動かぬ先は行き止まり~憎い女の行く先は?~
平日の服屋はそんなに人が来るものではない。
美奈子は人に服を売り込むのが上手かった。
美奈子は赤い服を手に取った60代くらいの女性に近づく。
「お客様、そちらの赤い服お似合いですね!よければ試着してみませんか?」
「あら、じゃあ来てみようかしら」
女性を試着室に案内した美奈子は近くの棚の上の服を綺麗に畳み始める。
レジにいる愛子と瑠衣は顔を見合わせる。
「美奈子はよく働くよねー」
愛子が関心していると頷く瑠衣。
「いやあーこの店舗の売り上げは美奈子がいる限り安泰だね」
愛子ははっとした顔をする。
「そういえば、今週って系列の店舗との売り上げ比較出される週だっけ?」
瑠衣は目を丸くし、
「そういえばそうだ。でも余裕で1位でしょ?美奈子があんなに売ってくれてるもの」
「だよねー。あ、そういえばもうお昼ね。ご飯休憩入ろうか?今は美奈子がいるし」
愛子の言葉を聞いて微笑む瑠衣。
「そうだね。今のうちに行きましょ?」
瑠衣と愛子はレジの傍を離れ、美奈子の近くに行って声をかける。
「美奈子、私達休憩入るね」
「はーい」
何事もなかったように答える美奈子は二人の後ろ姿を見ながら寂しそうな顔をする。
瑠衣はデパートの通路で倒れた。
「どうしたの?」
愛子は駆け寄るも、瑠衣は目が大きくなっているように見える。
瑠衣が「誰……」と不振に思っていると、愛子は救急車に運ばれていった。
愛子は喫茶店でナポリタンを頼むも中々喉が通らない。
結局、全然食べられないまま服屋に戻った愛子。
美奈子は一連の話を聞いてびっくりしながら待っていたようだ。
店舗に電話の音が響く。
美奈子が電話を取る。ひどく取り乱し頭を押さえている。
電話を切った美奈子は愛子に言った。
「瑠衣はバセドウ病になったみたいで。体を動かすとしんどくなる病気みたいで」
「ええええ」
愛子は持っていたバッグを落とす。
「じゃあ仕事は?」
「当分復帰できそうにないみたい」
美奈子の言葉に愛子は啞然とする。
「寂しいけど二人で頑張ろう」
美奈子はそう言って無理やり笑顔を作った。
「私も休憩行ってくるね」
美奈子は店を出た。
デパートの通路を歩いていると真顔になる美奈子。
「何もしないと、何もできない体になるのよ。神様は公平だったんだわ」




