第1部 第17章 白い光
暗闇の中、突如として現れた白い光が、音もなく病室の空気を塗り替えていく。まるで世界の境界が溶け、現実と非現実のあいだを曖昧にするように。
「これは……」
悠真はかすかに目を見開き、光の中心を見つめる。あまりにも現実離れしたその光景に、恐怖も驚きもすぐには追いつかない。ただ、胸の奥がざわつく。
(また時間が戻るのか?)
胸に広がるのは、不安。もしまた戻ったとして、それで何ができるというのか。自分に何かを変える力があるのか。同じ結末が待っているだけなら、それは単なる絶望の繰り返しでしかない。
(だけど……)
その思考の底から、じわじわと湧き上がってくる感情があった。
(それでも……)
あの時の選択を、行動を、ほんのわずかでも変えられたら。何かひとつでも違っていたら。この運命を、自分の意志で抗いたい。
(凛を救いたい)
心に浮かぶその願いは、疑いようもなく本物だった。
恐れている。また失ってしまうことを。だが、何もしないまま終わることのほうが、もっと怖かった。
(もしまた時間が戻るのなら……今度こそ)
悠真はそっと拳を握りしめた。
わずかな光の脈動が、彼の決意に呼応するように、空間を震わせる。これはただの夢じゃない。偶然でもない。
自分は、試されている。逃げずに立ち向かうか、それとも背を向けるか――
白い光が、世界を覆う。すべての輪郭が溶けていく中、悠真はその中心に向かって、身を委ねていった。その先に待つ運命が、たとえどれほど過酷なものであったとしても。
彼の心には、ただ一つの想いがあった。
――凛を、救いたい。
そして、光がすべてを包み込んだ。




