第1部 第11章 憂慮
夕暮れの街は、どこまでも穏やかで、優しげに彩られていた。
通りを並んで歩く二人。その足取りに言葉はなく、沈黙だけが続いていた。時折吹く風が、凛の髪をふわりと揺らす。その横顔を見つめながら、悠真は考えを巡らせていた。
(ここまで、同じだ……)
目の前に広がる光景も、すれ違う人の流れも、パフェの話で盛り上がった凛の様子も、記憶と寸分違わない。
――同じ運命をたどらせてはいけない。
そんな想いが、胸の奥から静かにこみ上げてくる。
「……どうしたの? 怖い顔してるよ」
凛が足を止め、覗き込むように聞いてきた。悠真は一瞬だけ戸惑い、すぐにいつもの笑みを浮かべた。
「……いや、大丈夫。ちょっと考えごと」
「ふーん?何も喋らないから、どうしたのかなって思った。」
凛は少し首をかしげたが、それ以上は何も言わずに歩き出した。
やがて、目的のパフェ専門店が視界に入る。ガラス越しに見えるショーケースには、色とりどりのパフェが並んでいた。
パフェを注文し、あの日と同じ会話をして、パフェが来るのを待った。 店員がやってきて目の前にいちごパフェを置いた。凛は小さく感嘆の声を漏らしたが、悠真はその様子を静かに見つめていた。
(ここも同じだ。)
そう心の中で呟きながら、スプーンを手に取る。
パフェを食べ終えた頃には、空は茜色からゆっくりと藍に染まり始めていた。
凛が「美味しかったね」と微笑み、悠真もうなずく。
店を出た瞬間、冷たい風が二人の間をすり抜けた。その一瞬、悠真は空を見上げる。まだ、何も起きていない。
(この後は……このまま帰ろう。)
心の中で、今までにない不安が渦巻いていた。




