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高神家の人々

「そのような遺言が本当に罷り通るわけはないだろう!」


机を叩きながら1番上座に座っていた男性は声を荒らげて立ち上がる。

その男性は高神成政の4人の子供の内、長男の高神健介(けんすけ)だった。

健介の発言を聞いて周りの様子を伺うに他の人達も納得はしていないようだった。


「兄さんの言う通りだよ。こんな事があっていいはずがない。」


立ち上がって声を荒らげた男性の隣に座っており、健介の事を兄さんと呼ぶその男性は成政の次男で高神貴之(たかゆき)だ。

健介は強気な態度が顔つきにも現れ強面と呼ばれるタイプだが、貴之は柔らかい物腰で顔つきからも優しさが垣間見える男性だ。


「ちょっと、貴之さん。こんなことになるなんて私は聞いてないわよ。こんな話を聞かされるってわかっていれば優作(ゆうさく)(めぐみ)を連れてくるなんてしなかったのに。」


貴之の隣に座る女性は貴之の妻のようで遺言の内容について貴之に問いただす。

その女性の名前は高神麻里奈(まりな)と言う。

更に離れて子供たちで集まって座っている中に貴之と麻里奈の子供である優作と恵がいた。

2人の子供は14歳と8歳で少し歳が離れた兄妹だった。


「麻里奈さん、落ち着いてくださいよ。こんな話になるってわかってたら誰も最初から子供を連れて来ようとしませんからね。うちだってわざわざ遥来を呼ぶこともなかったんですから。金庫に収まっていた所を見るからに誰も中身を把握してなかったんですよね?それなら仕方ないですよ。」


義姉の麻里奈が興奮しているのを抑える役目を買ってでたのは下座の1番前に座る遥来の父である高神直人(なおと)だった。

直人は年齢の割に良い意味で柔軟性がある、悪い意味で適当な人間である。


「直人さんの言う通りです。誰も状況を知らなかったんですから仕方ないことですよ。ねえ、雪ちゃん。」


直人の隣に座りその横に座る雪という女性に意見を聞くのは遥来の母である高神詩織(しおり)である。

詩織は適当なタイプの直人とは違いしっかり者で家族の実験を握っていた。


「そうですね、詩織さんの言う通りです。誰も遺言を知らなかったのでいくら叫んでみてもどうしようもありません。それよりもこの遺言が正規な物だとしても誰もがその内容に納得出来ないのですから何とか遺言を守らずに兄弟で分け合う事は出来ないのでしょうか?」


詩織から声をかけられた女性は4兄弟の1番下で長女の高神(ゆき)ではっきりと意見を通すタイプの女性だ。

この感じが詩織とウマが合うみたいで良く詩織と遊んでいるみたいだった。


「雪ちゃん、それは難しいんだよね。法律の部分だけど今回の遺言が家族に分配すると言うものであれば納得のいかない人を合わせて遺産相続人の全員の許諾で分け方を変える事も出来る。でも今回は遺産の分配を許さないとして1人しか受け取れないとなっている、この場合は5年以内の期間では遺言の効力により分配することが認められていないんだ。それにお爺様のことだからそういう事が認められてても裏から手をまわして分け合うなんて出来ないようにしてるだろうね。」


雪の隣に座る無精髭の生えたダラっとした男性は雪の旦那で高神(あきら)だ。

高神姓なのはもちろん成政の力を考えて婿養子とした方が何かと便利だからである。


「って事はパパ達と私達子供含めて男が誰か一人になるまで相続はできないし無視しようとしたら遺産は持っていかれるって事?」


子供達側の席に座るギャルっぽい雰囲気の女性が彰に確認する。


「そうだよ、叶逢ちゃん。いくらここで全員が話し合って分けると言っても無駄なのさ。」


彰が声をかけられた女性に返答する。

その女性は健介の子供である高神叶逢(とあ)だ。


「それなら今日来ていないママは別として私と麻里奈さんと詩織さんと雪さんと、あとは…恵ちゃんと未来ちゃんは関係ないんだから帰ってもいいんじゃないかな?せっかく家の弟が生まれたところなのにこんな所にずっと居る必要無いでしょ?ママと弟に会いに行く方がよっぽど有意義だよ。」


