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昇れない星

私星河緑ほしかわみどりは自分で言うのもなんだがおおよそ平凡とは言えない奇異な人生を齢14にして幾度もなく歩んできた

星河生命保険会社ーーー第二次世界対戦絶頂期に星河銀次郎が発足した日本最古の金融保険会社でそれから今日に至るまで保険会社の中ではトップを独走している

その年の収入総額はゆうに6兆を越えており、これからも安泰だろう

私はその星河銀次郎の直系星河直の一人娘としてこの世に生をうけることとなる

所謂、社長令嬢というわけである

だからといって、私自身が偉いわけではないのだが、当然日本有数の財閥の令嬢となればどこにいってもそれなりの礼が尽くされるわけでその態度は私を増長させるのに十分だった

そんな私も当然ながら義務教育に習い小学校―――東京都某所にある私立の某お嬢様学校―――にいくことになった。増長して天狗になりかけて―――なっていたので、そんなひねた子供が、立場をわきまえた大人ならまだしも、同じひねた子供に好かれるわけもなく、必然のようにクラスのストレスの発散場所となった

別にいじめなんてどこの小学校にもある、だがその内容が小学生のいたずらというにはあまりにも悲惨で無惨なものだった

あまりに酷い内容だったため全てを語るわけにはいかないが(語るにはあまりにもむごい)一部抜粋するなら―――あれは、確か2年生になったばかりのことだろうか、あの時クラスを掌握していた女の子桜楓さくらかえでを中心に私への風当たりが最高潮に達していた頃だ。ある日私が自分の机の中から取り出してみるとほぼ全ての教科書がズタボロになっており、使い物にならなくなっていた。だがプライドが無駄に高かった当時の私は親や先生に相談することはなかった(相談しても先生はともかく、あの非情な親はなにもしてくれないだろう)。だからといって、私は泣き寝入りすることはなく、やはり鷹の孫は鷹だったのか(自分で言うな)戦時中一代で富を築きあげた豪傑の血は他の血を喰らった

しかし、だからと言っていじめは無くなるわけではなかった

酷いときには、火薬なども使われた。今まで火傷など大きな傷が出来なかったことが奇跡みたいだ。やられるたびにやり返す。そんな不器用な私のやり方は周りの不満を買ったのだろう。いじめは続いた

だがいじめは4年生のころぴたりと止まる

理由は簡単だった。彼女らの親が止めたのだ

それも当然で、私の親はそのお嬢様学校の中でも有数―――いや、一番の権力を持っていた。その娘を自分の娘がいじめているとの噂を聞き、すぐに止めるよう言ったのだった。世界でも名を轟かせる星河財閥を敵に回す愚か者はいなかった

私の奇異な人生はここからさらに加速されていくこととなる

私の両親、特に親父のほうはまれに見る程の放任主義者で自分からは何もしてくれなかった。代わりに頼めば何でもしてくれた。どんな高いものでも望めば手に入ったし、事件なども揉み消してくれた

私が今日まで、ブタ箱に一度も入ることが無かったのはひとえにこの親父の存在が大きいだろう

5年生の時、初めて誘拐事件に遭った。そこでも、やはりプライドが高い私は人に涙を見せないというわけのわからない自分ルールが仇となり、気持ち悪いがきだと犯人たちに罵られ何度も暴行を受けた。涙だけは決して見せず、終始犯人を睨めつけていた

事件の解決は平凡だった。警察が私の監禁場所を特定し犯人に気づかれないように救出したのだ。

こんなときでさえ、私の親父は顔を見せなかった


中学はエスカレーター式なので大して変わらぬ平々凡々としたものだった。勉学のほうは、悪くはなかったが才能が無かったのか一定以上の成績は出なかった

小学生の頃と違いいじめは無かった。かわりに私に対する態度は無視という形に進化―――退化した


この頃から私は親父の初めての指示を受け一人暮らしを始めていた。誘拐経験があるというのに、無謀なことをとは思ったが、たとえ親とでさえ人と馴れ合うのが苦手な私にとってこれは好都合だった

お陰で家事のある程度の技術が手にはいった

お嬢様学校によくあるものの物価がわからない、一円て何?(さすがにそこまで酷くない)などはなく一般常識をマスターしていた


ここまでの人生はとても奇異なものだった

私を中心にこれまでいろんなことが起こった

いじめ、誘拐事件、殺人事件、交通事故、病気、多種多様なことが起きた

だけど、私を中心に起きてるのに、いつだって私は主役ではなかった


これはそんな私の物語

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