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蟲わきたつ
ご注意を。ここより、ムシがたくさんです。。。
部屋の外に出ていた女たちが、すぐに気づき、二人の周りを取り囲むが、きょうは見舞いじゃねえんだよ、といつものように、軽く言うトクジの言葉に、なあんだ、と自分たちの部屋へ、おとなしく引きあげたあたりが、《商売女》たちの、すごいところだと、コウドは感心する。
「トクさんの『気』の気配を察するってことか・・・」
「なんだって?」
「いや、やっぱ女ってのは ―― 」
言葉をとぎれさせたコウドよりも先に、トクジが結んでとばした《印》で、廊下をふさぐ。
走り出したコウドは脚につけた鞘から刃を抜き、その扉を目指した。
鍵などあけるのももどかしく、戸板を蹴り破ると、いっせいに黒いものが吹き上がる。
「っげほっ、む、ムシだ!」
「どけ!コウド! !!」
ぶありと、煙のように黒い羽蟲がわきたち、トクジの発した《印》とともに投げられた《札》が、蟲のかたまりを焼く。




