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蟲ひしめく
残虐描写。ムシたくさん。ご注意を。
コウドは投げようとしたクナイとよぶ刃をかまえたまま部屋の中をのぞきこみ、暗いその中へ先に足をふみいれる。
「 ―― ああ、 ・・・トクさん、 こりゃあダメだ」
呼ばれたトクジは、中へはいらずとも、意味がわかった。
その部屋には、明り取りの小さな窓が、上の方にひとつあるが、陽の光が差し込むことのない向きにあるのでいつも暗いままで、広さは、布団を敷けばいっぱいだ。
その布団から、乱れた髪がのぞき、その間をいくつもの蟲がはいまわっている。
女の顔とおぼしきところは、蟲たちひしめきあっていた。
口と鼻を片腕でおさえたコウドが、布団をはねあげれば、女の体だったものから無数の蟲が、一斉に這いだしてきた。
情けない声をあげながら、コウドが中の一匹を、踏み潰してつまみあげる。




