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熱くて寒い奇跡  作者:
9/29

第8.5話「帰る場所」

第8.5話です。

これは、もう一つの戦場の物語。


ハンスは空を見上げていた。


青かった。


こんな場所でも、空は変わらない。


「……帰りたいな」


小さく呟く。


誰に聞かせるでもない。


ポケットから写真を取り出す。


写っているのは、家族だ。


母と妹。


笑っている。


あの村の風景。


静かな日々。


あの頃は、戦争なんて遠いものだった。


「俺は……間違ってないよな」


写真に向かって言う。


ここにいる理由は分かっている。


命令だから。


だが、それだけじゃない。


守るためだ。


家族を。


帰る場所を。


それは正しいはずだ。


そうでなければ、ここにいる意味がない。


そのとき――


肩に激痛が走った。


「っ……!」


体がよろめく。


撃たれた。


昨日の傷が開く。


息が乱れる。


どこからだ。


どこにいる。


視界が揺れる。


だが、立たなければならない。


ここで倒れたら終わりだ。


帰れなくなる。


歯を食いしばる。


一歩、前に出る。


その瞬間――


銃声。


時間が止まる。


衝撃。


体が崩れる。


地面が近づく。


冷たい。


動けない。


空が見える。


さっきと同じ空。


青いまま。


ハンスは思う。


帰りたかった。


ただ、それだけだった。


意識が遠のく。


最後に、写真のことを思い出した。


落としたままだった。


「……ごめん」


声にならない声。


やがて、すべてが静かになった。

読んでいただきありがとうございます。

同じ戦場で、同じ空の下で、それぞれが自分の正義を抱えていました。

どちらが正しいかではなく、どちらも「正しい」――それがこの物語の一つの答えです。

よければ感想などいただけると嬉しいです。

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