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第1部 第15章 白い心
サイレンが鳴り響く。救急車の中、凛はストレッチャーの上で静かに横たわっていた。目を閉じたその顔は、眠っているようで、どこか現実味がなかった。悠真は隣で座りながら、拳を握り締めていた。凛の名前を何度呼んでも、返事はない。
(どうして……どうしてこんなことに)
脳裏に焼きついて離れない。凛がはね飛ばされた瞬間。
あと一歩、もう一瞬早ければ――そんな悔しさが何度も胸を刺した。
「……なんで、またなんだよ……」
掠れた声が、自分の口から漏れた。
さっきまで、確かに彼女は笑っていた。手を伸ばせば触れられる距離にいた。
それなのに。
「どうして……二度も凛を死なせなくちゃならないんだ……」
涙は出なかった。ただ、心が真っ白になっていく。
もう何を信じればいいのかわからなかった。
目の前にある現実が、信じられなかった。信じたくなかった。
夢なら覚めてくれ。




