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救世主・・・?

「てか、そういう願いOKなら私だってそういうのにしたのにぃ~」


「そうだそうだー」


「え、あっ。いや……その……」


 あたふたするエリカ。あぁ、もう! 何をやっているんだよ、こいつは。


「寮の買い出しだろ? 荷物持ちは構わないが、お前も持てよ」


「へっ? あ、そっ、そうそう! そうなのよ! 寮の買い出しなの!」


「なんだぁ……そういうことかー」


「ふぅ……」


 何とか誤魔化せたようだ。どうして僕がエリカのフォローをしなくてはいけないのか。そうエリカの方を見ると、少しバツが悪い様子。僕と目が合うと慌てたように目を逸らした。やれやれ。さすがに睨み返しては来なかったか。


「てかそろそろ命令禁止。普通の大富豪に戻すぞ」


「えー!」


 これ以上付き合いきれるか。またさっきのような場面になっても困る。場の雰囲気が変わったところでやめさせるのが一番だ。今なら文句は出ても誰も強硬姿勢に出る奴はいないだろう。


 周りはぶつぶつと言っていたが、猛反対する奴は一人もいなかった。しかし、命令出来なくなって飽きてきたのか、一人二人と抜けて行き、少数しか残らなかった。とはいえ、丁度タイミングよくチャイムが鳴ったので、休憩時間は終了したわけだが。


「もう終わりかー。じゃあね、タダヒト! また大富豪しようね!」


 各々散り散りに自分の席へと戻っていく。最後に残ったのは、エリカだった。


 何か言いにくそうにこちらを見ている。


「何だ?」


「……じゃないから」


「は?」


「だから! そういうつもりで言ったんじゃないんだからね!」


 そう言って、走って席に戻っていった。


「わけわからんな……」


 一人残された僕はもやもやした頭のまま席に戻っていった。



 授業も終わって、帰る頃。一緒に帰ろうと誘う女子が多数いた。といっても、ほとんどの学生は寮生活なので各地に点々とある寮まで戻るだけなのだが。となると寮のコースによっては学園の門でお別れということになる人が多そうである。


 同じ寮に住むクラスメイトも割りといるので、そういった人達は当然同じコースになる。が、部活とか別の友達同士で帰るなど色々あるのでそれほど大人数での移動というわけではなかった。エリカは部活には入っていないらしい。ミュリエルは演奏部に所属しているらしいが、今日は行かずに一緒に帰るらしい。何でも、魔法を使った演奏で魔楽器という物があるらしい。どんなのかちょっと興味がある。今度、見学にでも行こうかな。ミュリエルの演奏も見てみたいし。


 などと考えていると、学園長室の前に差し掛かろうとしていた。


「……えぇ。ですが、……なのでしょうか」


 学園長室からかすかに声が聞こえてくる。よく聞き取れない。周りが騒がしいせいもあるが。僕はどうにもそういったことが気になって思わず耳を傾ける。


「……シーナが言うには。……どうでしょうか。……我らとは異なる人体構造を……」


「しかし……救世主足りえるのでしょうか」


 何の話だ? シーナさんが何を? ……まさか、僕の話か? いや、でも……異なる人体構造……たしかに僕がニーナさんに人体について聞いたことがあった。となるとやはり僕の話か。でも、何の? 裏から手を回したとは思っていたけど、そりゃ僕の素性についてニーナさんがある程度、学園の長に話さなければならないのは当たり前か。


 だったら、何だ。この違和感は。


 救世主って聞こえた気がするけど……どういうことだ? 僕が救世主……なわけないし。あれか。聖書とかそういうのに書かれているお伽話みたいなのに僕みたいなこの世界の種族と異なる体をしていた絵とか話とかあって、それと混同されているとか? なんてこった。もしそうだとしたら、大変なことだぞ。これは。でも、異なる種族で体の差はあるわけだし……やっぱ、男と女の差の部分か? たしかに、別種族はいるけど皆女性だしなぁ……。とにかく、勘違いだったと思ってくれりゃいいけど。


 来週、実技のテストとかあるらしいし。そこで僕の実力を見ればわかると思うけど。そもそも、魔法が使えないことは知っているはずだろうし。


 大丈夫だろう。きっと。


 ここ最近の穏やかな日常のせいか、楽観的になっていた。僕は。


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