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第1部 第4章 未来

 空は夕日に染まっていた。悠真と凛は、並んで歩きながら、手にしたコンビニのコーヒーとカフェラテを口に運ぶ。温かさが指先に心地よい。通りを抜けた先に、小さな公園が見えてきた。ふたりは何も言わずに、空いていたベンチに自然と腰を下ろす。

 しばらく沈黙が続いたあと、悠真がふと口を開いた。


「なあ、卒業したらどうするの?」


 カフェラテを両手で包みながら、凛が少しだけ考えてから答える。


「私は……獣医になるために、大学に行くつもり。動物が好きで、小さい頃からずっとその夢だけは変わってないんだ」


 その言葉に、悠真はうなずきながら視線を遠くに向けた。


「すごいな。ちゃんと目指すものがあって。俺は……まだはっきりしない。やりたいことも、得意なことも、わからなくてさ」


 凛は隣で静かに聞いていたが、やがて微笑んで言った。


「大丈夫だよ。焦らなくても。迷うのは悪いことじゃないし、ちゃんと考えてるってことだと思うから」


 その言葉に、悠真は少しだけ肩の力を抜く。

 気づけば、空はすっかり暮れていた。街の明かりがにじむように灯り、風が肌を冷たく撫でていく。さっきまで賑やかだった公園も、いつの間にか人の気配が消えていた。どこか、現実から切り離されたような静けさ――。


 その中で、悠真はふと、理由もなく胸がざわつくのを感じていた。言葉にはできない、けれど確かに、心の奥をかすめるような不安の影が、そっと忍び寄っていた。

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