綺麗な家へ
優作が先に外へ出ていき3人が後に続いていく。
どこへ向かうのかは優作任せでのんびり散歩がてら外へ歩いていく。
先程まで命を奪われようとしていたとは思えない気持ちのいい天気に伸びをして心を落ち着ける遥来。
仲良く4人で会話をしながらどこかへ向かっていく。
「これはどこに行ってるんだ?」
遥来は前を進む優作に聞いてみる。
「恐らく叶逢さんも知っていると思うんですけどこの村にはお爺さんの持っている家が何軒かあるんですけど僕達はたまにそこで遊んでるんですよね。」
優作は恵を見ながらにっこり微笑む。
恵も優作を笑顔を見つめ返す。
「2人とも顔が良いから絵になるわね。」
なんだか涎を垂らしながら叶逢が2人を見ているような気がしたが、気のせいだと思い2人を笑顔で見る遥来。
「さっき1軒叶逢から教えてもらったけどやっぱり爺さん家をいっぱい持ってるんだな。」
遥来はあんな遺言を残すだけあってかなりのお金があったんだろうと想像する。
何となくは想像出来ていたが自分が思ってる以上の金持ちなんじゃないかと改めて思う遥来。
「2人が知っているのはどこら辺なの?」
叶逢は先程までのだらしない顔を止めて普通の顔に戻し優作と恵に尋ねる。
「僕達が知っているのはここから15分位は歩いて最後に坂を登ったところです。」
優作は自分の知っている家に着いて簡単に説明する。
叶逢は歩いている方向と坂の上と聞いて何となく場所がわかったようだった。
「あそこってちょっと疲れるんだよ。広くて綺麗だから遊ぶには良いんだけどね。」
恵はよく遊んでいる家について感想を漏らす。
そんなに綺麗ならこの村にいる間は大人の邪魔にならないようにそっちで遊んで時間潰すのも良いかなと考える遥来。
「もう少しですよ。この先の坂を登ったところです。あの上の方にある大きな家です。」
叶逢と遥来は優作が指を指す方向を見ると確かに大きな家が見えてきた。
坂を登って家に着くと優作は慣れた手つきで鍵を開けて電気をつけながら中に入って叶逢と遥来を案内する。
「お兄ちゃん、リビングのエアコンつけておくね。」
恵は元気よく進んで行ってリビングがあるであろう部屋に入っていく。
3人はゆっくり恵が待つリビングへと進んでいく。
「遥来お兄ちゃん、叶逢お姉ちゃん、はいお茶どうぞ。」
恵はいつの間にか2人にコップについだお茶を渡してくる。
冷蔵庫でよく冷やされていたようで触った感触がひんやりして気持ち良く感じた。
そのお茶を飲もうとした時に遥来の頭の中に何かが見えてこっそりと叶逢に伝える。
そんな遥来と叶逢の様子に恵は気がついていなかった。
「恵、僕にもお茶をお願い。」
優作はリビングのソファに座って恵にお茶をついでくれるようお願いする。
恵は食器棚にある普通とはちょっと違うコップにお茶をついで優作に持っていく。
そのコップは優作専用に使っているようだった。
「ふぅ、ここは綺麗ですよね。あの屋敷にいると大人達の邪魔になりそうですから今後はここを僕達の拠点にするのはどうですか?」
優作は先程遥来が考えていた事と同じ事を提案してくる。
「え、いいの?こんなに綺麗で広いところに居ていいなら嬉しいな。」
叶逢は優作の提案に嬉しそうにしている。
遥来は自分と同じ考えをしているなんて優作は大人びていると関心する。
そんな風に何気ない話をしていると遥来と叶逢はここまで来るのに疲れたのかこの家が綺麗で過ごしやすくて気持ちいいのか何だが眠くなってきた。
「遥来さん、叶逢さん、大丈夫ですか?眠くなってきたなら毛布持ってきますから少し寝てください。」
優作は2人が微睡んでいるのを見て隣の部屋から毛布を持ってくるためにリビングから1度出ていく。