叶逢は女性陣には関係ないと考えて帰らせて欲しいと申し出る。

つい昨日健介の妻が男の子を産んだばかりでそれを見に行きたいという。


「私もせっかくなら叶逢姉様について行って赤ちゃんの顔を見たいですわ。」


子供側で先程叶逢から名前を呼ばれていた高神未来(みらい)は彰と雪の子供で双子の姉である。


「未来ちゃんもそう思うよね。斑目さん私達を送って行って欲しいんだけど。お願い出来るかな?」


早速決まりと言わんばかりに叶逢は斑目に車を出して母親と弟のいる病院に連れて行って欲しいとお願いする。


「叶逢様、申し訳ございませんが遺言状は2枚になっておりまして続きがございます。そちらを読ませていただきますね。「尚、遺言が読まれた後に今集まっている者が男女問わず相続人が決まる前に屋敷から離れようとした場合に遺言の内容を破棄したものとしてこれも特定の基金に寄付するものとする。ただし、この村の中にいる事は範囲内と認めるものとする。」以上です。」


斑目は続きのあった遺言状を皆の前で追加で読み上げる。


「それなら姉様が勝手に出ていく訳にはいかなくなったね。僕達のお爺様とはいえなんて意地の悪い遺言を残してるんですかね。」


静かに未来の隣で話を聞いていた男の子が成政についての不満をもらす。

この男の子は雪の双子の1人で未来の弟である高神往時(おうじ)だ。

ここに遥来を合わせて現在13人が成政の屋敷に揃っており、誰もが勝手に帰る訳には行かずこの村の中での生活を強いられることとなった。


「なんということだ!親父の奴め!死んでからも私達を苦しめるのか!」


健介はどうにもできない憤りを机にぶつける。

長男である健介を宥めるのはいつもは叶逢の母親が行っていたが今は病院にいるためになだめ役がおらず全員どうして良いのか分からず無言になる。


「とりあえず、元々1週間位は皆ここに残るつもりで考えていたんだよね?それならその1週間の間に何か出来ることを調べて見るしかないんじゃないかな?どうしてもダメな時は遺産は諦めることも念頭に置いておくとしてね。」


貴之は興奮している健介を落ち着かせるために今後どうすべきかを想定して伝える。

貴之の言葉に健介も周りの皆も落ち着いて今後どうするべきかを考えようと大人達は別室で相談しようと言うことになった。


「遥来!遥来が子供達の中では叶逢ちゃんと一緒で最年長なんだから皆の話を聞いてあげるなり遊んであげるなりするんだぞ。」


直人は話し合いで部屋を移る前に遥来に声をかけて行く。

その言葉に頷き子供達の様子を伺って自分が何をすべきか考える。


「遥来がいてくれて良かったよ。私って結構落ち着きがないから皆を纏めるのは難しいと思ってるし、遥来ならそういった事を任せられるからね。頼んだよ。」


叶逢は遥来の背中をバシッと叩いた。

その瞬間遥来の頭の中に映像が浮かんでくる。



(遥来…私ね…遥来の事)

その映像はモザイクがかかったようにはっきりとしたものでは無いが叶逢が遥来に何か伝えようとしている所のようだった。


「ちょっと、何ぼけっとしてるの!子供達の纏め役頼んだよ!」


もう一度背中を叩かれハッとして意識を戻す遥来。

今の映像がなんだったのか分からずに謎の胸騒ぎに包まれながら遥来は纏め役として子供達の話を聞くことにした。

異能バトル物ですけどバトル部分が始まるのは4話か5話からの想定です

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