青春ヲ叫ベ
勉強も落ち着かないテスト前の放課後。
香歩は学年でも下の下の賢さ。
とにかく欠点を取らないことで頭一杯だった。
「あー!!なにこれ!?」
「なんだよ、単純な正弦定理じゃないかよ」
私のとなりにいるのは瑠樹。
私にとっちゃ、なんでもない友達。
でも、私によくメールして来るし、
それを友達の那奈に相談したら
思いのほか
「瑠樹は香歩のことが好き」
って言う噂がクラス内に流れちゃって。
ましてや瑠樹はそれを
「噂じゃなくてホントだよ」ってあっさり認めちゃうんだよな。
もーどうしようもなくてさ
んで今も、
本当だったら今頃
那奈と勉強してるはずだったのに、
那奈は高橋先生に呼び出されてて
1人で黙々自習かな、
とか思って自習室に来たら
コイツがいてさ!
んで今に至ってるわけ。
だけどなんで
そんなに私が好きなのかが
私には全くわかんない!
こんな魅力のない
低身長でこんなブサイクの
ドコに惚れる要素があるの!?
私はそのコトバを
発するタイミングを
もう2ヶ月位待ち続けている。
「香歩~?」
「……zzz」
「香歩~!」
「……んぅ?」
「香歩!時間!」
「…あ」
目の前には那奈がいた。
私はうたた寝してたようだ。
時計の短針は6の近くにあった。自習室終了時間の
6時が近付いていた。
「香歩!帰るよ!」
「はーい…」
そして那奈と一緒に家に帰る。
那奈とは中学から友達で
家が近くて、家族間でも仲良し。
だから毎日行き帰りは
ほとんど那奈と一緒。
ましてや那奈とは
部活だって一緒!
とは言っても
最初は私の入ってる軽音部に
那奈を無理やり
入れただけだったんだけど。
私たちは
「shout!!」
っていうバンドを組んでいる。
ボーカルは私。
ギターは那奈がやっている。
もともと中学の時、
那奈は個人的な趣味で
ギターをやっていたおかげか
かなりギターが上手く、
学校内の同学年他バンドの
ギタリストからも
尊敬されるほど上手いのだ。
しかし、
私の歌はと言うと、
一言で言えば雑音!
ボーカリストが
バンド内最大の悩みなのだ。
学校帰り。
那奈はこんな事を聞いてきた。
「なあなあ、あんさ」
「なに~?」
「なんで今日、自習室に
瑠樹おったん?
あんなやつが珍しくない?」
「そら昼休みに
あんだけ私らが自習室トークしたら
瑠樹も自習室来るよ」
と心の中では言っていた。
「知らんー
ってか知ってるわけ無いやろ!」
「まあそうやんな」
とか言うふつつかなトークが
学校帰りの短時間には
繰り広げられている。
―――――――――――――――――
その前の日の夜。
私は瑠樹にメールを送っていた。
「明日放課後、
香歩と自習室行くで」
瑠樹は一言、二言
「そうなん!!
じゃあ自習室行くわ!」
「どうする?
2人っきりとか、なりたい?」
私はハートの絵文字を使って
メールの返事をした。
「うん★
当然やん(笑)」
そりゃ好きな人と当然
2人っきりになりたいだろう。
「じゃあ、私用事がある
って言って
香歩に先行かすから
先に自習室行って
待機しといて!!」
私は瑠樹の恋に真剣だった。
そして次の日の終礼終わりすぐ。
「那奈ー行こっ!!」
「あ、香歩ごめん
今日高橋先生に呼ばれたから
遅れていく!」
「あ、分かった~」
「絶対行くから!!」
と言って私は一旦
周りを見渡してから
その場を去った。
瑠樹は…
すでに教室にはいなかった。
ただ実は私も
その場しのぎで
高橋先生に呼び出された
と言ったわけではなく、
実はテスト前なのに
明後日にライブが組まれてあり
それの練習許可を
貰いに行かなければならないことを
忘れていたのだ。
これがshout!!の初ライブ
と言うこともあってか
なんとか成功させたい
と言う気が那奈にはあった。
私は軽音部の顧問の
高橋先生と話を付け、
急いで自習室へ向かった。
自習室は使用率がほぼ0。
だから正直何でもし放題なのだ。
私が自習室に着いたときも
自習室には香歩と瑠樹しかいなかった。
さらに香歩は寝ている。
私はふと思ったことを
口に出した後
瑠気に話しかけた。
「なーんだ香歩寝てるのか…
瑠樹どうやった?」
「いや、緊張しちゃって
ほとんど何にも…」
「あーあ、残念やな
まあ、またなんかの機会あったら
またいうわ!!」
「ありがとーじゃあね。」
「バイバーイ。」
―本当にそれだけをしに
瑠樹は自習室来たのか…
じゃあ私も勉強しよっ…
…ふう、5時40分か。
帰ろっかな。さて、香歩を起こすか…
―――――――――――――――――
私はその夜、
長風呂から上がって
ふやけた顔をしながら
布団に入った。
充電していた携帯電話を
取ろうとした瞬間、
「ブーッブーッ」
とバイブが鳴った。
開けると1件のメール受信。
…瑠樹だ。
「明日って体育、
女子がプールやっけ!?」
…瑠樹にしては
珍しくまともなメール内容だ。
以前は、
話すこともないのに
メールして来やがったり
したこともあった瑠樹。
「明日は私たちは
外で走り幅跳びやで!」
…そう送ってから
2分もたたないうちに
またメールが返ってきた。
「そっかそっか!
ありがとう」
アイツは下心を露出させるような
ハートマークを時に付けてくる。
最近私は
どうメールを返そうか
迷ったときには
メールを止めるようにしてる。
親がケチなのか
単にそこまでする余裕がないかは
全く分からないが、
私の携帯はパケホーダイではない。
メールをすればするほど
より多くの金額が取られる。
なのでメールは最低限度のみ。
だから今までの好きな人とも
ほとんどと言っていいほど
メールをしていない。
しかし、このケータイ、
そしてこの料金プランとも
あと数ヶ月でお別れする。
長いようで短い2年間だった。
思い出せば2年前、携帯を買った頃。
私はその頃好きだった人が
携帯を持ってると聞いて
携帯を持ち始めたい、
と初めて思い始めた。
当時としてはいい携帯だった。
2年継続使用を約束するプラン。
私は携帯を持つだけでうれしかった。
次の日。私は学校で
「携帯を買った」と言う話をした。
女の子友達は
「アドレス教えて!!」
と寄ってきたが
私は同性同士で
メールする気はなかった。
好きな人のアドレスが欲しい…
私は同じクラスで
結構仲の良かった
那奈と氷菜に相談した。
氷菜と言うのは中学の友達で、
超エリート私立校に行ってる子。
相談事は絶対誰にも教えない。
誰からも信頼される人。
那奈からは
その人のアドレスを教えてもらった。
最初のほう、氷菜は
ちょっと違う人の意見を
聞いてみたいな、
程度で相談していた。
しかし後々起こる事件によって
那奈との関係は一旦
完全にシャットアウトすることになる。
――――――――――――――――――
…あ、香歩からメールだ。
「そういやさ、
中2の時、なんで私、
アイツ好きやったんやろ?(笑)」
アイツ、と言うのは、
由太のこと。
由太のことは話せば長いので
後回しにするが、
この香歩のメールを見たら、
「中2の時、香歩が好きだった人」
とお分かりだろう。