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別れなよ。お姉ちゃん

作者: かや

わーお姉ちゃん! 久しぶり! どうしたの?



私? 今ね、学院終わりで魔術書探しに古本屋行ったところよ。お姉ちゃんは、デートなの。なんで彼氏さんいないのさ。



えー? 彼氏さん、妹チャンも連れてきたの。



信じらんないわ。



違うって? 本当にお姉ちゃん、おもってる?



まあ、いいや。だったらお姉ちゃん、勝手に私と遊ぼ。いいでしょ。平民ながら貴族だらけの学院で頑張ってる私へのご褒美ちょうだいよ。



妹ばっか可愛がってお姉ちゃんほったらかす、デートって意味わかってない男なんてほっといていいよ。だって今だってほったらかしじゃん。



どこ行ったの、相手。



えー、信じらんない。妹がお店にお姉ちゃんも連れて入りたくないとか言ったの。2人っきりがいいって? あの男、失礼、あの彼氏さんに?



しかもいっつも着いてくるの?



いつもだからって、デートの意味ある?



そんな男、やめときなよ。私ずっと嫌いって言ってたでしょう。一時期好きになったつもりなんか知らないけど、その相手をよく知る前に自分の身内しか優先しない人なんてね。



私だって我慢してあげてるのに、相手は妹優先よ。



しかも妹ちゃん、お姉ちゃんを敵認定して勝手なこと言ってるでしょ。



ごめん。さっき後ろから見ちゃった。



でもでもでもさ、デートについてきた挙句、お兄ちゃん取らないでとか、何歳児なんよ。



え、私と同い年なん。うわぁ。ホントに?



彼氏さん、お姉ちゃんを隠れ蓑にして禁断の兄妹とか。そんなわけない、ただの兄妹って、分かんないよーー? お姉ちゃん。



だって創世記の国生みの神様だって子供たちの中には隠れて兄妹で結婚してんだよ。罰された話あるじゃん。2章23に。あ、そうか、あんまり神殿で唱和されないから知らない人もいるよね。ごめん。



でもさ、神様だって禁断の関係する神様いるんだし、見えなけりゃいいじゃんかもよ? あ、いて。頭はたかないでよ、もう。



だって彼氏さんと妹ちゃんと3人でデートなんでしよ。人目につくところで。そんなのデートなんて言えるの。



しかもお姉ちゃんが付き人みたいなことしてるんだから、意味分かんないよ。妹と結婚願望あるのかと思った。



ないならなんでそんな事するんだろうね。



結婚したら会えなくなるんだから優先? はあ?



15年も一緒にいてなの。バカなの。



だったら、お姉ちゃん、やっぱ私とデートの日でいいじゃん。私だってお姉ちゃんお嫁行ったら会えないもん。というか、その妹ちゃん以上に、会えないじゃんかよ。



先輩にこないだ教えてもらったカフェ、お忍びの公爵令息や候爵令嬢にも高評価だったから、行こ!



恐れ多い? 大丈夫。ちょっとお嬢様の行くようなとこだけど、私たちみたいなちょっとお金持ちの商売人のお嬢さんも来てるから。というか、こないだリサちゃんいて、びっくりされちゃった。



いいでしょ。彼氏さんなんてほったらかしなんでしょ。動いちゃいけないなんて鬼畜なこと言ってないよね。じゃ、行こうよ。



相手が勝手なことしてるんだから。なんなら、別れたらいいじゃん。



私がいい人紹介しようか? いらない? 貴族は嫌だって、仕方ないじゃん。私も特待生よ? 上位に食い込まなきゃ、残ってられないから一位取り続けてるだけで目立っちゃうんだもん。



でも、貴族の次男、三男坊と結婚してご覧なさいよ。私の知り合いなら持ってる爵位分けられて、男爵なりで手は届くよ。


男爵ならね。しかも繋がり自体はお父さん、めっちゃ喜ぶし。私言われたのは社交もゆっくり覚えようね、上位じゃないから大丈夫って。



えー、私への告白だって。またまた。



それは置いといて。行こっか。いいの。やった!



そういうことだから、彼氏さん、お姉ちゃんいただくね。いつでも別れていいのよ。別れさせたって。



えー、お姉ちゃん気づかなかったの。さっきからいたよ。


あれ、彼氏さんなんで苛ついてんの。あんただってお姉ちゃんより身内が一番なんでしょ。お姉ちゃんも身内優先でいいじゃん。しかもこっちは女同士よ?



ちがうって?



へー、妹と恋人繋ぎしてるのに違うんだ。お姉ちゃんに前紹介してもらわなかったらさ、彼氏さん浮気してるんか別れたかしたんだって勘違いしたかも。



浮気じゃない? 妹? へぇ。



じゃ、お姉ちゃんが私を優先させたっていいでしょ。ダメ? あんたはよくて、お姉ちゃんがだめな理由は?



やっぱこんな男、別れなよ。自分はいいんだしか言わないなんて、本当にナルシストよ。後で浄化の魔法かけたいくらい。



しかも学院も馬鹿にしてるから、将来なくなったよ。この男。私が一位なんてどんな低レベルな学院だって。



嘘つきの妹の話なんて信じられるか? 貴族なんて有名無実なやつと知り合いなんて、自分の店が全部なくなれば潰れちまうぞ? だって!



お姉ちゃん聞いた? この男、やばいわ。お姉ちゃん、私の話、してるんでしょ。それでこの発言はこの男、終わったわ。



あとで学院長にも報告する。大丈夫よ。記録玉いっぱいつけられてるし、ルース公爵家からはなんか隠れて護衛されてるって聞いてるから、証拠は幾らでもあるよ。



そう、ルース公爵家令息紹介しよっかなって。あ、嫌なの。お姉ちゃん、めっちゃいい人なのに。え、私狙いなの、本当に? 我が家に挨拶まで来てたの? こないだ? 



知らなかった。え、私の好きな人、取りたくないって。なんでわかったの。いつもその人の話しかしないって、そんな、意識してなかった。




だっていい人なんだもん。三男坊だから自由きくよ、とか言ってくれるし、平民の私が教えてもちゃんと聞いてくれるし。



ルース公爵家からしたらあの男の店引き上げたところでなんともないし、それどころかみんな使うなって通達するっしょ。彼処、ローズベルト商会の後ろ盾だからこんな男の脅し如きで潰れるわけはないし。



まあ、この男、知らなくて批判なんてしたとか貴族様には関係ないからたぶんおしまいよ。



だから別れなよ。お姉ちゃん。

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― 新着の感想 ―
平民だけど大店の娘さんたち、姉は他の大店に嫁ぐことになっていたのでしょうか。となると何かと邪魔するブラコンの小姑とそれを咎めないシスコンの夫…めんどくさそう。 別れたほうが良いですね。
大きな商会を継ぐために婿を取らないといけない姉と、自立する為に勉強頑張ったのだろう妹、その他色々なエピソードや構図が見えて楽しかったです。
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