、俺を狙う敵を次々と撃ち倒していく。その姿はあまりにも頼もしい。俺は見惚れていた。しーにゃん先輩のカッコ良さに。気づけば、ゲーム画面ではなく、しーにゃん先輩に視線は釘付けで、銃型のコントローラーが被弾時の振動を手のひらへと伝わらせてくるが気にも止めない。そんなこと知らん!と言わんばかりに俺は、しーにゃん先輩から目を離さない。幸いと言っていいのか分からないが、しーにゃん先輩はゲームに集中しており、俺の視線にはまだ気づいていない。だが、銃型のコントローラーから【自分のアバターが死んだ】という事を伝える先程よりも大きな振動が手のひらに与えられると、
「バッ!? ケータ、何し……!?」
てんだ…と言おうとしていただろう唇の動きが止まり、しーにゃん先輩の目と俺の目が合う。もう少し詳しくいえば、驚き固まるしーにゃん先輩の目とキラキラとした俺の目が合った。やがて、【GAME OVER】という音声がゲーム画面から響き渡り、しーにゃん先輩の肩がビクッと反応した。そして、プルプルと全身を震わせて、
「…まえ。途中から静かだと思ったら…ずっとゲーム中の私の姿を見てたのか?」
めちゃくちゃ怒りの籠った声で尋ねてくる。
「…えっと…その…はぐぅ!?」
俺は素直に返事したタイミングでと言うより、完璧に返事するちょい前にフライングの蹴りが股間にめり込んだ。ズルズルとあまりの痛みに身体を支えれなくなった俺は無様に床に倒れ込む。そんな俺に、しーにゃん先輩はご立腹な様子で、
「人がせっかく助けてやってたのに、ゲームに集中しないなんてどうかしてんぞ、バカケータ」
顔を床に、下半身というか尻を天に突き出したような体勢になっている俺の顔の前でしゃがみこんで告げる。その際に猫ちゃんが沢山描かれた下着が『こんにちは】していたが黙っておくのが最適だと考える。ここで火に油を注ぐのは悪手だ。
「…す、すいませんでした」
強烈な股間の痛みに襲われながら、俺は謝罪する。その誠意ある謝罪に満足でもしたのか、しーにゃん先輩はため息をついて、踵を返す。そして歩き始める。その背を眺めていると、
「ケータ、何してんだ。早く立て。メシ行くぞ」
こちらを振り返り、しーにゃん先輩が先程のご立腹な顔ではなく、いつも通りの可愛らしい笑顔を浮かべた。俺は、しーにゃん先輩の言葉に返事をしたが、
「あ、あの…少々…俺のアレがアレでして…歩くの手伝ってくれません…か?」
股間の痛みには勝てなかった。しーにゃん先輩は一瞬、何を言っているのか理解してなさそうな顔をしていたが、俺が股間を押えて辛そうな顔をしている姿を見て、どういうことか理解したらしく、
「勢いで蹴っちまって悪ぃな」
俺の震える手を握り歩き始めた。その際に思ったのは、この姿は恋人同士と言うより、孫とおじいちゃんの方が当てはまってる気がした。
…悲しい。




