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(再録エッセイ)私はこうして田舎が嫌いになりました、を書いたきっかけ

 本作は実話と創作が混在しています。関係者が故人なればこそ書けた話ですが、藤田(ふじたごうらこ)の義父の話でもあります。作中の()()モナカに吐かれた「あなたが我慢すればよいのに」 という村人からの言葉は、藤田が実際に言われました。

常会は、痴呆のある会員さんや気に入らぬ会員を公然といじめ、無視し、注意すると暴力を振るう場所ではありません。また気に入らぬ人の田んぼに、薬品をまいてはいけません。

藤田は警察沙汰にもしましたが、警察はこういう場合は被害者に引っ越しをすすめるようで、まったく役には立ちませんでした。


 藤田はそれをきっかけに、当人が役員としてかかわっていた常会や区会、婦人会はすべて抜けました。藤田は「あなたさえ黙っていればこの常会がうまくいく」 発言がどうしても許せなかったのです。

 たった一人のヒステリックな老婆の言いなりであった常会。その人がいないと「あの人には困ったわねえ」 と愚痴をいいあう常会。

その老婆はすべてにおいてケチをつける天才でした。ムラの公的な出金、ムラの行事のやりよう、その人が介入するとすべてがややこしくなる。思う通りにならぬとヒステリックに同じ言葉を吐き、謝罪を求める。

 大体藤田との初対面で「大卒だそうだが威張らぬように」 って訓示を垂れる神経からしておかしいです。

「そんなことしません」 というと 「それを威張っているという。その態度が気に食わない」 と吠える。

ケンカ売っているわけではなく、本人が真面目にいっているのが驚きでした。まわりはその人がヒステリックにわめきだすと、黙りこくって興奮をおとなしく待つ。

 古株の人たちが、困った人だといいつつも、好きなようにさせてきた結果がコレです。世界一面白くない常会が誕生していたわけです。他の常会は花見や遠足などもあったと聞きますが、その例の老婆がいるところは一切ありませんでした。イヤな思いをするだけの常会など機能している方が不思議です。

 常会の仕事として公民館の掃除がありますが、その人は自分だけの好きな演歌を大音響で流します。藤田がうるさいと思って切りますよというと発狂したように怒り、胸をつきとばされました。

さすがに頭に来て。藤田が理詰めで問い詰めると答えられず「私の夫は元警察官だ」 と怒り出す。藤田が「それがどうかしましたか? 私の親戚にも警察関係者がいますけど、それとは関係ないでしょう」 というと背中を向けて黙る。書くともっと長くなりますがまあこんな調子でいろいろありました。

古い常会メンバーは、温和で事なかれ主義の人ばかり。平和を好み、乱れを嫌い、多少不満でも従順であれば、楽しく「やり過ごせる」 ことを長年優先させた結果です。つまり突出した人間が意見をいうと「そういうものか」 と靡いてしまうのが慣例になってしまった。常会を束ねる全区長でさえも「あのバアさんには、はいはい、といっておけばそれでいいから」 という始末です。


 この老婆の扱いに関しては結婚当時からいろいろと問題で、一時は離婚話まで出ています。大体初対面の挨拶で「大卒の人は云々」 と説教する人の神経が理解できません。田舎は対面を重んじる人々が多い、それと日本人独特の思想になると思いますが「調和、平均値」 を好むと思っています。田舎では特にこの傾向が顕著です。予定調和というか、突出した思考や行動は嫌がられるということです。伝統を重んじるということでこれは美談にもなります。しかし「皆が我慢してきたからお前も我慢しろ」 は変でしょう。


 老婆の後日談というか、つい先日の話も書いておきます。夫が常会での配達物を届けに行くときに、郵便受けに雪がかかっていたため、車に積んでいたシャベルで除雪したうえで配達物を渡してあげたそうです。すると、次回の降雪があったときに夫に電話がかかってきて当然のように「今から玄関の雪かきをしにきて」 といってきました。

 今までのしたことを思えばそんな電話をかけられるかということです。話してくれた夫もさすがにあきれる思いだったのでしょう。藤田はその話を聞くなり言いました。

「あの人が一種の人格障害でもあるというのにまだ気づかない。常会としての体面の維持をするためにわがままに付き合うのは美徳でもなんでもないよ」

 生粋の田舎育ちの夫の返事は以下の通りでした。

「いや、あの人が常会の一部を破壊したのは事実だが、あの人ひとりにひっかきまわされたということを知られるとそれも常会のハジになる」

 すごい言い分で話にもなりません。遠く離れた居住区の人からもあの人が常会にいて大変だなあと言われるぐらいわがままで有名な人なのに、そこまでかばうか。


 現在、その老婆は一人暮らしです。昔から長男のお嫁さんが気に入らず、直接の知り合いでもない常会メンバーにさんざん悪口を言っていたので、お嫁さんは同居していない。というか、あんなのと同居できたら人間じゃない。人の悪口を好み、人を攻撃する人の老後はそんなものです。

 

 夫の言い分は田舎育ちならではの思考から来ていると思っています。日本の社会はそんな人間でも落ちこぼすことなく、陰口を聞きながらでも仲間に入れて機能させてきたのです。外国人の受け入れもその延長にあるとすれば、日本は容易に乗っ取られるでしょう。


 藤田は田舎の自然は好きですがこういった人間関係が苦手です。このたび田舎嫌いの小説を書いたこともまったく後悔していません。テレビに取り上げられたこともあり、これで正解だったと思っています。ここまで読んでいただきありがとうございました。 



ご感想、ご批評をいただけましたらうれしいです。


出版企画が一度流れています。どこかの出版社様が

ご検討いただけましたらうれしいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 分かり過ぎる。蠱毒みたいな人間関係が醸造されてて手のつけよう無い感じですよね。 田舎生まれ田舎育ちです。現在地方都市住みです。  少し前に生粋の東京育ちの女の子とお話しする事がありまして…
[一言] 田舎の年寄りは性格が悪すぎて他の地域で過ごせない人も多いですからね。 いくつか田舎住みましたが中途半端に田舎なのが一番性格悪い人が多いですね。限界集落レベルだと人がいなさすぎて集落会とかが消…
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