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おもったとおりの男
トクジは一度唾をのみこんだ。
「 ―― 思ってたよりも、頭つかって生きてんだな」
「どういう意味だよ」
なんとなく立ち止まってむかいあっていた男二人がまた歩きだす。
『離れ』の門が見えている。
「―― トクさん、ムシってのは、寒くなる前には、姿を隠すもんだ」
また、ぽつりと話し出した男の顔もみずに、知ってらぁ、と返せば、怒ったような声がむけられた。
「ムシが、あそぼうって誘ってんのが、トクさんならいいけどよ、もしシュンカだったら、 ―― おれは、今日にも、そのへんにいるムシから、一匹残らず、潰しはじめる」
「・・・コウド、おめえ・・・、思ってたとおり、頭が悪リィ男だな」
「知ってるさ」
そのあとの会話はなく、『離れ』の門にたどりついた。




