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3:『恋する乙女』で『ストーカー』 ⑴

投稿終了!! 意外と長かった。


それでは第三話をどうぞ!

昼食が終わり、俺達は雫と別れて自身の教室へと向かっていた。 開かれた窓からは心地よい風が吹き、廊下の隅で談笑をしている男達や先生に授業で分からなかった所を質問している女子。 いつもと変わらない校内の光景。そう、女子トイレの入口付近でコチラにカメラを向けてシャッター音を響かせまくっている眼鏡をかけた知的系ガールもいつもと変わらない。 だからといって、それをスルーする事はしないが、彼女の場合は追いかけようとすれば風のような速さで去っていく為、さり気なくバレないようにカメラを取り上げるか、彼女よりも足の速い我が親友、京治の力を頼るしかない。 てことで行動に移すことにしよう。 俺は京治に腕を回して、耳元でとある約束を囁いた。


「京治、女子トイレにいるカメラ女子を捕まえたら、妹の寝顔写真と他の秘蔵写真を君にプレゼントしよう」


「・・・ゴクリ」


京治は唾を飲み込み、ゲスな笑顔を浮かべ、


「本当だな? 嘘だったらお前が欲しがってる姉ちゃんの下着姿の写真と風呂上がり写真はあげないからな」


「フフフ、お前もなかなか悪よのぅ」


「いえいえ、お代官様程ではありませんよ」


俺と京治はゲス顔で交渉成立の握手を交わして、俺は指を前に向け、京治はクラウチングスタートの構えをとり、そして声高らかに俺は叫んだ。


「京治、Lady go!! 」


「任せろ!」


瞬間、疾風と一体化した京治は女子トイレの前に1秒もかからずに到達していた。 勿論、彼の右手には先程のカメラ知的系ガールがぶら下がっていた。彼女は顔をずーっと俯かせているため表情が分からない。 俺は捕まって落ち込んでいるのだろうと思い近づくと、いきなり腕をガシッと鷲掴みにされた。その時、俺の脳に危険信号が鳴り響いた。 案の定それは当たりで、知的系ガールは俺の腕に頬擦りしていた。スベスベの頬の感触と共に温かい唾液プラス吐息がダイレクトに伝わり鳥肌が立った。あまりにも不快で気持ち悪い感覚に俺は顔を最大限に歪めて顔を逸らした。因みにそんな彼女を掴んでいる京治も気持ち悪すぎて首根っこから手を離して自身の口を両手で押さえていた。 俺は助けを求めるように後ろにいる桜花と新、レヴィの方へ顔を向けると、そのタイミングで桜花達は一斉に駆け出した。 勿論、逆方向へと。


(あいつら逃げやがった!!)


親友だと思い込んでいたクラスメイト3人に見捨てられた俺は胸中で叫んだ。 仕方なく知的系ガールの方に再び顔を戻すと、至近距離に綺麗な顔があった。切れ長の眉毛と紅玉のような瞳、柔らかそうな唇。 気に食わないがかなり可愛い部類に入る。 だがそれはコイツの本性を知らない奴から見た時の感想だ。俺から見ればただのストーカー。


「せ・ん・ぱ・い♡ 私と今からホテル行きましょう!」


「嫌に決まってんだろ! というかあと少しで五時間目が始まるから離せ!」


「嫌です! 先輩がホテルに行くというまで離しません! トイレだろうが家だろうが、お墓の中であろうと絶対に離しません!」



「怖いわ! ってか、愛が重い!!」


気にせずに抱きついてくる知的系ガールこと結城ゆうき琴乃葉ことのはは俺の後輩であり、俺のストーカー。 コイツがストーカー化したのは文芸部に入部して二日目の放課後だ。


