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※※ ― たすけるぞ ―
さがそうとしたのに、まわりは橙色すぎて、おまけにけぶくて黒くかすんで、体のどこも、動かせない。
トンボ すまんな なくしたようじゃ
弟に、わびなければ。
なんだか目から水がでている。息が、苦しい。
もう、これ以上意識を保てないというところで、橙色の火が生き物のように大きくなった。
にいやあ!!
弟が呼ぶ声がした。
空気が大きくいれかわる気配。
すがりつくように手がかかり、布団か何かを被った弟の顔があらわれた。
「 もお、大丈夫じゃ!たすけるぞ!わっし(おれ)は、たすけるぞ!! 」
橙色に照らされた顔は黒くすすけ、こちらを抱えた手は、赤く汚れていた。
トンボ すまんな
謝ると、驚いたような顔が見下ろす。
ぎっと歯をくいしばった弟は、何もいわずに、橙色の火柱の中を走った。
黒い顔にふたすじ、目からながれた水のあとが残っていた。
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