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私はこうして田舎が嫌いになりました。  作者: ふじたごうらこ
私はこうして田舎が嫌いになりました。
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第三十七話・婦人会・中編



 総会といっても過疎を反映して会員数自体少ない。既婚者で六十歳未満が会員資格となると限られてくる。会の進行は和やかだった。

 まず古参の会員のうち三名が紙耐から転出した。転出者の名前に矢駄があった。転入者としてモナカのみが紹介された。広木によって名前を呼ばれ立ち上がって礼をする。これだけで拍手をもらった。 

 議案は紙耐らしいものが並んでいる。

独居老人へのお弁当配りのボランティアについて

国道沿いにある花壇の花の手入れについて、どんな花を植えるか、また水やりや草むしりの当番を取り決めについて

毎年秋に開催される収穫祭での婦人会からの屋台の内容とアトラクションについて


 こんな感じの議題をこなすが、活発な意見は出ず、もっぱら広木、波瀬、何でも屋の会話ですすめていく。婦人会とは名ばかりで、この三人で回していると考えた方がいいだろう。

 広木と波瀬で大体の案を決めていたらしくこれでいきます、と決まっていく。途中で仕事帰りの美奈子さんたちも入室して部屋は満室になった。最後に空いていたイスは飯坂保健師が埋めた。彼女に対してよい感情は持てないがそれでも今後アンキチについて世話になるかもしれない。あいさつはきちんとしておく。

 モナカにも新人ながら、ボランティアで三区の独居老人へのお弁当配り、花壇の草むしりをすることになった。収穫祭は、お饅頭を作る係になった。

子供向きのビンゴゲームなどは青年会が担当するらしい。また紙耐にも伝統芸能の太鼓踊りがあり、有志が披露する。いずれもモナカにとって初体験で楽しみになってきた。


 議題は多いが毎年のことなので枠組みがあってさくさくと決まる。皆は慣れた様子で、これは私がやります、あれは私が担当しますという感じだ。最後に次の婦人会役員の選出もあるが、それも形だけで同じメンバーだった。つまり広木会長、波瀬副会長、書記と会計は小倉妙子、イコール何でも屋だ。監査役は飯坂保健師。

これら役員は紙耐に住み、紙耐で何らかの仕事を得ている人で鉄壁のメンバーらしい。  

終わったのは夜の九時前だ。全員でつくえやイスを片づけたが上蚊掻の葬式でモナカの顔を覚えた人がいて、あいさつを受けた。新しく来た移住者という位置づけで覚えてもらえたようだ。また波瀬の紹介で小学生を持つ親とのあいさつもできた。

 帰りにはお土産のクッキーが一人につき一袋ずつ配られた。広木はクッキーに余りがあったらしく、波瀬とモナカにくれた。何でも屋もモナカに「甘いものが苦手だから私のもあげる」 とくれた。

波瀬に「北本さんは会員でないのですか」 と改めて聞くと会員ではないという。するとそばにいた飯坂が北本の話をしだした。

「あの人じゃけど、紙耐で誰とも接触しない人は困るね。ミライくんのことで訪問しても、居留守を使われる。喫煙者だし副流煙も心配で注意をしてあげているのに」 

 波瀬は如才なく答える。

「婦人会も強制ではないし、北本さんは子供会に入ってくれているからそれでいいじゃないの。ちゃんと離れた場所で喫煙もされているしね。きっと大丈夫ですよ」

 モナカはその会話を聞いて、飯坂は保健師として愚痴を外部にいうのはダメだが波瀬は皆のまとめ役として適任だと感じた。


 帰りの駐車場でモナカの車は広木のそれと隣だった。広木は、モナカを見ても「お疲れ様」 と小声で言うだけでさっさと車に乗る。明らかにヨンのことで相談されることを避けている。

日を改めて相談しようにも今の態度だと話しかけにくい。広木の車を見送っていると、何でも屋がどうしたの、と聞いてきた。

「なにかあった? 話を聞くよ」

次々に周囲の車が駐車場から消えていく中、モナカは何でも屋の車の助手席に座った。

「池田ヨンさんのことです」

 何でも屋は「なるほど。広木ちゃん、逃げたね。あの人にうんざりしているからなあ」 と笑う。

 モナカは今まであったことを話した。家の周囲にからむ不快な事は池田夫婦がからむ。何とかしないと、モナカたちで三家族目の撤退になりかねない。



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