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宙の女

 個人の宇宙旅行が当たり前となり個人用のシャトルが宇宙空間を行き来する今日、その男は比較的最近発見された航路を体験すべく自分のシャトルに乗り込んだ。
 男は冒険家ではない。宇宙旅行を楽しむ一個人ではあるが、既定の航路からやや外れてシャトルを進めていた。旅行中に少し外れる航路をとることは流行っていたし、男にとって初めてではなかった。

 時々星が瞬く窓の外を眺めていると、あることに気が付いた。
「なんだろう。あっちの方で何か光っている気がするな。ちょっと近づいてみるか」
運転席のパネルを操作し、シャトルは更に航路を離れていく。
「新発見なんて期待しちゃいないが、もしかしてという事もあるからな」
男は、窓から光っている方向をのぞきながら独り言ちた。

 シャトルが近づくにつれ、光が何かの形に見えてきた。
「あれは…女か?」
光は女性の形をしていた。こちらに微笑んでいるようにも見えた。
「孤独なパイロットが宇宙の星々をつないで女に見立てて話しかけたって、何かの小説で読んだな。だが、俺は孤独なパイロットではないし、気狂いでもない。いつでも航路に戻れるんだ。もう少し近づいてみよう」

 シャトルは更に近づいていく。女の輪郭がはっきりとしてきた。
「どこかで見たような顔だな。昔、付き合っていた彼女に似ている気がする…」
女はこちらに手を振っている。表情さえ分かる。その時、男は叫んだ。
「違う!あれは俺の母親だ」
 何年も前に亡くなった男の母親が、それも老いた母ではなく記憶の中にだけある若い頃の(自分が幼い頃の)母親が、慈愛の表情で男を手招いているのだ。
「ああ、母さん…」
 男は窓に張り付くようにして母親を凝視した。母親も男を見つめていた。記憶から遠ざかっていた母の微笑みであった。
 シャトルは母に包まれるかのように闇に飲み込まれていった。


数時間後


『宇宙国際ターミナル 個人旅行管理室 アンドロメダ支部』

「支部長。アンドロメダ銀河横断の個人旅行計画書を提出していたシャトルがロストしました」
「何?定期航路で往復5日の距離だぞ」
「それが…航路を外れた方向へシャトルが進んでいた記録があります。例の地点です」
「困ったものだ。『安全な航路』の意味を分かっている人間が少ないな」
「せめて『何が危険なのか』を公にすることはできないのでしょうか」
「『何が危険なのか』が分からない状況で公表は難しい。心の奥底で望んでいるモノが見えるといったら、反対に多くの旅行者が訪れ危険にさらすことになる。この宇宙には我々では説明できないことが多すぎるな。ところで君は、あの空間で何が見えた?」

「・・・はぁ、腹が減っていたので大きなチーズバーガーです」


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