12:魔王と妹は仲良くなれない
今回は短いです!
「それで、お姉さんが倒れた理由とか分かったの? 桔梗ちゃん」
私の蹴りで意識を奪ったド変態クソお兄を床に放置したまま、顔を赤くした純恋お姉さんの様子を見ている桔梗ちゃんに声をかける。
「うーん。 多分、シスコンお兄さんと密着してたから恥ずかしくて倒れちゃったって所かな」
「え? ウチのバカお兄に密着・・・恥ずかし? いやいや、そんなわけないじゃん!」
桔梗ちゃんの言葉に私は声を張り上げる。おかしい。なんでお兄と密着して恥ずかしいのかが分からない。寧ろ、鳥肌が立つでしょ!ゾワッて寒気するでしょうよ!
「お兄のどこを見て好きになったのか・・・分からない」
「まぁ、私は少しだけ分かるかなぁ。 顔は整ってるし、妹華ちゃんから聞いたお兄さんは変態でシスコンの気持ち悪い人って聞いてたけど、変態と言うより初心な感じだし、シスコンって割には好き好きオーラも感じない。それに気持ち悪くないかな」
あはは、と頬をかきながら桔梗ちゃんまでおかしなことを言い始めた。
「か、顔は整ってるかもしんないけど! お、お兄の事は誰も好きになっちゃ駄目なの!本当の本当にダメ!」
妹華は、何言ってるんだ私は!、と自分の口から出た言葉に驚く。別にお兄が好きな訳では無い。アレだ。 なんか、お兄に彼女ができるのはムカつくのだ。胸がなんかムカムカする。だから、お兄は誰とも付き合わなくていいし、結婚しなくていいんだ。寧ろ、京治と付き合え!!
「あ、あー、うん。 別に私は狙ってないからそんな剣幕にならなくても・・・」
桔梗ちゃんは若干引き気味で笑う。そして、
「そ、それじゃあ。 お姉ちゃん抱えて家帰るから。 シスコンお兄さんに、『お姉ちゃん運んでくれてありがとうございます』って伝えておいて」
それじゃ、と桔梗ちゃんは純恋さんを担いで、家に帰っていった。 私はそれを見届けてリビングに戻ると、
「くくく、今が絶好のチャンス。これから先、未来の伴侶が他の雌共に目がいかないように、我の事が好きで好きで堪らなくなる魅了の魔法【永縛魅了】を使うとき!」
「はぁ。 もうお手上げ。私は何も聞いてないし見てない」
ド変態クソお兄のお腹辺りに馬乗りになって、妖しげな笑みを浮かべる厨二病クソブス女と、完全に監視の役目をほっぽりだして夕飯のカレーを食べるリィンさんがいた。
「さてさて、まずは未来の伴侶が着ている服を脱がしてっと」
厨二病クソブス女が人差し指を弧を描くように回すと、お兄の着ていた服が下着を残して消失した。
「むぅ。 これも邪魔だな」
お兄のミニお兄を守る最後の砦である下着をあろう事か脱がせようとする厨二病クソブス女。 私は咄嗟にその行動を止めるために襲いかかった。
『高速回し蹴り』
私が使用する得意技の1つだ。回転を早めることで威力を溜め、脳天へと振り下ろす。しかし、
「・・・っ!?」
不意打ちと呼べる一撃を容易く左手で受け止めた。
「くくく、ははははは!! 甘い!甘いぞ!下等な人間如きに我が肉体を傷つけることはふかのぶぁ!?」
なんか勝ち誇ったのでさらにもう一撃、空いている左足で厨二病クソブス女の頬にお見舞する。今度は綺麗に直撃した。二撃目が来ると思わなかったのか、お兄の上から転げ落ちる。とりあえずこれでお兄のミニお兄は救えた。
「ご馳走様でした」
もくもくとカレーを食べていたリィンさんが食事を終えたらしく席を立つ音がした。それと同時にリビング内の気温が高まった。それも夏の気温とはレベルの違う暑さ。それがどこから発せられているのか、すぐに分かった。
厨二病クソブス女の周囲を取り囲むように黒焔が集束してた。瞳には殺意ではなく単なる怒り。それも涙目。普通の喧嘩であれば涙目で怒り襲いかかってくること自体はおかしくない。ただ、それが同族同士の喧嘩だったらの場合だ。
「未来の伴侶の妹だから手は出さないと決めておったが我慢の限界だ!お主には一度、どちらが上か教えてやらねばならぬようだな!」
「はァ?お兄の妹って時点で私の方が上だっつぅの!厨二病クソブス女! それにいいのかなぁ? 私に手を出したらアンタに対するお兄からの好感度はマイナスになっちゃうけど」
「むぅ。未来の伴侶からの好感度が下がるのは避けたい所だが、別に貴様を倒して心も身体も我の物にすれば問題はあるまい」
「うっわぁ! あんたってほんと頭悪ーい!話し合いとか思いつかないわけ? あー、やだやだ。バカはホントに困るわー」
私は厨二病クソブス女を煽る。こういうタイプは何も考えずに突撃してくるはず。なら、こちらは相手に何も考えずに攻撃させるように誘導すればいい。そうすれば隙だらけになるはずだ。そこをつけば、私の勝ちだ。
「それじゃあ、始めるぞ!!」
厨二病クソブス女は床を蹴り、真っ直ぐに突撃してきた。私は狙った通りの攻撃に薄く笑い、当たる寸前に横に躱し、逆に右ストレートを御見舞する。が、
「--っ!?」
完璧に当たるハズの攻撃を厨二病クソブス女は最初からわかっていた様に受け止めた。そして、
「くくく。魔王の娘である我が未来の伴侶以外の言葉に惑わされるとでも思ったか?」
厨二病クソブス女のアッパーが鳩尾に叩き込まれ--、
「ハーイ、ストッープ」
呆れたような声が聞こえた。
「レヴィ、アンタやり過ぎ。そのまま続けてたら妹華ちゃん病院送りよ?」
「ええい!? 邪魔をするでないわ! 吸血鬼!!」
「うるさい、っての」
リィンさんは騒ぐ厨二病クソブス女の頭を掴み、吸血で貧血にさせ黙らす。彼女の様に現在の吸血鬼は一々噛まなくても血を吸えるような体質に進化した。
「ごめんね、妹華ちゃん」
「いえ、こちらこそ助かりました。 ありがとうございます、リィンさん」
「ううん、大したことないわ。それじゃあ、私はこの馬鹿を2階に運ぶから、ケータの方をお願いしていい?」
ぐったり気絶中の厨二病クソブス女を抱き抱え、リィンさんがお兄を指差す。
「ここにいても邪魔ですもんね」
「まぁ、そんな所かな」
私は溜息をつき、お兄の手を掴んで引きずる。おんぶとか抱っこは嫌だから。
次回は普段と同じぐらいの文字数になります




