叶逢の協力
叶逢は遥来にとびきりの笑顔を見せて2人で暗い家の中で話をする。
「遥来にも何かしら能力があるんだよね?どんな力を持ってるの?」
叶逢はベッドの上で膝を抱えて座り込み遥来の能力を聞き出す。
遥来なりの気遣いとして叶逢の座るところはあまりに埃が酷く服が汚れそうだったので家の中を探し回り物置に残っていたシートを軽く叩いてベッドの上に敷いてあげた。
「俺の能力は恐らくなんだけど未来視だ。使いこなせてるわけじゃないから想定でしかないんだけど。」
遥来は時折勝手に発動する自分の未来を見る力が自分の持つ不思議な能力だと考えていた。
「自分で未来を見るときを選べないの?勝手に未来を見せてくるなんて使い勝手悪いね。私のサイコキネシスは目覚めた時から結構すんなり使いこなせてたんだけど色々条件があるのかな…」
叶逢は自分のサイコキネシスで傍にあった鏡の破片を自分の突き出した人差し指の上に乗せてくるくると回し出す。
遥来からしたらあまりにも慣れた手つきでそれが自分にもできるのではないかと錯覚してしまいそうだった。
「叶逢が羨ましいよ。そんな風に扱えて当然って感じならかなり強いし本気で殺しに来てたらすぐにやられてたくらいの能力だし、俺の能力はいつ発動するか分からないしどちらかと言うと守りに特化した力だから攻撃に使うには難しいから。」
遥来は自分の目を片手で隠し何か見えるか試して見たが真っ暗な世界が広がっているだけで何も起きないことに落ち込む。
「でも、その能力があったから私に勝てたんでしょ?使いこなせれば凄い力だと思うよ。」
叶逢は自分が負けた時の事を考えながら遥来を褒めて先程まで回していた鏡の破片を遥来の手にゆっくり乗せる。
「使いこなせればね。そもそもこんな力を他に使う時が来るかなんて分からない訳だし、もしかしたら叶逢以外には狙われる事なんて無いかもしれないよね。」
遥来は立ち上がって叶逢が渡してくれた鏡の破片を元々置いてあった机の上に戻す。
「遥来、残念だけどそれはあまりに想定が甘いよ。ここに不思議な力を持った人間が既に2人いるんだよ。たまたま親族の中で2人だけ目覚めるなんてことあるとは思えないからきっと私達の親族は何かしら力をもっていると考えた方が良いよ。そしておじいちゃんの遺言があるせいで命が狙われないとも限らない訳だよ。」
叶逢は手で銃の形を作りバーンと口パクしてナイフをサイコキネシスで遥来の顔の傍に通してみせる。
「叶逢もやっぱりそう思うか…やっぱり甘くないよなー。親族で争いたくないけどもしかしたら父さんが命を狙ってこないとも言いきれない訳だし…はぁ、気が重い。」
遥来はまた立ち上がって叶逢が飛ばしたナイフを広い叶逢に手渡しながらため息をつく。
「仕方ないな、私が遥来の味方になってあげるよ。うちのパパが遥来の命を狙うかもしれないからその時は味方で入れるか分からないけれど基本的には味方だと思ってよ。」
叶逢は立ち上がって胸を張りドンッと自分の胸を叩き遥来の味方になると告げる。
「それは嬉しいね。健介さんが敵にならない事を祈るだけだよ。」
複雑な笑顔を見せながら叶逢が味方になってくれる事を喜ぶ遥来。
「とにかくこれから改めて宜しくね。」
叶逢は遥来の元に近寄り味方の証明として笑顔で握手をしようと右手を差し出す。
「今のところは敵にならない事を信じて、よろしく。」
遥来は差し出された右手をがっしりと掴んで握手を交わした。
これ以上は特に今話す事が無いと考え2人で暗い家から出ていく。
あまりにも暗い家で1時間程話していたので外に出るとその明るさに目がやられそうになり目を瞑って少しずつ目をならそうとする叶逢と遥来。