虚ろな状態でいた遥来は完全に目を瞑る。
隣にいた叶逢も同じように目を瞑ってしまって完全に無防備になる。
そんな2人に向かって何故か水が空中を漂って近づいて来ていた。
完全に目を瞑った2人の体を包むように水が動き出して縄のように縛りあげようとする。
最後に手錠のような形を作り手を縛ろうとしたところで2人が突然起き上がる。
「え!どうして!?」
リビングにはいない優作が大きな声を上げる。
その声のする方に向かって走る遥来と空中を漂う水を何とか操ろうと力を込める叶逢。
遥来が声のした部屋へ着くとそこには目を瞑って何かを操るような手の動きをする恵と同じく目を瞑ってリビングの様子を伝えている優作がいた。
「遥来さん!睡眠薬入りのお茶を飲んだはずなのにどうして?」
優作は目を開けて目の前に遥来が居ることを不思議に思い確認する。
「それは2人も持ってるであろう力を俺も持ってるからだよ。それであのお茶に何か仕込んであることが見えたんだ。」
遥来は恵から渡されたコップを持って飲もうとした瞬間に5分進んだ時計とその場で眠る叶逢と遥来の姿、そして水が動いて2人を縛る様子が見えていたのだった。
急に2人とも寝るなんておかしい上に水が動いていることで優作と恵が何かを仕掛けて来るだろうと判断した遥来は叶逢にこっそりとお茶を飲まないように伝えていた。
「やっばり能力持ちだったんですね。恵!遥来さんに向かって水を飛ばして!」
優作は恵に向かって指示を出すとその通りに動こうとする恵は2人の後ろにある蛇口から流れる水を飛ばして遥来を壁に叩きつける。
「ぐっ!」
いきなり水の圧力に押されて壁にぶつけられた遥来はすぐに立ち上がれずにその横を優作と恵が抜けて2階へ上がっていく。
遥来が叩きつけられた音を聞いて叶逢が駆け寄ってきた。
「遥来!大丈夫?」
すぐに立てない遥来の背中をさする叶逢。
「だ、大丈夫…優作君と恵ちゃんはやっぱり能力持ちだったよ。でも最初に見た映像は俺達を縛ろうとしてただけだからそこまで敵対するつもりはないのかも知れない。もしかしたら叶逢の時と似たような感じかも。」
何とか立ち上がれた遥来は自分の想定を叶逢に伝える。
「そうならいいけど…ちなみに浮いていた水を操ろうと思ったけど全然動かなくてさ。それ以外の物は普通に動かせたからどうしようかと思ったらいきなり浮いてた水が地面に飛び散ったてすぐに遥来が叩きつけられた音がしたから操れるのは1個だけなのかも。」
叶逢は自分の力で動かせなかったがそれ以外の物は動かせるか試して問題なかったので相手は水を操るだけだと考える。
「水を操っているのは恵ちゃんだ。優作君の方の能力はまだわかってないけど恐らく直接的な攻撃じゃなくて恵ちゃんの攻撃を助ける力だと思う。直接攻撃できるならリビングで浮かせてた水を解除してまで恵ちゃんに攻撃させなくても自分の能力で俺を攻撃してたと思うから。」
状況的に優作の能力を判別しようと試みる遥来。
そんな2人に向かってまたもや水が浮いて襲いかかってくる。
「水が浮いて来るならこっちは布団でくるんであげる!」
優作が置いていった布団を動かして飛んでくる水を包む叶逢。
完全に布団にくるまれた水は中で暴れ回るが布団を操っている叶逢の方が強いようでそのうちに暴れることなく水が布団の隙間からこぼれ出していた。
「なるほどね、恵の能力は水単体なら私も勝てないけど他を使って防ぐなら何とか対処できるみたいだね。」
叶逢は自分が恵の力に勝つ方法を見つけて何とかできると考える。
「それでも2人がどこにいるか分からないのに相手からは好き勝手に攻められるんだから今の状況を何とかしないと!」
遥来は次の水が来る前に2階へ上がろうと試みる。