鼓動
心臓の音がないあなたを母と呼びたかった
白いひらひら 大きな一つ目はわたしを映している
あなたは口が無くて わたしに愛を囁けなかった
骨みたいな細くて長い腕がわたしを慈しんだ
それでよかった
あなたは浮いているのにわたしは地に着いていた
それが嫌で 何度も跳んだ
何度も跳ぶわたしをあなたはどう思ったか
ふいに
抱きしめられた あなたの丸い胴体に辿り着く
心臓の音がしなかった
頬を寄せた
嬉しくて
嬉しくて
終わりがないあなたと終わりがあるわたしでは果てしない壁があるけれど
繋いだ手の冷たさと暖かさがいつか交わることを夢見てる
背中でなぞった文字
黒い瞳の中に映る自分
生暖かい息があなたの口蓋を吹き抜ける
微かに鼻につく錆びにあなたを想う
絵本を捲った手
優しく撫でられた頭
赤ちゃんの頃に吸い付いた指は何味だったろう
心臓の音がないあなたを母と呼びたかった
白いひらひら 大きな黒い黒い一つ目
あなたの心臓の鼓動が聞こえた気がした