その日は慈愛院学園で在校生達による部活紹介の日だった。 サッカー部や野球部、バスケ部と運動部の紹介が続き、その後を吹奏楽部や合唱部、ボランティア部が紹介していく。 といっても文芸部や美術部は舞台の上に披露するようなものはなく、代わりに言葉で伝える。 まぁ、そんなもので伝わるのは地味という事だけだろう。俺も最初の頃はそう思っていた。 が、文化部というのは入ってみると想像以上に面白い。特に雫に紹介されて入った『文芸部』は、優しい美人の先輩や文学青年の鏡である男の先輩や、漢気のある先輩、気難しそうな顔をしている女教師がいて、みんながみんなそれぞれ違った個性があり、そんな人達と連む事は今までの人生の中で一番充実するものだと思う。因みにこの文芸部はただ本を読むだけの部活ではない。 慈愛院学園には毎年八月下旬に行われる文化祭とは別の行事、『部活祭』というものがある。

『部活祭』とは、文化部を主にしたイベントで、美術部なら小規模な美術展を開き、吹奏楽部と合唱部は体育館ホールを使ったミュージック展を開いている。 それは文芸部も同じで、俺達が披露するのは毎年人気の『書籍喫茶』だ。

この喫茶は文芸部のメンバーがそれぞれ読書好きの客に依頼された衣装着て接客するというものだ。例えば漫画のキャラや実在した英雄。 書籍に出てくる人間や亜人ならなんでもいい。 無論、エッチな衣装やエッチなサービスはない。祭りだからといっても学校内で行われる行事だ。お金も本物ではなく、学校側が作った〈擬似ポイント〉の入った端末を使うことになっており、帰る時に回収するシステムになっている。 因みに持ち帰っても『部活祭』にしか使えないため、部活祭が終われば自動的にそのポイントは抹消される。 また、端末をどこかのネットショップやお店に売ることは出来ない。 というのも出品や売り出しに出した瞬間に、学校へと報告され、警察に即座に通報されるシステムとなっているからだ。 とまぁ、文芸部の説明はこれぐらいにして話を戻そう。


俺達、文芸部は新入生確保に物の見事に失敗した。というのも文芸部はその時期には大きな活動というものがない。ただ集まり駄弁るだけ。そんな部活に入ってくれるほど新入生だって暇じゃない。何故なら、新入生とあらば青春だ。青春を感じるには運動部に入り汗をかき仲間と切磋琢磨して絆を深めたり、恋人を作ってあんなことやこんなことをするしかない。 その為にも部活選びは重要だ。 こんな地味な部活に入る新入生なんているわけが無い。


「はぁ、今年は入部者なしかぁ」


文芸部室の机の上で俺達の部長で三年生--文岡ふみおか史郎しろうはため息をついた。 史郎部長は少しだけ青い髪に翡翠の瞳をした青年だ。本の話になれば鼻息荒く話しかけてくる。そしてもう一人、隣で落ち込む女性がいる。


「はぁ、文芸部も終わりね」


部長よりも落ち込み度が凄い女性、黒岬くろみさき桃芽とうげは、文芸部副部長で、文芸部員のお姉さん的存在だ。桃芽先輩はさらさらとした枝毛ひとつ無い黒髪を机の上に乱れさせていた。


「まぁまぁ、新入生が来てなくても部員数は結構いるじゃないですか」


「そうなんだけど・・・兄太君達に後輩を作れなかったことが申し訳なくて」


桃芽先輩は机の上から顔を上げこちらを見やり、弱々しい笑顔を浮かべた。それの笑顔は優しくて綺麗な桃芽先輩には似合っていなかった。 だからかもしれない、部員を得るために一日中校内を駆け回り勧誘をしようと考えたのは。


「俺が新入生勧誘してきます」


「いや、でも・・・多分、もうみんな決まってると思うよ?」


「そうかもしれません。 でも、桃芽先輩達には笑っていて欲しいですから。 そんな弱々しい笑顔なんてらしくないですよ」


俺は桃芽先輩と史郎部長にそう告げて、新と京治と共に新入生確保に身を乗り出した。


数時間後、


「はぁ、はぁ...全然ダメだった」


結論を言うと、結局見つけることは出来なかった。職員室でまだ部活申請されていない生徒のピックアップ表を貰い、校内を一日中駆け回ったがほぼ全員に断られた。 最後にもう一人だけいたのだが今日はお休みらしい。