「そういえば聞くの忘れてたんだけど叶逢は他にこういう不思議な力を誰が持っているか知らないのかな?」
遥来は親族に力を持っているものがいる可能性を考えて叶逢が何かしらの情報を持っていないか確認する。
叶逢は人差し指を顎に当てて心当たりがないか精一杯思い出して見るも思い当たる節はなかったようで首を横に振る。
「そっかー。大人組も怖いけど子供組も力持ってたら容赦なく襲ってきそうで怖いんだよな。基本的に何も無ければ敵対する事はないと思うけどあの遺言があるせいで自分の親から言われて襲ってくることも考えられる訳だから何かしら情報があれば良いなと思ってたけど…仕方ないか。」
遥来は必死に思い出そうとしてくれたけど何も知らない様子の叶逢の頭をポンポンと優しく叩いて
笑顔を向ける。
「こういうのはイケメンがやるから効果あるんだよ。不細工とは言わないけど中の上くらいの遥来じゃ嫌がられる可能性だってあるんだから気をつけなね。」
満更でも無い顔をしながら女の子の頭を撫でることに苦言を呈する叶逢。
そういうものかと思いこれからは気をつけようと心に決める遥来。
傍から見るとイチャイチャしてるカップルのようだが2人の考えはあまりにもズレており不思議な空間が広がっていた。
そんな2人の後をつけている人物がいることには2人とも気がついておらずそのまま屋敷まで戻っていってしまう。
「ただいま。私の用事は済んだから誰か遥来を使いたい人いるかな?」
叶逢は子供達に向かって遥来の方を指さし誰か用事がないか確認する。
「ちょっと、俺は別にものじゃないから。」
適当な叶逢に優しく注意する遥来。
そんな2人の様子を見てにこにこしている恵は2人に向かって飛びつく。
「ちょっと恵、どうしたの?」
いきなり抱きついて来た恵に焦る叶逢と同じく言葉なく焦る遥来。
「ううん、なんでもないんだけど2人とも朝より仲良くなった気がしたから良いなと思っただけだよ。叶逢お姉ちゃんは朝の様子がなんだか少し変な感じしたんだけど今はいつものお姉ちゃんみたいで良かった。」
恵は叶逢の緊張した様子を感じ取っていて内心は心配をしていたようだった。
「そうなんだ、ごめんね。変な心配させちゃったかな?恵は人の感情に敏感なんだね。その優しい気持ち大事にしてね。」
叶逢は恵の頭を撫でながら優しく褒める。
「用事が終わったのであればせっかく遥来さんもこっちに帰ってきてる事ですし今日くらいは思いっきり遊びませんか?」
優作は久々にこっちに戻って来た遥来と一緒に遊びたいと子供らしい可愛いことを言う。
「優作君…そうだね。せっかくの機会だし今日1日位は思いっきり遊び倒そうか。」
遥来は優作の言葉に賛成する。
叶逢も同様に頷き、恵は笑顔で喜んで見せる。
「それならこの屋敷ではあんまり騒ぐと大人達の迷惑になりますから外で遊びましょう。」
優作は実年齢よりよっぽど落ち着いた提案をして外に出る準備をする。
「優作君は大人っぽいよね。遥来なんかよりよっぽどモテそうだね。学校でも人気あるんじゃないの?」
叶逢は同じように外に出る準備をしながら落ち着いた雰囲気の優作を褒めてみせる。
「そんなことないですよ。言い方を変えたら根暗なんですよ僕は。だからモテるなんてことはないんです。」
優作は謙遜するように自分は人気がないと話す。
「恵ちゃんから見た優作君はどうかな?」
優作の言うことが信じられない遥来は恵に優作の事を確認する。
「お兄ちゃん?いつも色んな女の人から手紙もらったり応援されたりしてるよ。私もお兄ちゃんの事色んな人からきか…ふがっ!」
とびきりの笑顔で優作がモテている事を話す恵に対してしーっと口に手を当てそれ以上喋らせないようにする優作。
そんな姿を見て微笑ましいと思う叶逢と遥来だった。