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方向音痴のレンレシリーズ

友達が迷子になった結果、魔王と密に連絡をとりあうようになってしまった

作者: 仲仁へび
掲載日:2026/09/24



 私の友達のご令嬢は方向音痴だ。

 放っておくとすぐに迷子になる。

 自分の家の中ですら迷子になるのだから、筋金入り。


 そんな友人は、今も迷子になっているようだ。

 私は魔道具の向こうから聞こえてくる友人、レンレの声を聞いてあきれていた。


「綺麗なちょうちょさんを追いかけていたら、見知らぬ場所にたどりついてしまいましたわ!」


 友人は使用人とともにちょっとしたハイキングに赴いていたという。

 周囲に人はおらず、使用人ともはぐれているとか。


 さて、どうやってそこからおうちに帰せばいいんだろう。

 私は今家にいて、彼女のそばにはいないのだから困るのだが。





 悩んでいるうちに状況が進展した。


「倒れている方を発見しましたわ! 放っておけませんわ! さっそく手当いたしますわ!」


 どうやらけが人を見つけたらしい。

 けが人の体勢をととのえたり、倒れた拍子にぶつけたらしい頭のけがを見ているようだ。


 レンレは自分が大変な状況にあっても、人が困っていたら親切してしまう。

 自分の問題を解決してからにしなさいと叱っても無駄で、幼いころから性格はぜんぜん変わらないまま。


 今16歳だが、このまま大きくなった大丈夫なのだろうか。


 20歳こえでもそんな調子の大人になっていたら頭が痛い。


 とりあえず方向音痴といっても、さすがにけが人は放っておくわけにはいかないので、どんな人なのか尋ねた。


 そしたら。


「真っ黒の髪に紫色の目をした方ですわ」


 と返ってきた。


 そいつは魔王だ。

 

 この世界には人間と戦争している魔族というものがいる。

 それで、魔族はみんな髪の色が黒色。

 人間に黒髪はいないのだ。

 

 それで、黒髪の中でも紫の瞳をしたものは特別で、その人物は魔王と言われている。


 人間と戦争している魔族の国の王だ。


 私は天を仰いだ。


「見て見ぬふりをしなさい」





 すぐにそこから離れるべきだといったが、「けが人を放ってはおけませんわ」と、レンレちゃん16さいが怒り出す。阿保が阿保を言い出した。

 そうこうしているうちに魔王がめざめて、「お前は誰だ」となる。


 レンレは「私は人間ですわ」と言っちゃいけない言葉ナンバーワンを口にした。

 その結果、私の友人は魔王城に連行されてしまった。






 この通話の魔道具も没収されてしまったのでしばらく状況がわからない。

 次に連絡できた時は、一か月後だった。


 レンレはとっくに行方不明扱いされている。

 家に帰ってきた使用人は憔悴して、家族も頭を抱えていた。


 あたしは、魔王に連れ攫われたと一応言ったが、信じてもらえなかった。





 そんなこんなを経ての一か月だ。

 

 レンレの状況が気になるあまり、相手のことなど気にせず、通話の魔道具に返事をした。


 そしたら、魔王とつながっていた。


「貴様がレンレとかいう人間の保護者か」

「ーーひぇ」


 気絶した。







 友人を見捨てるわけにはいけないので、私は気合で目覚めた。

 面倒くさいことばかりで、幼いころからお世話していた友人だが、情くらいある。


 死んでいたらさすがに悲しくなると思う。


「あの、レンレは今どうしていますか?」


 レンレは魔王を助けた恩人なので、人間であるが魔王城で丁重に扱われていると言った。


 とりあえず胸をなでおろした。

 魔王はここ一か月ほど、レンレをスパイではないかと疑っていたようだが、ピヨちゃん(魔王のペット)に丸のみされかけたり、何もないところで転んだり、魔王城で一日中迷子になっているのを見て、ただの阿保だと察したようだ。


「あやつは、よく今まで生きてこられたな」


 相手が魔王なのにその言葉には心の底から同意した。





 しばらくしたら、レンレは人間の国に連れてかれて、そこで解放されたらしいが、その辺の人間に保護される前にトラブルが起きた。


 空を散歩していたピヨちゃん(でかい鳥らしい)が、レンレが迷子になっていると思って、魔王城に持ち帰ってしまったらしい。


 人間の国にいるはずのレンレの魔道具から、再び魔王が連絡してきた。


「お前の友人はよく今まで生きてこられたな」


 似たようなセリフを魔王から2回も聞くとは思わなかった。





 ピヨちゃんにつかまる前、人間の国に十分ほど帰還いたレンレだが、その際に兵士たちの機密情報をゲットしてしまったらしい。


 魔族の国に近い人間の国。

 そこにいる兵士の機密情報を。

 大問題である。


 聞けば、方向音痴発動で、兵士の詰め所に迷い込んでいたとか。


 口にしなければよいものを、うっかりレンレは魔王の前でそれをばらしてしまい。


 滞在日数が伸びた。


 それからしばらくは魔族の国が驚くような勢いで進軍していったとか。






 そのうちに何がどうなったのかレンレが指名手配され、魔族の味方をするスパイにされてしまった。


 ただのうっかりです。なんて言っても信じてはもらえないだろうし、実際に魔族の進軍が起きている。


 レンレの意思や彼女の情報がどの程度影響したかなんて、確かめようがないから無実も証明できない。


 そのためレンレは人間の国に戻れなくなってしまったのだ。

 私は、魔王に友人の保護を頼むしかなかった。


「どうか、うちの友人を頼みます。暇になると徘徊しだすのでしっかり見張っておいてください。あと三時の時間になるとおなかをすかせてご飯を探しだします」

「ああ、わかっている。仮にも私と兵士たちの恩人だ。変なところにいかれて自滅しないように見張っておこう」


 兵士たちの恩人にもなってしまったらしい。

 例の機密情報のせいなのか、別の何かがあったのか、怖くて聞けなかった。






 その後も、レンレはたびたびやらかす。


 魔族の街にでて悪い連中につかまったり、ピヨちゃんにくわえられて魔族の国の上にある、誰もいったことのない天空古代遺跡にたどり着いてしまったり。


 そこでひょんなことから、人間と魔族の戦いの原因を知ったり、その原因の生き物とであったり、レンレを探しに来た魔王とその原因を討伐しにいったり。


 ちなみに詳しい事は知らないが、人間と魔族が休戦状態になり、レンレの指名手配もとかれることになった。





 レンレが人間の国に帰ってきたのは、失踪してから3年の月日がたっていた。


 無事で顔を見られたのはよかったが、レンレはなついてしまったピヨちゃんの力をかりて、それからも魔王城に出かけるようになってしまった。


「いまレンレがこっちに来ている。なかなか帰りたがらないから説得してくれ」

「うちの友人がご迷惑をおかけしてすみません。ーーほらレンレ、さっさと帰ってきなさい。晩御飯の時間過ぎちゃうわよ」


 しかし、ただの貴族令嬢だったのに、私はどうして魔王と密に連絡をとりあうようになっているのだろうか。



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