「仕方ない、今日は帰るか」


「うん、残念だけど」


「なぁ、帰りにメシ行こうぜ」


俺と新は京治の提案にのり、慈愛院学園付近にあるファーストフード店〈MOX〉による事にした。因みに〈MOX〉とは、『慈愛市No.1のバーガー店』とテレビCMで紹介されるほどの人気店だ。


「ふぅ、そうえばここら辺だよな?」


「ん? 何が?」


「何って、ピックアップ表に載ってる新入生の家だよ」


カツバーガーが包まれている紙を開きながら、京治は向かいに座る俺と新に告げた。因みに俺が注文したのは『ベジタブルミートバーガーセット』だ。


「で? その新入生がどうしたよ?」


「どうしたって、そんなの決まってんだろ? 今から訪ねに行くんだよ」


「うーん、でももう8時だぞ? 相手の親に失礼だろ」


俺はグレープジュースを啜りながら京治に答えた。


「でもよぉ、明日来るのかもわかんねえじゃん? 先生に聞いた限りだとその新入生、女性恐怖症らしいぞ」


「女性恐怖症? って事は、その新入生は男か?」


「ううん、違うよ、ケータ君」


俺の隣でポテトを食べていた新が、口いっぱいにバーガーを含んでいる京治の代わりに答えた。


「女の子かぁ、それなら尚更いまから行くのは失礼だろ。 行くなら明日の朝とかで良くないか? どうせ通学路だし」


「うん、それがいいかもね。 京治君もそれでいい?」


「おぉ、それでいいぞ」


こうして明日の方針が決まり、俺達は解散する事となった。その帰り道、俺は何となく本屋に寄っていた。 なぜよったのかと言われてもよくわからないが何となくここに来ていた。別に本が好きでないという訳じゃない。むしろ本は大好きだ。特に『琴乃葉ことのはゆう』が書く小説が一番好きだ。琴乃葉結は文だけでなく絵も自分で書いているという噂だ。 まぁ、本当なのかは編集者か本人に聞かなければ分からないが。


「おっ、琴乃葉先生の新刊出てる」


俺は新刊コーナーに置かれている『銀髪の少女が鎖で縛られている背景に紺髪の青年と黒髪の青年が剣を交える』イラストが描かれたライトノベルを見つけ手に取った。


「へぇ、今回は戦記物じゃなくてバトルファンタジーかぁ」


ペラペラとページをめくり眺めていると、


「あ、あの!」


「は、はい!? 立ち読みしてすいません!? い、今すぐこの本買いに行きますのでご勘弁を!!・・・って誰?」


不意にかけられた声に俺は精一杯の謝罪と共に振り返ったが、そこにいるのは店員ではなく私服姿の中学生ぐらいの女の子だった。


「え、えーと、君は?」


「・・・ゆ、結城琴乃葉です!」


結城琴乃葉と名乗った中学生ぐらいの女の子は、こちらに視線を合わすことが恥ずかしいのか合う度に逸らしては顔を赤くしている。最終的にはフードをかぶり顔を隠す始末。 俺は何となく昔の妹と目の前の女の子の姿が被り、思わず笑いが漏れた。


「なっ、なんで笑うんです...か!」


かき消えそうな声で女の子は叫んだ。その声は小さく弱々しく聞こえるが、この時の声はあまり異性の気持ちに気づかない俺でも理解できる。 この女の子の声には強い意志がある。それさえもが昔の妹に被ってニヤケが止まらない。が、先程から感じる店内の人達の視線が何となくヤバイと気づき、ニヤけた頬を無理矢理押し上げた。ついつい押し上げてしまい変顔となってしまったが、先ほどのニヤケ顔よりはマシだろう。俺は変顔のまま暫し心を落ち着かせた。 どんどんと頭が冴えていき、頬の筋肉も戻った。 そして目の前で不思議そうにこちらを見つめる結城琴乃葉に、


