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私はこうして田舎が嫌いになりました。  作者: ふじたごうらこ
私はこうして田舎が嫌いになりました。
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第二十話・常会・後編



 モナカは喪服にアイロンをかけていたが、ダイフクが携帯電話を持ってやってきた。

「お通夜は、ぼくも手伝うことになった。車の整理をしてほしいそうだ」

「アンキチはどうするの」

「公民館で遊ばせてよいと」

「人見知りをしないから、何とかなるわね」

 ダイフクはため息をついた。

「それと新入りを嫌う人もいるが、気にしないようにと」


 モナカはすぐに誰のことかわかった。

「池田さんのことね」

「名前は出さなかったけど多分そうだろう」

 マンマエに、池田、そして何でも屋であった北部のおばあちゃんたち……彼女たちの言動で不快になったことはあるが、気にしていられない。

「モナカはぼくを信じてここまでついてきてくれた。嫌なことがあれば、教えてくれ。ぼくは君を守らないといけない」


 翌朝、モナカは早めに起床した。早朝六時の集合には驚くが、遅刻はできない。

紙耐は集落ごとに公民館があり、モナカの行く場所は第三区というらしい。そこで地区の寄り合いがあるが、不祝儀の時も公民館で食事の用意をするという。

 モナカは黒いシャツと黒いジーンズに着替え、黒いエプロンがなかったので、藍色に熊のアップリケのついたレトロなデザインにした。

 アンキチはまだ寝ている。ダイフクも起きたが手伝いは夕方からなので、野良着だ。ご飯に漬物、塩昆布でシンプルな朝食を取った。モナカが玄関でサンダルを履くと、アンキチが起きてモナカの背中にしがみついて、「いっちょにいく」 と泣く。

「ごめんね。お留守番してね」

 ダイフクがアンキチをひきはがした。

「今日はお父さんと一緒にいよう。畑に水やりに行こう」

「だめ、おとしゃんと、おかしゃんと。みんないっちょ」

 モナカはアンキチの泣き声を背に家を出る。保育園に預けるときはこんな感じなのだろうか。子離れの一歩になると思った。朝日に照らされて坂道を下りる。今日もよい天気になりそうだ。


 坂道を下り、マンマエの家や畑を通り過ぎたら松元家だ。その裏に公民館がある。軽トラが二台停められている。周辺はアスファルト舗装がしてあるが、割れ目から雑草が生えている。向こう側の裏蚊掻の家の前には、道路沿いに普通車が三台並んでいた。すべて他県ナンバーだ。

 公民館といっても、図書館やホールはない。箱のような建物で平屋だ。

 モナカは時計を確認する。午前六時、ぴったりの時間だ。人の気配がした。モナカは声を出した。

「喪井です。手伝いに来ました」





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