※※ ― 名をきく ―
流れる景色。ひろがる田畑。
きれいな里についた。
折よくこどもたちが田んぼのあぜで遊んでいる。
そばによって、近くの稲の穂にとまって様子をのぞく。
中のひとりがトンボに気づき、じっと見つめてきた。
おお、なんともいえぬ輝きの眼
嬉しそうに笑ったこどもが小さな手をのばしてくる。
逃げる気もなくじっとしていれば、指先がふれた。
とたん
おおおお、なんだ?これは?
心地よく清いものが流れ込んでくる。
トンボになっているはずなのに、頭と身体が『力』にみちあふれ、どうにもたまらなくなって、―――
「さわるなっ!!」
ばしゅん、と音がしたときには、トンボのからだは、稲といっしょに斬りとばされていた。
傾いた景色の中に驚く子どもの顔と、睨んでくる男の顔。
うすまる意識の中で聞こえたのは、怒った男の声だった。
「 泣くな、男だろう?シュンカ。 あれは、 さわっちゃいけない蟲 なんだ 」
・・・そうか、・・・シュンカと・・いうのか・・・
――― ※※※ ―――