「結城ちゃん、僕に何か用?」


「っん!」


結城琴乃葉は俺の質問に首を縦に何度も振って答え、俺の手を掴み、何も言わずに歩き始めた。俺はされるがままに本屋を出て、慈愛院学園付近のMOXを通り過ぎ、数時間後--見知らぬアパートの一室に俺と結城琴乃葉は立っていた。


(んん? 俺・・・なんで初対面の女の子に家招かれてんの? しかもここって・・・)


俺は部活に入っていない生徒を記したピックアップ表を思い出し、その中に一人だけ学校を休んでいた生徒がいた。 そしてその生徒が住んでいる場所がこのアパートなのだ。 学生鞄からピックアップ表を取り出し、チェックされていない生徒の名前を確認すると、そこにははっきりと『結城琴乃葉』と記されていた。


(名前が覚えづらくて忘れてたけど、結城琴乃葉ってこの女の子だよな? どう見ても中学生にしか見えないし・・・まぁ、気のせいだろ。ってそんなことよりもこの状況の脱し方を考えなきゃ!? ・・・あれ?)


一度考えることをやめ、現状の打破に思考を切り替えた瞬間、最初に視認したのは結城琴乃葉がお茶を飲んでいる姿だ。彼女の背後には女の子が好きそうなぬいぐるみが沢山置かれたベッドや可愛らしい水玉模様のカーテンや、沢山の紙が無造作に散らばり、黒いインク瓶と沢山のペンが置かれた勉強机が見える。しかし一番俺が驚いたのは、その勉強机の上の壁にかかっている『第七十二回 ベルトラ文庫新人賞大賞』と記された垂れ幕と、その勉強机の台に置かれた垂れ幕と同じ事が記されているトロフィーだ。『第七十二回 ベルトラ文庫新人大賞』といえば琴乃葉結先生が受賞なされた時だ。だが中学生ぐらいの女の子が書いたというは信じられない。 恐らく、お姉さんかお兄さんの物だろう。 俺は初対面の女の子にいきなりそんなことを聞く事は出来ない。 勘違いだった場合、とても恥ずかしいからだ。 それに今は俺をここに連れてきた理由を聞くのが先決だ。


「えーと、結城ちゃんはなんで俺をここに連れてきたの?」


「っん!」


結城琴乃葉は棚からから少しボロボロのスケッチブックを取り出した。それはどこにでも売っているスケッチブックだ。 しかし、その下に小さく『久慈宮兄太』と書かれていた。 それを見た俺は一瞬頭に血が上り、声を荒らげて叫んでいた。


「それを何処から持ってきた!! それはもう捨てたはずだ!!」


「--たないで」


結城琴乃葉は頭を守るように両手で覆い、小さな声で呟いた。何度も何度も彼女は何かを呟いた。 その言葉は段々と大きくなり聞き取ることが出来た。


「もう悪いことしないから...ぶたないで

いい子にするから...許して...お母さん。 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


彼女はここにはいない母親に謝罪の言葉を投げかけ続けている。俺はその光景に怒りを忘れて、ビクビクと怯える彼女の頭に手を伸ばすと、さっき以上にビクンっと身体を震わせた。


「ごめんね、驚かせて」


「・・・え? あなたは・・・ぶたないの?」


「当たり前だろ、それにさっきは俺が悪かったしな」


俺は結城琴乃葉の頭を優しく撫でて笑いかけ、彼女が落ち着くまで待つことにした。


最近、『ハロー張りネズミ』と『僕たちがやりました』にハマってる。


瑛太さんと窪田さんはイケメンすぎて(*・▽・)<やばす♪*゜


次回投稿日は未定です!

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