第1部 第2章 変わらない日々
放課後の教室。窓の外には、昼間とは打って変わって曇り空が広がっている。空気は少し冷たくなってきていたが、教室の中はまだぬるい余熱が残っていた。悠真が窓際の自分の席で、スマホをいじっていると。凛はその隣に立ち止まり、声をかける。
「悠真! 昼休みに話してたあのいちごパフェのお店、今日、一緒に行かない?」
凛の声は、明るく弾けるようで、どこか楽しげだった。
悠真は一瞬、戸惑いながらも、心のどこかでその提案に期待している自分がいることに気づいた。すべての瞬間が、何気ないけれど大切な宝物のように感じられる。
「うん。いいよ。」
悠真はゆっくりと頷いた。
その言葉に、凛は嬉しそうに笑みを深める。
「やった! じゃあ、早速行こうよ!」
二人は並んで歩き出す。並んで歩く廊下の景色も、いつもの雑談も、校門を出たときに吹く風の冷たささえも――
すべてが、悠真には心地よかった。ほんの少し肌寒いその感覚でさえ、今は不思議と愛おしく思えた。
変わらない日常。何度でも繰り返してほしいと思える、たわいない放課後。
そんなことを思いながら、悠真はふと横を見る。
凛はスマホで地図を確認しながら、楽しげに何かを話していた。
――こんな時間が、ずっと続けばいいのに。
悠真は、心の奥でそう願っていた。